AV強要で揺れる業界 元関東連合・松嶋被告らの初公判で浮き彫りになった実態

2018年03月28日 AV強要 裁判 関東連合

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「業界のルールを破ってAV女優と交際した」などと因縁を付け、後輩のAV男優らから金を脅し取ろうとしたとして、恐喝未遂の容疑で逮捕された松嶋クロスこと松嶋重被告と松本和彦被告の初公判が、3月26日に東京地裁で開かれました。

 傍聴席38席に対して、集まった傍聴希望者は約70名。その内訳は、一目でアウトローと分かる者から、AV関係者と思われる女性まで様々。

 15:00抽選開始、15:30開廷。松嶋被告はスーツ姿、松本被告はスウェットの上下で入廷。まずは両被告の本人確認が行われ、続いて罪状認否へ。ここで松本被告は罪状を認め、松嶋被告は追起訴があるため留保。これにより、松本被告とは分離して裁判が行われることに。松嶋被告は退廷します。

 罪状認否で明らかになったのは、本件の詳しい経緯です。これまでは「関東連合」「恐喝」といった強いキーワードばかり目立っていましたが、被害者と被告の供述調書および事件に関係する人間のこれまでの発言を照らし合わせると、その裏に隠れた様々な事情が見えてきたのです。


事件の経緯


2015年頃、AV男優A(以下A)が、AV女優B(以下B)と、プライベートで男女の関係になる。その後、BがAと連絡が取りにくいとTwitterなどのオープンな場でボヤくようになり、ほどなくして破局したのか、Aの実名を挙げて非難するようになる。

この騒動の最中、Aの先輩であるベテランAV男優Cが間に挟まる形となり、CはAを庇う。BはAV女優を引退。本人のツイートによると、Aに裏切られたために心身共に壊れ、AはCを盾にするばかりで連絡も付かないとのこと(「流した」と堕胎を思わせる言葉も発していた)。

ここで松本被告と松嶋被告が介入を始めるも、当初は松本被告が後輩のAV男優D(本件の被害者)に連絡をし、A・Cとの間に入ってくれるよう頼む形だったという。

なぜDなのかについては事情が複雑で、まずAV男優協会の存在がある。そこに名を連ねるAV男優(本件とは無関係)が、過去に何度も騒動を起こしていた。その内の一件は未成年者との淫行で刑事事件にまでなっている。そういった背景があり、男優協会の要職にあったDに対し「所属AV男優による揉め事が何度も起きるのだから、協会として責任があるのではないか」と話が回ったようだ。

そして松本・松嶋両被告は、Dに対して「AとCから100万ずつ、合計200万を持ってこい」と、ペナルティ金を集めるよう指示。これによりDは男優仲間であるA・Cと、両被告との間で板挟みになる。主に松本被告とDとの間で複数回話し合いが持たれたが、結果としてDは警察に被害届を出す。

その後、裁判所から松本・松嶋両被告に対し、Dに対する接近禁止命令が出される。

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 事件の経緯としては、ひとまずここで一区切りとなるのですが、この件が2017年になって再燃し、松本・松嶋両被告らが逮捕され、この公判に至った次第です。再燃した理由は憶測になってしまいますが、まずAV業界叩きの風潮があり、警察が厳しい摘発を続けていたことが挙げられるのではないでしょうか。

 が、本件の場合は、それは本筋ではないと見るべきです。それよりは、ここ何年かの間に警察が「次は組対でやる、暴対法も視野に入れる」と、マスコミ関係者らに漏らしていたことの方が真相に近いと思われます。
 警察の本命は準暴力団、すなわち関東連合OBの松嶋被告であり、彼が関わったと思われるAV業界内外の案件を、これまでに逮捕したAV関係者らから集めたのでしょう。事実、松嶋被告は昨年末から何度も逮捕されており、今回の公判はその内のひとつに過ぎないわけです。

 公判で松本被告はこう述べました。

「接近禁止命令があり、Dとの事は忘れなければと記憶から消していた。Dとは距離を置き、連絡もしていない。また、イベントなどの仕事で共演者にDがいる場合は断りもした。それで断った仕事は2件ある」

 これを聞く限り、松本被告はこの話はとうの昔に終わった話と考えていたようです。


必要悪を許したのは業界全体の罪ではないか


 この一件はAV業界の古臭い村ルールが根底にあるため、公判の中でもその説明が行われました。
 まずAV女優とAV男優がプライベートで男女の仲になるのは、原則としてご法度であり、場合によってはペナルティ金が発生するケースがあるということ。その理由としては、恋人ができるとAV女優の仕事に不都合が生じるという面が特に大きいのです。

