怪優・いか八朗さん追悼文|高部雨市(ルポライター)

2018年05月31日 CM いか八朗 テルマエ・ロマエ 追悼

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 もう、だいぶ前のことになる。2004年の初春、月刊実話ナックルズの企画、『小人のちから』で初めて、いか八朗さんにお会いした。五人の小人の役者たちの本音座談会。いか八朗、マメ山田、日野利彦、角掛留造、赤星満、小人の役者が一堂に会し、それぞれが本音を語りあった。

 「小人という言葉」について「何センチ以下が小人なのか」という問いかけ、「小人をタブー視するメディア」についてなど、話題はつきなかった。

 その中で、いか八朗さんは、己のキャラクターを心得て話をしているのがわかった。それは役者であれば、そうであるように、同質、同一化を忌避することである。いか八朗という小人を表現することである。

 身長でいえば、五人の中でいかさんが一番の高身長で145センチ。そこでひとつのたまう。
 「ちっちゃいの損だよ。俺、女房とキスするのに届かなかった」
 そして、自分が小人になったのは、子供の頃、ちっちゃい女の子をイジメてばかりいた、その天罰で身長が伸びなくなった。でも、小さいことで苦になったことはないという。

 いかさんは母親も女優だった。その縁で役者の道を目指したが、野村芳太郎監督の「役者じゃ喰えんぞ」の助言を聞き入れ漫談やコミックバンドなどの修行もした。
 そして、映画では、林海象監督の『二十世紀少年読本』に出演。この映画がロンドンの映画祭で賞をとった。その時のエピソードをこう語った。

 『プロデューサーがいうには、エリザベス女王が見に来ていて、途中で席を立とうとしたら、ちょうど僕が出てたんだって。僕はテキ屋の親分の役、子分はみんなデカイ。あんなちっこい俳優もいるのかと思って最後まで見て行った。それで、ちっこい俳優の映画になんか賞をあげなさいって、推薦してくれたんだって。その時僕は、ちっこくてもいいや。ちっこいのはちっこいなりに生き方があるんだと思ってね』

 いか八朗さん、享年八十四歳。
 正統なる怪優が亡くなった。

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