村西とおる監督を描いた『全裸監督』がNetflixでドラマ化 著者の本橋信宏氏と対談|平野悠

2018年12月05日 ドラマ化 全裸監督 対談 平野悠 本橋信宏 村西とおる 監督

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motohashi001.jpeg本橋信宏(写真右)

ノンフィクションライター。1956年埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学卒業後、フリーランスの文筆業をはじめる。私小説的手法で庶民史を描くことをライフワークとしている。実家から徒歩10分ほどで「となりのトトロ」のモデルになった狭山丘陵・八国山が横たわる。現在、都内暮らし。半生を振り返り、バブル焼け跡派と自称する。サブカルチャー、全共闘、風俗などの著者多数。村西とおる監督を描いた「全裸監督」(太田出版)が山田孝之主演で「Netflix」から2019年春、世界190ヶ国で同時配信される。



作家は孤独


本橋信宏(以下本橋):平野さんは対談前にものすごく相手を調べて来ますよね。わたしもインタビュアーは長年やってるけど、平野さんの書き込みだらけのノートを見て感動しました。平野さんって、イメージ的に、「オラァ、ロックだぜ! 人生アドリブだぜ!」みたいな雰囲気だけど全然違う。

平野悠(ロフトプラスワン席亭 以下平野):この手はロフトプラスワンで覚えたんだよ。オープン当初は俺が必ず前説をやってたじゃない? そのときにね、こうしてビッシリ調べて書いていると、次は何を質問されるんだろうって、相手がドキドキして真面目になってくれるわけ(笑)。

本橋:荒くれのロックな人かと思うと、違うからびっくりしますよ。

平野:インタビュアーが殴られたらおしまいだから、どこかでつっぱってないと。たぶん作家っていうのは、孤独な作業だからこういうの喜んでくれるかなと。

本橋:そうそう、ずーっと部屋でこもって書いているから、人恋しくなっちゃってね。考えてみれば、一週間で女と喋ったのはかみさんくらいだな......なんて。

平野:アハハハ! やだねぇ、かわいそうだね作家なんて!(笑) 俺と本橋さんはひとまわり以上違うんだよな。

本橋:「しらけ世代」なんて呼ばれてましたね。昭和31年生まれは。でもわたしたちの世代は自分たちを「しらけ世代」なんて誰も言ったことがないんですよね。ただ、大学教授の鹿島茂さんに以前、文庫の解説を書いていただいたときに、「1975年当時、本橋が大学に入学したころは、学内にはしらけた風が吹いていた」という記述があって、ああ、客観的にはたしかにしらけた空気があったんだなと思いました。

平野:俺たちはもう青春真っ只中に学生運動だったからね。最後は労働戦線にずっといたんですけど、俺は最後こわくなって逃げたの(笑)。だって、武器を運ぶ係にされそうだったんだよ! 危ないよ、そんなの(笑)。...あれ、今日はこんなことを話したいんじゃないんだよ、エロとロフトプラスワンの話しをしたいんだよ。


テレクラ VS キャバクラで徹底討論


平野:ロフトプラスワンはさ、昔は楽しい企画がいっぱいあって、「テレクラがいいか、キャバクラがいいか、徹底討論!」なんてバカなことばっかりやってたんだよね。たぶん、そのときに本橋さんが一番最初に出てくれたんだよ。カンパニー松尾と。

本橋:そもそも、わたしが初めてロフトプラスワンの存在を知ったのは、新宿区富久町にあったころですね。元赤軍派の塩見孝也さんの話が聞けるってことで、本サイト編集長の久田くんと一緒に行ったんですよ。中に入ってみたら、居酒屋っぽくて、真ん中で誰かがしゃべってて、なんか変でしたよね。

平野:隠れ家風とか言ってごまかしてたけどね、新宿から歩いて25分もかかるんだよ。ひどいよね。

本橋:今みたいにステージがあってみんなが見るっていうわけじゃなくて、勝手にしゃべっている人がいるなぁって感じでしたよね。

平野:ヤジが飛んでおもしろかったですよね。で、本橋さんたちがキャバクラ派だったんだよ。テレクラ派がカンパニー松尾さんと宮台真司と末森ケンさんと俺。

本橋:AV監督の日比野正明とバクシーシ山下監督、それにわたしがキャバクラ派で。「テレクラ VS キャバクラ、男の天国はどっちだ?!」ってね、論争しようと。......くだらないなぁ〜(笑)。