 これは公判の内容とは無関係の視点であることを前置きしますが、セックスワーカーには心の弱い子が多く、恋人と別れたショックで行方不明になってしまったり、最悪の場合は衝動的に自殺してしまうこともあります。
 知る限りでも、自殺の原因が恋人との破局だったと言われているAV女優が数名います。松本・松嶋両被告は女性を管理する立場でもあったため、こうしたトラブルについては特に厳しかったと思われます。

 が、本件に関してはBが所属していた事務所の社長が「両被告に解決の依頼を出した事実はない」と否定しています。この証言を元に考えると、本件は両被告が金をぶんどって見せしめにしようと独断で動いたものと思われます。この点は身勝手・利己的と言われても弁解がきかないため、罪に問われるのも当然です。

 これについては松本被告自身もこう述べています。

「業界に長くいた事から気が大きくなり、自分の考えが業界のルールだと思い込んでいた。AV業界はもっと健全になっていく。なので、自分や松嶋のような、古い方法論を振りかざす人間はもういらない。今後はAV業界の人間とは関わらない。」(※一部意訳)

 両被告の最大の過ちは、本件にDを巻き込んでしまった事にあります。悪い言い方ではありますが、まずBを抱き込み、直接Aや、それを庇ったCに対して合法的なアクションを起こしていたならば、こうまで話は広がらなかったのではないでしょうか。
 しかし、その場合はせいぜいAに詫び状を書かせる程度の話で終わっていたでしょう。そこに無関係かつ、後輩という弱い立場のDを巻き込み、彼の手を汚させて金を取るという手段を選んだ時点で、言い訳の通用しない単なる恐喝事件になってしまったのです。

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 最後にAV業界に対しても苦言を呈しておきます。

 AV業界には世間一般では考えられないような悪党があちこちにおり、にわかに信じがたいトラブルが常に巻き起こっています。
 本件とは関係のない話ですが、結婚詐欺のような手口でAV女優の実家の金にまで手を付け、散々貢がせた上にポイ捨てしたAV男優がいました。その時に被害に遭った女優が頼ったのは実は、松本・松嶋被告でした。

 他には表AVと騙されて無修正動画に女優を派遣してしまい、クレームを入れたら逆に制作会社のチンピラめいた連中に暴力を振るわれたプロダクションもあり、その解決に動いたのも松本・松嶋被告と言われています。

 また、性犯罪の被害に遭った女性が警察に駆け込んだところ「裸商売なんかしているお前にも落ち度があったんじゃないか?」と警察官に暴言を吐かれ、被害者に泣きつかれた松本被告が弁護士の協力を得て事件化し、知人のマスコミを焚き付けて記事にさせ、加害者に社会的な制裁を喰らわせたという一件もあったようです。

 これらは全てここ数年の間に起きたトラブルですが、こんな魑魅魍魎がはびこる世界だからこそ、両被告のような暴力装置にも一定の存在意義が生じてしまい、そうした暴力に頼って溜飲を下げていた業界人も多いようです。 

 要は両被告の存在は、AV業界の治安を守るシステムとして機能しており、それを許していたのは他ならぬAV業界自体なのではないでしょうか。

 本件は松本・松嶋両被告が起こした恐喝未遂事件というだけの話ですが、AV業界全体が真摯に考えねばならない「業界としての欠陥」が浮き彫りになっています。
 反省すべきは両被告だけではなく、そんな存在が必要になるようなトラブルばかり起こす連中も同罪であるし、暴力に替わる治安維持の方法を見出せなかった業界全体にも罪があるといえます。

 松本被告は「もうAVとは関わらない」と宣言した以上、これまでのような揉め事への介入はしなくなるだろうし、松嶋被告は元関東連合幹部ということもあり、再逮捕が相次いでいるため、いつ出て来られるか分からないでしょう。
 そして今も変わらずAV業界に対する締め付けは厳しく、またネット配信で法律度外視の危ない橋を渡っている新規参入者も多い訳です。
 
 そんな状況で、今後のAV業界は社会の一員として法を守り、健全に運営していくことが求められています。が、現実問題としてこの国の法とその番人は、セックスワーカーに対して冷たいままです。

 今は過去には無かったAV女優の駆け込み寺的な団体もでき、業界内には続々と新しい協会が立ち上げられています。これらが上手く機能し、両被告のような暴力ではなく、法に守って貰える業界に生まれ変わることを切に願います。(文◎編集部)

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