日本の原始民?幻の漂泊民? サンカの秘密に改めて迫る

2013年07月21日 サンカ 都市伝説

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 2010年10月16日。この日テレビ朝日で放送された「報道発ドキュメンタリ宣言 知られざる日本の原風景"サンカ"~最後の末裔が語った真実~」は、知る人ぞ知る幻の漂泊民「サンカ」をテーマにしたほとんど唯一のTV番組である。

 サンカとは、各地を転々と漂泊しながら自然とともに生きていた人々だ。彼らは、河原などに「セブリ」と呼ばれるテントを張り、農家の必需品である「箕」を製造、修繕することを生業としていたが、高度経済成長期の頃から姿を消していったとされる。

 番組を製作したチーフディレクター利田敏氏は、サンカ研究者としても知られている人物で、三角寛(サンカの存在を広く知らしめた小説家。サンカ研究で博士号を取得しているがその研究内容には疑問が多いとされる)が深く交流したサンカ・松島一家を、2002年に再発見した張本人でもある。

 三角寛が接触した頃、まだ少年少女だった松島始さん、初子さん、マサコさんが老齢になっても当時の面影を残したまま、埼玉で元気に暮らしていたことを利田氏のレポートで知った全国のサンカマニアは腰を抜かしたのである。私事だが当時、筆者を松島始さんマサコさんに会わせてくれたのも利田氏だった。

 番組では、再発見と対面の様子を記録した映像とともに、松島一家が埼玉県ふじみ野市大井弁天の森でセブリ生活をしていた昭和25年当時の大変貴重な映像も紹介されている。

 番組にはもうひとつの柱がある。それは、今なお現役で移動箕直しをしている「サンカ」がいるという目撃情報から、その足跡を探るというものだ。目撃された場所は、福島県いわき市である。

 結果として、番組ではこの福島の「サンカ」を発見するには至らないのだが、実は番組放送の翌年、東日本大震災を経た2011年7月5日に、もうひとりのディレクター松岡慶典氏が、この「サンカ」への取材に成功していたのだ。

 松岡氏はその様子を批評社のPR誌「Niche(ニッチ)」no.27(2012年1月1日発行)で報告しているのだが、大変興味深い内容であるにも関わらず、多くの人の目には触れられていないだろう。

 ざっと要点をまとめれば、松岡氏が接触に成功した修治さん(仮名)は61歳。箕を修繕するという仕事を40年も続けているという。お父さんもおじいさんも箕直しだ。現在いわき市に居を構え家族と暮らしている。ひとりで車で出掛け寝泊まりしながら、宇都宮、小山、大田原、茨城などを回り、箕を修繕しているという。

テレ朝サンカ特集.JPG


松島初子さんを取材する利田氏(左)と松岡氏

 修繕の様子を撮影することもできた。日陰にゴザを敷いて、カバンから道具一式を取り出し、破損した部分に固いビニール製のヒモを用いて修繕する......。

 松岡氏は、修治さんが「サンカ」という話題にあまり触れたがらない様子を感じつつも、「サンカって知っていますか?」と問いかけると、修治さんは「知らない」と答えたという。幾度となく「もう昔の話だ」とつぶやき、多くを語らない修治さんの姿が、松岡氏には印象的だった。そして修治さんは、「では何と呼ばれていたのか」という質問に「みいやさん」と答えたという。「みいや」とは「箕屋」を意味するだろう。

「箕」を製造・修繕する人々と「サンカ」という呼称の間には、深い溝というか、闇が存在する。このことは「サンカ」を考える上でとても大事なポイントだ。

 率直に言って「サンカ」という呼称には、差別と犯罪の匂いが付きまとう。

 そもそも「サンカ」という言葉は、明治大正の頃、警察用語として全国的に使用されるようになったという経緯がある。ずばり「放浪しつつ泥棒や強盗を犯す犯罪集団」という意味合いで使用されたのだ。現に、前述の三角寛が「サンカ」という言葉を初めて知ったのは、三角が新聞記者だった頃、東京を荒し回っていた「説教強盗」を取材中、刑事が「説教強盗はサンカじゃないか」とつぶやいたのがきっかけなのだ。

 そんな背景が直接関係したわけではないだろうが、修治さんが「サンカ」という呼称を忌避しているのは間違いなさそうだ。

「サンカ」はダークサイドの存在であり、歴史書棚の隅にひっそり配置されるのが常だった。規制の厳しいTVでは、その存在を報じることさえ許されなかったのである。

 しかし放送後、高齢者から多数のお便りが利田氏のもとに寄せられた。幼年時代接した「サンカ」の思い出を数十年ぶりに思い出して、感激のあまり筆を執った。そういった内容のものだ。

 常識的な価値観とは全く違う生き方を選んだ「サンカ」の民。それゆえ差別や迫害を受けた歴史があった。しかし機能不全にある日本で、自然と自由を最上のものとして生きた「サンカ」に注目すべきなのは、まさしく今である。

 なお本番組はネット上で視聴可能なようなのでぜひご覧いただければと思う。

Written Photo by サンカラボ

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