平野:アハハハ! バッカだよね〜(笑)。こんなことばっかりやってたんだよ。


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本橋:で、どっちがおいしい思いをしたかって言うと、テレクラ派が圧勝なんですよね。

平野:キャバクラで手をにぎるまではいけたけど、寝たヤツはひとりもいなかったんだよね。テレクラは夢があったよね。

本橋:当時のキャバクラ嬢のファッションが好きなんですよね。今はもういないけど、トサカみたいな前髪とスーツ着てて。あれが好きでキャバクラに行ってたんですけどね、おいしいめにあったことないですよ。バクシーシ山下監督がおいしいめにあったって言うから聞いてみたら、手をにぎってほっぺにチューしただけですって(笑)。『女犯(1990年・V&R)』の山下がたったそれだけかー! 情けない! って(笑)。

平野:アハハハ! そんなことをジジイたちが朝まで討論してんだよな、笑っちゃうよな。

本橋:バカバカしいことを真面目に論じる、というのもわたしのテーマですから。

平野:このキャバクラの勢いって今でも続いてますよね。

本橋:キャバ嬢のファッションは、当時はJ&Rだとかシャネルだとかのスーツだったけど、今はドレスですよね。ゴージャスで洗練されましたよ。だから昔のスーツは、群馬とか北関東のスナックみたいなイメージになっちゃうんですけど。

平野:テレクラはもうほとんどないでしょ?

本橋:かろうじてありますよ。取材で足立区の竹の塚のテレクラに行ったんですけど、入れ食いなんです。

平野:入れ食い!!!! 竹の塚......(メモしながら)。

本橋:でも竹の塚は悲惨だったな。一緒に暮らしている男がDVで、その男がいない時間にテレクラにかけてきてて、「今、旦那がいないから家に来てよ」なんて言われて、亭主のいない間にやるのもスリリングでいいかななんて思ったんだけど、これちょっと美人局くさいなと思ってやめたんですよ。

平野:いま俺は、藤井誠二さんの『沖縄アンダーグラウンド』を読んでるんだけど、気持ちが暗くなるんだよ、もう。でも本橋さんの風俗ルポは暗くないんだよ、これが不思議で。なんでこんなに明るく書けるんだろうって。

本橋:スタンスとしては、諧謔(かいぎゃく)で笑い飛ばしながら、どこかもの悲しいという。


『全裸監督』Netflixドラマ化


平野:村西とおるさんの本は『全裸監督 村西とおる伝』で3冊目?

本橋:『裏本時代』『AV時代』『全裸監督』と、構成で聞き書きの『ナイスですね 村西とおるの挑戦状』ですね。

平野:今回の『全裸監督』どうでした?

本橋:1997年に「ラリー・フリント」という映画が上映されたんですけど(ポルノ雑誌「ハスラー」創業者)、ラリー・フリントが南米保守主義者に襲撃されて半身不随になった実話で、それを宝島社の編集者と一緒に観に行ったんですけど、帰り道、「本橋さん、日本版のラリー・フリント書きましょうよ」って言われたんです。それが村西とおるだったんですよ。

平野:はー、そのときに。

本橋:ところがこのころは、村西とおるは鳴かず飛ばずで。北海道ロケにやる気のないAV女優4,50人連れていったりして。低調な時代だったし、わたしの中では、「もう書き切ったかな」と思ってたんですよね。このときの模様は、「M 村西とおる狂熱の日々」という映画で記録されていて、おそらく2019年公開になると思いますけど。宝島社の編集者が後に太田出版に移籍して、そこで20年越しであの本が誕生したわけです。

平野:それで『全裸監督』がまた映像化になるんでしょ? しかも、インディーズじゃないんでしょ?(笑)

本橋:人類史上はじめての億単位の視聴者数がいるNetflixですよ(笑)。

平野:はーーーーー、す・ご・い・ですねぇ。

本橋:『裏本時代』とかにも映画化の話ってけっこう来てたんですよ、でも映画ってなかなか現実化しない。

平野:アハハハ! わかるわかる(笑)。俺もそういう経験ある。

本橋:今の映画っていうのは委員会を立ち上げてファウンドを作るんですけど、リーマンショック以降は企業もお金に余裕がないから、いいところまでいってもダメになちゃうんですよ。もう映画はいいよ、と思ったら、Netflixはいきなり予算もOKで。

平野:億?

