AV業界は自滅する?大規模なガサ入れをした警察の"真の目的"とは【2】

2016年06月18日 AV業界 ガサ入れ 強制出演 警察

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 さて、前回は敗戦の弁に終始してしまったが、今回からはプロダクション逮捕というニュースに関連して、具体的にAV業界特有のグレーな部分を解きほぐして行く。おそらく外部の人間には解らない話だらけになるだろうが、これがAV業界や風俗業界など「性を売る商売」の実態である。

■AVにモザイクが必要な本当の理由

 そもそもの話を最初にしておきたいが、皆さんは「AVはモザイクが入っているから合法」と思い込んでいなかっただろうか。過去の記事で何度も述べたが、実はこの点が大間違いなのである。

 AVはモザイクが入っているから許されているのではない。モザイクの向こうで性行為(性器の抜き差し)をしておらず、またモザイクによって局部(一昔前なら陰毛なども含む)が隠されているから合法と看做されていたのだ。より具体的に言うと、前者により"労働者派遣法・職業安定法"を回避し、後者により"わいせつ物ではない"と言い張る仕組みだ。これ以外にも"売春防止法"をクリアする必要もある。

 よって、モザイクが入っていようといまいと、性行為(いわゆる本番)が行われていたら、それは有害業務とされ、出演者が(被害者として)訴え出ればいつでも誰でも今回のような結論になる。これが正解なのだ。

 ところが、AV業界も歴史が長くなり、業界が立ち上がった当時に最前線で戦っていたベテラン達が次々と鬼籍に入られている。そして次第にこのような根本の部分が忘れ去られ、「モザイク入れとけば合法」と思い込んでしまったツケが一気に回って来たのだ。モザイクを入れるだけでは、性を縛る法律の一部しかクリア出来ないというのに。

 余計な一言を付け加えるが、この点についてはAVユーザーにも責任の一端がある。昔ながらの濃いモザイクや、局部のアップが少ない作品に対して苦情が寄せられる事がよくあるのだが、それがAVの寿命を縮めてしまった。

「もっとモザイクが薄い方がいい」「もっと局部の抜き差しが解るシーンを入れろ」「何本も出演しているAV女優じゃヌケない、初々しい子を出せ」

 こうしたご要望をメーカーやプロダクションが真摯に受け止めて実現させたら逮捕されたという現実を忘れないで欲しい。

■契約書(出演承諾書)の内容について

 今回の騒動で、契約書に関して指摘する声が多かったように思う。例えば「モデルとして契約したのに実際はAVだった」といったように。しかし、すぐ上で説明したように裸のお仕事を縛り付ける法律のせいで、仕事がAVだったとしても「カメラの前でセックスするお仕事です」と書く訳にはいかない。ギリギリのラインが「成人向け作品への出演も含む」といった一文だろう。

 そうした点を一切説明しないとか、騙すとか、違約金で脅すといった手段を使う悪徳プロダクションに対しては庇う気持ちなどサラサラないが、しかしこうも考えてみて欲しい。契約書に具体的に明記できない以上、口頭で散々説明したとしても、後から「騙された!聞いてない!」と言われたら、プロダクションの側には弁解する武器がないのだ。

「契約内容の説明を録音しておけば」と思う方もいるかもしれないが、そんな音源を残していたら、有害業務に就かせる目的で女性を勧誘している証拠になるだけだ。AVプロダクションの仕事とは、このように八方塞がりでもあるという点をご理解いただきたい。

 そんな状況だから、プロダクションとしては身の安全の為にも「疑似本番でお願いできませんか」と言いたいところだが、それを言ったらメーカーの方から「そんなんじゃ商売にならない、お前のところの女優なんか使わない」と言われてしまう。だから女の子に仕事(金)を渡したいプロダクションは、メーカーが望むままに"本番できる女性"を集めてくる。

 このニュースではプロダクションだけが悪者として扱われているが、実際にはプロダクションにそれをヤラせている(そうせざるを得ないようにしている)のはメーカーである。言ってみれば、AVメーカーはリスクの大部分をプロダクションに負わせているも同然なのだ。これについては警察もとっくに理解しているので、今後何かしら新しい展開が報じられるだろう。

 また、こうしたAVメーカーの「プロダクションに押し付ければいい」という考えの卑劣さを指摘し、プロダクションだけの問題ではないと言ってのけたのが、実はかの伊藤和子弁護士である。彼女の言動には疑わしい点も多く、どうしても批判が先に立ってしまうが、この点に関しては実に真っ当な判断をしている。

■労働者派遣法の適用は妥当なのか?

 今回のケースでは労働者派遣法に抵触するという理由になっているが、この点もAV業界の存在を根底から否定するものだ。実際にどういう結論になるかは裁判が終わってみなければ解らないが、仮にこれで有罪判決になってしまうと、セックスワーク全般に流れ弾が行く可能性がある。

 というのも、労働者とは法律で定義されており、何らかの事業に使用され、それによって賃金が支払われる立場の人間を指す。よって、AV女優や風俗嬢は「個人事業主がマネージメントの部分を外部委託している」という芸能タレントにも似た契約内容になっているのだ。この部分を警察が「実質的には雇用関係だろう?」と突いて来たという事は、AVや風俗の業界の建前など一切考慮してくれないという事である。したがって、世にあるほぼすべてのセックスワークが同じ事をやられても不思議ではない(というか現に風俗の業界はすでにヤラれ尽くしている)。

 そして、この点については地裁レベルではすでに決着が付いていると言っていい。ここ十数年の間に似たような裁判はいくつか起きているのだが、その殆どでプロダクションがAVモデルを募集・派遣または紹介する行為は「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」であり、「労働者派遣法ないしは職業安定法に抵触する」、ようは「AV=公衆道徳上有害な業務である」と結論付けられているのである。判例がすべての世界であるから、これらを覆すのは難しいだろう。

 この「何を以て有害と判断するのか」という点については、実はセックスワーク業界が戦う余地のある部分ではあるのだが、今の状況を考えると、おそらく一枚岩となって法の改正へ向かうといった手段は実現できないだろう。仮にそう動こうにも味方がいなさ過ぎるし、今からセックスワーカーの為に政治家や知識人が火中の栗を拾いに来てくれる事など期待できない。

 仮に「エロ=有害という考え方でいいのか」という点を議論し、また法に反映させたいと思うならば、AVも風俗もマンガもアニメも映画もTVも芸能も小説も、ありとあらゆるエロに関する業界がひとつにならねば難しい。間違っても「小説や映画は芸術だからOKだけどAVやアニメは」といった選り好みをさせてはならないし、また"相手の分断作戦"に乗る事もあってはならない。

 だがしかし、その仲間に入れて貰うには、AV業界はヨゴレ過ぎるのである。AVが上に挙げた業界の仲間入りをさせて貰うためには、もっと世間一般の常識が通用する業界にし、AV業界でしか通用しない村ルールや、アウトロー要素を極限まで減らす必要がある。果たして今のAV業界にそれが出来るのだろうか。

Written by 荒井禎雄

Photo by StephaniePetraPhoto

職業としてのAV女優

業界全体の危機。

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