【業界騒然】AV強要問題はどうなるのか~出演作は基本的に最長5年間で消去【警察が業者に説明会】

2018年02月05日 

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2月1日、警視庁がAVメーカー、AVプロダクションらを集め「AV出演強要問題事件説明会」なる会合を開いた。会場には業界関係者が約180人、緊張の面持ちで集まったという。参加したあるメーカー幹部は「2週間前に突然開催の案内が来た。事前の申し合わせも聞いていない。ただ警視庁保安課長が出席する会合でもあり、業界は顔を青くして関係企業、団体に参加を呼びかけた」と話す。

この説明会はAV業界にとってどんな意味を持っているのだろうか。

すでにご存知の方も多いだろうが、「AV出演強要問題」は2016年3月、国際人権NPOヒューマンライツ・ナウ(以降、HRNと略)が調査報告書「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、女性・少女に対する人権侵害」の公表、若い女性たちが望まないAV出演(ヌードや性的演技)を強要され、出演拒否をすると法外な違約金を要求されるケースが多発していると報告したことに端を発する。

その後テレビ、新聞、雑誌などが大きく採り上げ、同年5月には政府が「人身取引対策推進会議」を開き、全国の警察に出演強要問題担当の「AV対策専門官」を配置するよう指示するなど、国の政策課題としてクローズアップされた。
政府が対応指示したことから一時は「AVが消滅するのでは」とまで騒がれた。

しかし今回、警視庁が業界関係者を集めて会合を開いて取締側もAV業界の現状を適法と認識していると周知させる形になった。業界関係者は「警察側がAVを認めたとか、そんなことは一言も告げられていない」と語るが、「説明会」という形で業界主要団体に案内があり、マスコミにも一部(冒頭の生活安全部長挨拶のみ)公開した点からも警察が参加企業・団体には現状寛容の姿勢を示したと解していいのではないか。

警察がヤクザや詐欺グループなどの反社会勢力に「説明会」をした例など聴いたことがない。つまり「説明会」は集まったAV業界関係者と警察の「手打ち式」の側面があるのだろう。

今回の「説明会」に出席したのは日本国内でモザイク修整のある合法的AVをDVD発売、ネット配信するメーカーや修整の審査センターなどの審査機関、業界横断団体IPPA、昨年発足した女優プロダクションの団体JPGなどである。
それらは国内で完全に適法の流通を目指し、「出演強要問題」が大きくなった中、2017年4月に「法学者・弁護士などを迎えた「AV業界改革推進者委員会」を発足させてAVの「適正化」を協議してきた。「委員会」がどんな調査や提言をし、出演強要問題の再発防止策を講じたかは、委員の一人である法学者・河合幹雄氏による以下のコラムに詳しい。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54218
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54261

同年10月に開催された「AV業界改革推進者委員会」活動報告会(委員会の最終報告として開催され、その提言の実行は『AV人権倫理機構』へ引き継がれた)では人権に充分配慮したAV業界の統一契約書の採択や出演料の透明化、出演作は基本的に最長5年間で消去する、など画期的な新ルール、システムが提言された。


「何人のAV女優から直接聞き取りを行ったか」とAV男優から質問も


こうした新ルールを取り入れた業界団体お墨付きの作品を彼らは「適正AV」と呼び、それが適法であり出演者(表現者とも呼ぶ)の人権にも充分配慮するものとアピールした。

あまりにも大胆な改革提言ゆえに実効性が危惧されたり、報告会の質疑応答では来場していたAV男優・辻丸耕平の「委員はAVの撮影現場を視察したか、また何人のAV女優から直接聞き取りを行ったか」という質問から【現場の視察は行われず、聞き取りも1名のみで、AVの実情調査はほとんど行われていない実態】が判明するなど、さまざまな不安を抱えてスタートした業界の自浄プランだった。

しかし今回の警視庁の「説明会」は、業界の「委員会」などを経た自浄への取り組みアピールが「効いた」と示すものだろう。ちなみに前出の河合幹雄氏はもと警察大学教官であり、犯罪学の権威として警察と太いパイプを持っている。

ただ、業界関係者によれば警視庁での「説明会」では具体的にどんな行為を回避すべきかなどの提言はなく、「お願い」として「売春防止法、職業安定法、労働者派遣法など各種法令を守って事業活動を実施して頂きたい」と言い渡されるに留まった。

これは「AV出演強要問題説明会」と名前を打ちつつも実際には刑事事件として「出演強要」が立件された前例がない点も影響している。2016年に「出演強要があった」としてAVプロダクションが起訴された事件での罪状は「労働者派遣法」における「公衆道徳上有害な業務への派遣」だった。

また「説明会」の直前にはAVメーカーとプロダクションの経営幹部がこれまで使われたことのない「淫行勧誘罪」で逮捕される事件があり(ただしこの事件ではメーカー社長の拘留請求が認められず釈放されている。『淫行勧誘罪』はフライイングだったのではとの未確認情報も)、こうした警察側の新たなアングルに業界は頭を抱えながら「適正AV」と取組んでいかねばならない。

実は今回の「説明会」に参加した、IPPAに加盟するAV団体、メーカーらは国内に存在する全てではない。それら大手のほかに、国内にはまったく独自のルートでAV制作・販売・配信をするインディーズ系メーカーがあり、海外からの無修整動画配信のためのAV制作をする者もいる。
それらはグレーゾーンにある業者といえるが、一方で日本人の多くがインターネットで配信される無修整動画を視聴していることからも判るとおり、マーケットにおいては「適正AV」を駆逐しようとする強力な勢力でもある。

「説明会」では警視庁の保安課長が「無修整動画の根絶を」と呼びかけたとされ、「適正AV」を目指す者たちがそれらの監視と排除を強化するするのは間違いないだろう。

だがAVの歴史において、このような「適正」対「非適正」の対立では常に「非適正」が勝利した事実がある。80年代には成人映画会社を背景にした保守的AVとビニ本・裏本の制作者を背景にした新興勢力が対立し、後者が市場を圧倒した。00年代にはビデ倫をバックにしたレンタル勢と新興審査団体を作ったセル勢が衝突し、セル勢が勝利している。

「適正AV」も、「適正」という錦の御旗のもとAVの表現を後退させるなら、ユーザーは「非適正」であっても無修整の海外配信を選択するだろう。ましてや「非適正」の無修整勢力の前には「世界市場」が広がっている。モザイクの大きなポルノ動画に今、どれだけのニーズがあるのだろう。

説明会に参加したメーカーの人間は「オリンピックも近いし、目立つことはするなとのお達し。業界はモザイクを大きくしたり、『女子高生もの』を完全規制したりと、警察や良識派の反発を買わないように配慮している」と語るが、警察にあまりに媚びたAVの製作姿勢は、日本ののユーザーからもそっぽを向かれる可能性がある。

そしてもうひとつ忘れてならないのが、今回の警視庁の「説明会」はAVの出演強要問題を糾弾し続けてきた人権団体とはまったく接点のない会合である点だ。

「説明会」はあくまでAV業界と警察が接点をもったというだけのイベントであり、出演強要問題の原点であり「AV業界改革推進者委員会」の新ルール提言以後もなお業界を強く糾弾するアンチAVの人権団体は警察とはまったく別の視野から非難や告発を続けるはずだ。

背景が社会良識である以上、AV業界は人権団体との接点を模索していかなければ「出演強要問題」の真の解決はないのである。


文◎藤木TDC

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