本橋:年間予算で1.4兆円なんですよ。世界で、ですよ。だから制作費の問題は最初からクリア。あと、クライアントのタブーもないし、大きな事務所の圧力もないし。今の映画監督はみんなNetflixで撮りたいって言ってますよ。地上波のカリスマ・明石家さんまさんがNetflixのCMをやっているくらいですから。だからもうお任せします、って。

平野:ほうほうほう。...で、どのくらい本橋さんは取れるの? 何パーセント?

本橋:億単位だったらこんなとこ来ませんよ(笑)。カリブの海とかにいますよ。

平野:アハハハ! バカンスしてるよな。

本橋:いやー、でも作家はきついですわ......。みんなよく食べてるなって、エロ本業界はもう壊滅ですから、特にカメラマン。昔は4,50誌あって、そこでパパっと撮って、はい次って使い回せば十分メシ食えましたけど、今撮り下ろしなんてないじゃないですか。カメラマンは廃業、編集者も転職や移籍、ライターも消えちゃって。

平野:出版社もなくなるし。

本橋:音楽業界とエロ本業界は似ていますよ。今までは既得権益というか、女の裸さえ載っていれば売れたんですけど、その時代は終わったんですよね。甘かったですよ。仲のいいライターやカメラマン、デザイナーでまわしあっていたから、有能な人が埋もれちゃったんだよね。


ヤクザも風俗も左翼も取材する。つまらない個人史はない


平野:ところでTABLOって知ってる?

本橋:もちろん知ってますよ、わたしも"紀州のドンファン"の記事書いてますから(笑)。

平野:アハハハ! 失礼。

歌舞伎町ホストとキャバクラ嬢御用達とも言われるマンションにドンファン新妻の部屋か|本橋信宏

本橋:サイトを見てみたら、「えらそうなヤツ、だいたい嫌い」っていいコピーだなぁって。久田編集長の連載も『偉そうにしないでください。』って最高のコピーですよ。

平野:本橋さんは社会派でありながら、下半身の風俗の取材をしているじゃない。それでありながら、『全学連研究』なんていう本も出しちゃってて、そこから繋がって塩見孝也の取材に繋がるんだと思うんだけど。いやほんとに、よく中核派の取材をしたよね。

本橋:中核派は1985年当時、武装闘争をガンガンやっていたけど、情宣活動もちゃんとやらなくちゃいけないっていう時代だったんです。

平野:狙いは何だったの?

本橋:実際に行動している人間のセクトの話を聞いてみよう、と。論理で入りながら、実践もしっかり押さえるのはわたしのテーマですから。革マルは丁重に断られたんですけど、中核派は全学連委員長が出てきて、豊島区千早にあった「千早城」で。駅を降りて歩いていたら、上から「到着!!!」って大きな声で言われて。ずっと見られていたんですよね。

平野:すごいねぇ、緊張ある取材だよね。

本橋:いつも家宅捜査のとき機動隊が電動ノコギリで破壊していたあの鋼鉄製の入り口を開けて、正々堂々と中に入りましたよ。

平野;なにか得るものはあった? なんだったんだこいつらはっていう感じでしょう?

本橋:ありますよ。ごく普通の紳士的な若者でしたけど、でも当時まだ革マルとの闘争があったから、党派党争については頑迷なところがありましたね。

平野:「やられたらやり返せ、やられる前にやっちまえ」っていうのがあの世界だもんね。

本橋:延々と5時間くらい、インタビューしましたよ。中核の本部で革マルとの内ゲバを中止しては、と論陣を張るのは覚悟はいりましたよ、それは。

平野:本橋さんはほんとうに広いよね。ヤクザもやれば風俗もやれば左翼もやる。最後は塩見孝也だもんね。企画でおっぱいパブに連れていって喜んでるんだもんね、アハハハ! まったく、左翼バカにするんじゃないよ(笑)。

本橋:でも、本当におとしめたのはTABLO編集長ですからね! 久田君は当時のわたしの編集担当(笑)。


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平野:でも、本橋さんは、塩見さんのことをけっこう尊敬してたよな。

本橋:塩見さん大好きでしたよ。初めて会ったのは、雑誌「Views」(講談社)の企画で、テリー伊藤さんがレフリーで入って、新右翼一水会の鈴木邦男さんと元赤軍派の塩見さんが激突するっていう企画があって、そこでわたしは構成者として入っていたんですよ。平野さんは塩見さんが現役だったころから知っているんですよね?

