【便所の国発言】トランプ大統領の『侮辱発言』その裏にあるもの【アメリカの抱える闇】

2018年01月19日 

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「あんな肥溜め(Shithole)のような汚いところから来たガキども」


1月15日、この日は黒人解放運動の英雄、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの生まれた日です。毎年、黒人だけでなく多くの人たちが集まってキング牧師をたたえパレードを行います。

しかし、今年の1月15日は、すこし様相が違ったようです。

12日にトランプ米合衆国大統領がアフリカ諸国やハイチに対して、

「Shitholeのような国だ」

と発言したという報道が流れると、その黒人侮蔑的な態度が怒りに火をつけ、

「We Are Dream」

のプラカードだけでなくトランプ大統領への抗議のサインが掲げられるようになりました。抗議のうねりは大きなものとなり、21世紀とは思えないブラックフィーバーが起こったようです。

トランプ大統領、また世界が騒がせたようです。

ところで、Shit-Holeですが、直訳すると「クソ」の「穴」という意味ですから、とんでもなく汚い言葉です。

世界でもっとも影響力のある国の代表が公的な場でそのような「言葉」を吐いたということで、多くの人たちが唖然としたでしょう。これは人類の平等と公平な国際社会をめざした数十年がふいに吹っ飛んでしまうような発言で、たとえ憎いなあと思っていても決して汚らしい言葉で他国を罵ってはならないのが国際社会のルール。

まるで昔の宣戦布告みたいな言葉ですから、例えば繁華街で男の子たちがこんな言葉を使ったりすれば、数分後には殴り合いの喧嘩がおこって大騒ぎになっていることでしょう。

トランプ大統領は12日のツイッターで「そんな言葉は使っていない」と反撃しましたが、民主党のダービン上院議員や共和党のグラハム上院議員ら数名が「Shithole」といったことを証言しています(ワシントン・ポスト紙)。大統領は全アフリカ国家およびハイチに向けてけんかを売ったような形になります。


巷では、なにが問題なの? という声さえ聞きます。ですがこれ、ただのバカなおじさんの暴言問題というわけではなく、米国社会におけるアフリカ移民の現状が起因しているようです。

大切なのはこの発言がオバマ大統領が2014年に作ったDACA(Deffered Action for Children Arrivals)という移民の子どもをただちに強制退去しない措置法を廃案にするためのミーティングでの発言だったということです(トランプ大統領は立候補の際に公約でDACAの廃案を掲げていました)。

この会議は、大統領の要求で行われた超党派の法整備委員会だったわけですが、議論が白熱する中で、「あんな肥溜め(Shithole)のような汚いところから来たガキどもを」のような暴言を何度となく吐いたといいます。

こういった排除政策の背景には、トランプ自身が、南アやガーナ、ナイジェリアといったアフリカ諸国やハイチなどからの準犯罪組織系移民集団を「米国社会のガン」のように思っていることが多く、とにかくアフリカ系移民を追い出さなければという意識が高いようです(新宿でもナイジェリア人やガーナ人のマフィアっぽい客引さんがたくさんいます。もしかしたらドナルドさんはそういう方に騙されたことがあるのかもしれません)。

ハイチに関して言えば、朝鮮民主主義人民共和国も顔負けな餓死者が多い最貧国で、米国は支援をする一方でほとんど見返りがない状態。軍拡に力を入れているトランプ大統領としては、移民のために使う予算があったらなんとか軍事の方に回したいと思っていて、それに反対する民主党議員や移民たちを蠍のごとく嫌っている状態です。


ナイジェリアの教育レベルは高い


また、一方でアフリカ移民の教育レベルは極めて高いという背景もあります。

ナイジェリアを例に取れば高卒に満たない学歴のナイジェリア人はわずか12%以下、修士号を取得した人数はアジア人系移民をはるかに上回る17%という異常な数を出しています。

首都の有るワシントンDCでは、かなりの多くのアフリカ移民が住んでいて、彼らの多くが法律事務所や政府関係組織で働いています。移民してきたナイジェリア人のほうが、国内で生まれたアフリカ系米国市民より社会的地位の高い仕事につき高額な収入を得ている例が多いということです。

ハイチは、国内での教育レベルはかなり低いのですが、移民はとても頑張る傾向にあり、優秀な人材を多く排出しています。
ちょっと前になりますが、2005年にカナダで最初の黒人提督になったミカエル・ジャンなんかもハイチ人です。英国や北米におけるアフリカ移民が高い教育を受け高い社会的な地位につくことによって、本国が急速に発展していくので、新たな黒人脅威論がアメリカ社会に生まれていることも事実です。

ちなみにアフリカ系移民(帰化していない住民)の数は、2000年の段階で88万くらいだったのが、トランプが立候補する2015年になると206万人に達しています(70年代は8万人程度)。

また、2010年以降のアメリカ社会の小売産業の低迷は深刻であるにもかかわらず、失業者が大量にいるのに彼らは多くの雇用を獲得しているのです。一般的なプア・ホワイトからみれば、あんな犯罪集団のようなやつらが米国社会を牛耳っているのはけしからんという話になります。どうして、自分たちの税金をあんな連中をのさばらせるために使っているのかと「声をひそめつつ」主張したい米国市民の悲哀があるのです。

トランプの発言は、そんな中から生まれたものだったと思います。

1970年代に黒人の市民権が徐々に獲得され、2009年には黒人初の大統領バラク・オバマが登場しました。オバマ大統領は、平等と誠実の象徴のような大統領でしたが、その一方でアメリカが黒人の国になってしまうと恐れる白人貧困層の人たちの妄想に近い憂いがありました。

しかし、それは妄想というわけではなく、2010年代には米国内には多くのニューカマー黒人たちが、ローカルの黒人たちを圧倒するようにさえなっていきます。トランプを支持する黒人さえ多くいるアメリカ社会を天国のキング牧師がどのように見ているのか、気になるところです。


文◎キタムラアラタ

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