『明日ママ』日テレ回答受けて関係3者が会見「確信犯でやっているのでは」

2014年02月07日 ドラマ 放送中止 日本テレビ 明日、ママがいない

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 児童養護施設を舞台にした日本テレビの連続ドラマ『明日、ママがいない』は5日、第四回目の放送があった。家が貧乏のために、お金が出来たらきっ迎えに来てくれると思っている「ボンビ」の両親が実は、災害で亡くなり、遺体が見つかっていないことが明かされた。しかし、この回の展開は、前回までとは違い、施設長の優しい配慮が見られた。これは抗議によるシナリオ変更なのか? それとも、もともと考えられたシナリオなのか。ネットでは話題だ。

 この放送が行われる数時間前、全国児童養護施設協会(全養協)と全国里親会、いわゆる赤ちゃんポストと呼ばれる「こうのとりのゆりかご」がある慈恵病院(熊本県)の3者による記者会見が、厚生労働省内にある記者クラブ「厚生労働記者会」で行なわれた。

 全養協の藤野興一会長によると、全養協によるドラマの内容改善要望に関する回答期限だった2月4日、日本テレビが全養協の事務局を訪ねた。これまで全養協は日本テレビに対して、1.施設長が暴力や暴言等により、こどもの恐怖心を煽り、子どもを支配する、2.施設長や登場する大人が、子どもをペット扱いするなど、差別的で自尊心を傷つけるような発言・言動をする、3.「ポスト」など、登場する子役に不適切なあだ名をつけるーなど内容に強く抗議をしていた。

 同日までに明らかにしたところによると、全養協の全国にいる役員67人からのヒアリングでは、自傷行為を含む悪影響20事例が寄せられているという。その20事例は「今のところ、公表することはない」とした。ただ、国会でも取り上げられ、厚生労働省が調査に乗り出すことに対して、武藤素明副会長は「個人が特定されないように報告する準備をすすめている」とも述べた。ただし、アンケート調査や子どもに直接ヒアリングしているわけではないため、実態の一部に過ぎないという。

 日本テレビは文書(http://www.ntv.co.jp/oshirase/20140205.html)で回答した。「本ドラマを視聴した施設の子どもたちが傷付いたり、実態アンケートに記載されたような事実が存在するのであれば、もとより本ドラマの意図するところではありませんが、そのような結果については重く受け止めるとともに、中新より子どもたちにお詫び申し上げます」と、全養協が主張する実態が事実であることを前提に、子どもたちを傷つけたことに対して謝罪をした。

 しかし、藤野会長は「文書で謝罪したでは済まされない。公共の場で表明してほしいとお願いをした」と述べた。日本テレビは公式サイトで回答した文書を掲載した。

 また、全国里親会の星野崇会長も「フラッシュバックを起こした子がいる。こうしたことは二度と起きてほしくない。日テレには謝ってほしい。幼い頃に傷付いた子どもがどのような現状に置かれているのか。大人になれば修復できるというが、そんな簡単なことではない」と、ドラマによる影響が小さくないことを強調した。

 さらに第三回分の放送までは、里親になろうとしている大人が、子どもを都合のよい道具かのように描かれているが、星野会長は「大人も傷付いている。里親も必死になっている」と、子どもだけでなく、里親も傷付くと主張した。

 慈恵病院の蓮田健産婦人科部長は、日本テレビ側が病院を訪れて経緯を説明しようとしたが、説明を断ったことを明らかにした。「何よりも大事なことは、子どもが傷付かないこと。大人のメンツのようなことはやめましょうと言った。これ以上、日テレ側にお願いすることは解決につながらない」と話した。

 その上で、「子どもに最大限の配慮をお願いしたい。フラッシュバックという現象は広範囲です。影響が軽い人もいるかもしれないが、虐待を受けた子どものフラッシュバックは深刻なもの。回避のためにお願いをしたい。そして悪影響が出る可能性がある子どもに視聴させることを控えさせていただきたい」と語った。さらに、病院では、BPOに対して訴えを起こしているが、取り下げは考えないとしている。

 たしかに、フィクションであれ、テレビ放映の場合は子どもへの配慮は必要だ。そこで、「もし」の話になるが、子どもが見ないと思われる時間帯での放映ならばどうだったのかだろうか。会見後のぶらさがりで聞いてみた。

 以下は、星野崇氏(全国里親会会長)とのやりとり。

ーーこれが平日の昼のドラマだったらどうなのか?