平野:だいたい知ってるよ。俺よりぜんぜん偉かったけどね。塩見さんは、関西から流れてきたんだよ。でも結局、塩見孝也は「9条の会」から追放されたっていうのが面白いよね。(注:「ロフト席亭・平野悠の『暴走対談』|第一回 追悼・塩見孝也さん(元赤軍派議長)」より)そんな塩見さんをはめて、おっぱいパブに連れていったりして、本橋さんの意図はなんだったの?

本橋:獄中生活が長かった塩見さんは観念が先走るところがあったので、庶民が働く現場を見せたかった。それに風俗嬢はいつも右派が籠絡するので、左派からの巻き返しを、と思ったわけです。塩見さん、感激してましたよ。あとは久田くんの連載タイトルでもある『偉そうにしないでください。』っていう。これはね、実はわたしの生涯のテーマでもあるんですよ。右でも左でも、そんなに偉そうにしないでくださいよ、って。

平野:ほうほう。

本橋:わたし、こう見えても結構緊張しぃなんですよ。物書きってね、人と話すのが苦手な人は多いですよ。有名人コンプレックスもあるし、えらい人と会うときは緊張するんですよね。そんなときに、深呼吸するとか、相手の顔を野菜と思えとか、いろいろ言うけど、わたしの場合は違っていて。この人がどんな顔でクンニしてるんだろうって思うんですよ。

平野:アハハハ! どこかで足をすくってやろうって思うわけ?

本橋:いやいや、そうじゃないんですよ、そうすると相手も察するから。あとね、わたしの体験から言って、つまらない小説っていうのはあるけど、つまらない個人史っていうのはないと思っているんです。

平野:おっとと、かっこいいこと言いますねぇ。

本橋:どんな人間でもその人はひとりしかいないから、すでにオリジナリティなんですよ。だから、つまらない半生を聞いたためしがない。人の過去の話を聞くのが大好きだし。人間っていちばん悲しいことは、「自分の存在を無視される」ことだから、自分に関心を持ってくれる人がいるのは嬉しくて、しゃべってくれるんですよね。


杉山会長、村西とおる監督......


平野:僕は本橋さんと会ったのは95年で、ちょうどオウム事件があったんですよ。その次の年には、サカキバラ事件があって、社会が混沌としている時代だったんだよね。本橋さんはオウムにはハマらなかったんですか?

本橋:いや、関心はありますよ。いまだに関連本も読んでいるし。でもわたしは、あんまり宗教が好きじゃないんですよね。

平野:酒鬼薔薇事件や宮崎勤の猟奇事件は?

本橋:事件は大好き、というと語弊がありますが、書いてますよ。実話ナックルズ(ミリオン出版・大洋図書)で5~6年連載もしていましたし。いまも「東京裏23区紀行」というのを同誌で連載してますし。オウムも、やっぱり関心はあって、最初にあやしいなと思ったきっかけがあったんですけど...『借金返せにゃ腎臓を売れ』っていう本を出した杉山治夫会長っていらっしゃったじゃないですか。

平野:ありましたねありましたね、杉山会長! むかしプラスワンに呼びましたよね。あのころは、ああいうことがいっぱいあったんだよ。

本橋:いやぁ、よく出てきましたよね。

平野:よく出てきたって、あんたが呼んだんだろ!(笑)

本橋:そうそう(笑)。杉山会長、実はあのころってお金がないころで、羽振りのいいときは怒ると現金1億円を空高くばらまくんだけど、あのときはそれでも客席にお金を5,6枚撒いてくれましたよね。義理堅かった。

平野:アハハハ! あのビデオまだあるんじゃないかな。話がつきないな(笑)。

本橋:でね、以前杉山会長に取材したとき「若い愛人もいて、こわいものなんてないですね」って言ったら、「ひとつだけこわいものがあるんや」って言うんですよ。

平野:ほう。

本橋:「なんですか? どこの組ですか?」って聞いたら、「オウムや」って言ったんですよ。それが93年ころの話で、まだ一連の事件が表沙汰になる前ですよ。なんでオウムがこわいのかなと思ったんだけど、「つれさられて、消されてしまう」ってわけのわからないことをポロッと言っていたんですよ。あれはたぶん、裏社会ではすでにオウムの犯行というのが出回ってたんですよね。覚せい剤ルートも疑われてたじゃないですか。

平野:本橋さんはそのあたりで、二木啓孝とか江川紹子さんみたいに華々しい取材はしていなかったよな。二木さんは公安とも繋がってたから。

本橋:公安も裏社会もオウムは厄介だって知っていたんですよね。『弁護士一家を知りませんか』っていうパロディAVがあるんですよ。監督がオレンジ通信の元編集長で。プロデュースの村西とおるが、「お? きみはなんだか麻原によく似ているなぁ」って言い出して、麻魔羅少将って監督名を付けさせられて、オーメ真理教という新興宗教で性のイニシエーションを卑弥呼や田中露央沙に施したんですよ。実際に上九一色村まで行って撮影して。

平野:アハハハ! わざわざ行ったんだ。

本橋:そのころって「オウム冤罪説」がまだ流れていたんですよ。でも、やっぱりやってるだろうと。結果的にはあのパロディAVは先見の明があったわけです。

平野:さて、じゃあ話もでたところで、村西とおるの話を。

本橋:大学を出て24才で物書き稼業をやりだしたんですけど、26才で村西さんと取材で知り合ったんですよ。村西さんが「裏本の帝王」と呼ばれ逮捕され、刑務所から出てきて当時勃興しだしたAV監督をやるっていうんで、助監督、シナリオを手伝えよってことになって。

平野:でも、『全裸監督 村西とおる伝』を呼んで、おれまでチンポたってきて。

本橋:別に平野さんをたたせるために書いたわけじゃないですよ(笑)。でも年齢的に中折れとかしません?

平野:おれはバイアグラ使ってるから。インドから直輸入して。

本橋:いまはいろいろ種類があるっていうじゃないですか。

平野:え、教えてよ。バイアグラ使うと一週間くらい調子悪いから、健康にいいかわからないけど。...あれ、なんの話してたんだっけ。

本橋:村西さんですよ(笑)。

平野:あ、そうだそうだ。あんなにむちゃくちゃなキャラクターだし、「ナイスですね」っていう流行語まで作っちゃうし、なんで借金を50億まで抱えちゃったんだろう。

本橋:入ってきた金、全部制作費やら何やらに使っちゃうから、手形どんどん振っちゃうんですよ。怖いところからも借りてるから。

平野:すごいなぁ...(苦笑)。

本橋:でもよかったんですよ。あらゆるところから借りてるとパワーバランスがとれちゃって、勝手に手をだせないんですよ。

平野:50億ってねぇ。でもなんで復活できたの?

本橋:あの人、見栄っ張りだからなぁ。なんでも一番がいいからって、借金まで一番をとらなくても。

平野:アハハハ!

本橋:やっぱりファンが多いですよ、若い男性のファンも多いし。ここまでどん底の人もいないですから、「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる」って。ここまで悪条件の人なんていないじゃないですか。トークイベントをやると、自殺志願者のひとが来て、村西さんにサインもらってはげまされて、元気をもらって帰るっていう。

平野:初期のロフトプラスワンは政治とエロとオウムでもったような店だから。そこでね、僕らもAVにはまって。4大監督といえば、代々木忠、安達かおる、ヘンリー塚本、そして、村西とおるだと思ってるんだけど。安達かおるもめちゃくちゃだったよな、羊とセックスしたり。で、それを当時のプラスワンでやったんだよなぁ。イベントが終わって、コアな客だけが残った深夜にヤバいのが始まるんだよな、まいっちゃうよ......。その中で村西さんの面白さは強烈だよね。

本橋:みんなすごいですよ。村西さんは超弩級にすごいけど、超乱作だから。

平野:知ってる知ってる(笑)。

本橋:1日3本撮っちゃったりするんだから。

平野:その世代が終わって、第二世代のカンパニー松尾が「テレクラキャノンボール」っていう大作を引っさげてきて。いま、第三世代っていうのはあるんですか?

本橋:最近は見てないけど、いまはセルビデオというより配信の時代ですからね。プロの監督というよりも素人のほうがエグいですよ。素人のハメ撮りだとかネットの動画サイトに溢れてますから。

平野:そういうのはどこで調べるの? 別におれの趣味じゃないよ、読者のために聞いてるんだよ! いまいちばんおもしろいっていうのはxvideo?