星野「一般家庭の場合は、親がコントロールできるし、私の知っている人の場合は、見せないと言っていました。子どもの場合、『芦田愛菜ちゃんが出ているから見たい』というのもある。学校で里親家庭のことはあまり知られていないけど、児童養護施設の場合は、全員、周囲が分かっている。ただ、今回は『お前、ポストか?』と、里親家庭でも言われた子どももいるくらい。昼ドラでもなあ」

ーー深夜帯の場合は?

星野「そうねえ。でも、それはなんのために、(抗議を)やったのかはわからなくなるな。やっぱり、内容や方向性が違うんじゃないか? 子どもたちの心理とか、ちっとも勉強してないよね。子どもが親を捨てるというのは実際問題あり得ない。子どもは内心では『いつかかわいがってくれるだろう』と思っている。そういう気持ちは持ち続けている」

 次は、武藤素明氏(全養協副会長)とのやりとり。

ーー子どもが見ない昼ドラとか深夜ならどうなのか?

武藤「子どもに傷付きがあるなら、暴力シーンとか多いなどで、子どもに見せるべきではない。だから深夜帯にやりましょう、というのはあり得るかもしれないですね。でも、実体的には、日曜日の昼間に再放送し、ネットでも流している。施設の子どもはビデオを撮っている。子どもたちからすれば『児童養護施設のことがドラマになるんだって』って見ようとするじゃないですか。こんなのを嫌だと思って、途中で見るのをやめた子もいるわけです」

ーー今回、たまたま児童養護施設の設定ですが、これまでも暴力シーンなどで子どもが傷付いた例があるとは思うが。

武藤「(『明日ママ』は)児童養護施設を土台としているわけだから、他人事にはできない。(この内容で)施設が舞台だったことで、傷付きがでると思うんですよ。施設でこういうことがあると、不安定な子どもは『お前も親に捨てられたの?』と聞かれただけで傷付く。聞いている方に悪意がなくても」

 また、ドラマは野島伸司氏が監修をしている。過去の「野島作品」では、『聖者の行進』や『高校教師』、『人間☆失格』、『家なき子』など、話題を呼ぶ一方で、批判の声もあったりした。スポンサーが降りるというのは、『明日ママ』が初めてではない。そのため、確信犯ではないかとの声も聞かれる。武藤氏も「個人的意見」として、確信犯でやっているのでは? と日テレ側に言ったという。

ーー確信犯じゃないか? ということだが、野島作品というのはそうした反響を読んでいることが多いが。

武藤「それは関係ない。誰が作ろうと。最初にシナリオを見た時に、このままだと、子どもたちの傷付きは相当出るな、と思った。傷付いて施設に入所する子どももいますから。もちろん、何を言われてもたくましい子どももいます。そればかりならいい。なかには、今日生きているのも辛いという子もいるんですよ。だからこれをやっちゃうとひどいでしょ? と最初から言っている」

 冒頭で記したように第四回目の放送は、ファンタジー色が出たり、施設長「魔王」が子どもに配慮する場面が見られた。これが抗議によるシナリオ変更なのかどうかは不明だ。また、第四回目の放送ではCMが自社のものとACのみとなった。三回目の放送ではスポットCMがあったが、四回目はなかった。また、前回同様に、スポンサー表示はなかった。

 いずれにせよ、4日のやりとりが反映されるのは六回目の放送以降になると関係者は見ている。これ以上にスタンスの変更があるのだろうか。3者とも「今後の推移を見守りたい」と話していた。

Written by 渋井哲也

Photo by 「明日、ママがいない」公式サイト

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