本橋:あー、大物のパソコンのお気に入りに入っていたxvideo。

平野:アハハハ!

本橋:検索ワード打ち込めばなんでも出てきますからね。


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平野:やっぱり第二世代の、バクシーシ山下やカンパニー松尾の人気はすごいよね。ロフトプラスワンができたことで、今まで裏にまわって作っていた側に日の目が当たるっていうのはあったと思うよ。隠れたり恥ずかしい仕事っていう意識がなくなったよね。

本橋:そういうアンダーグラウンドの住人に発言の場をあたえたり、阻害されてきた論者にチャンスを与えたのが平野さんのロフトプラスワンでした。

平野:発言を封じられたり、無視された人をどんどん舞台にあげていったことが、ロフトプラスワンの成功だったんだろうな。

本橋:最初に塩見さんから「ロフトプラスワンに来てくれ」って言われて、新宿ロフトは知っているけど、ロフトプラスワンってなんだろう? って思いましたよね。でもインディペンデントの発言を居酒屋でやるのはおもしろいなぁと思いましたね。

平野:そうなんだよ、勲章もんだよ。Netflixで儲けた分を分けてくれよ。こどもを大学にいれるとか、あ、村西さんのこどもは超名門付属小学校に入ったんでしょう?

本橋:信じられないですよね。なんかもっているっていうか、金運や仕事運には見放されたけど、その分、家族運には恵まれましたよね。


宅八郎と田中康夫


平野:田中康夫と宅八郎は付き合いあった?

本橋:わたしが「噂の真相」で書いた原稿を、宅八郎が気に入ってくれて、会って意気投合したんですよ。ちょうど宅さんがワイドショーで追われているときで、1ヶ月くらいうちに避難してたんですよ。

平野:宅さんが!?

本橋:朝起きると隣に宅八郎。

平野:アハハハ! やだなぁ。でも文章が面白いんだよな。

本橋:いや、最高ですよ! ほんとうに。あの文章はほんとうにおもしろいです。また彼の連載、読みたいですよ。

平野:文章は読みたいけど、関わりたくないっていう、これは悩みだったよね。「SPA!」の編集も頭かかえてたよ。

本橋:田中康夫さんの「東京ペログリ日記」は名著で、宅さんからうけている攻撃を淡々とハードボイルド調に書いてて、あれもかっこよかったですよ。たいへんだっただろうけど、タフだよね。ハブとマングースみたいな。あのふたり、どっちも好きですよ。

平野:歴史に残る時代だったよな。20年前のことか、この20年間になにかあった? なにもないよな。

本橋:それはね、平野さんがマヒしちゃってるんですよ。刺激は慢性的に与えられると不感症になるので。

平野:でも新宿も変わったよね。

本橋:きれいになりましたよね。

平野:むかしなんてヤク中か暴走族ばっかりだったのに。散歩に行ってもメシ食いにいっても、どこかで緊張する気持ちがあって、それがおもしろかったけど。でも、コマ劇場がなくなって、警察の徹底的な締め付けがあって風俗も消えて、今までいなかった家族連れや子どもがたくさんいて、楽になったよな。

本橋:TOHOビルもできましたしね。

平野:昔の歌舞伎町はたしかにおもしろかったですよ。坊主頭のヤクザが隊列組んでいたり、血だらけのやつがいたり。つぎからつぎへと新しい風俗ができて。そのころのおれは「新宿風俗探検隊」っていうグループを作って、風俗を全店制覇したんだよ。でもいちばん良かったのは「熟女のひざまくら」。

本橋:ひざまくらの耳かきはハマりますよね。自分の見られたくない汚い部分を見られるわけじゃないですか。耳かき嬢と同化しちゃうからこっちも純な気持ちになって、つい本名教えちゃったりして、「付き合いたい!」って。潜入取材なのに(笑)。

平野:アハハハ! キャバクラと同じ原理じゃないですか(笑)。そういう歌舞伎町の変遷に喜んでいいのか悲しんでいいのか。

本橋:ロフトプラスワンの入口前でよく取材の人妻と会いましたよ(笑)。ボッタクリもまだまだあるけど、歌舞伎町のハードルは下がりましたよね。でも、なんだかんだ言って新宿はおもしろいですよ。一見きれいだけど、結構デンジャラスなところもあるし。

平野:で、バイアグラよりいいのってなんだっけ。教えてくれよ。(了)


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