TABLO編集長・久田将義 偉そうにしないでください。

【ラグビーW杯】桜は散っていない!五郎丸選手の涙の理由

2015年10月13日 ラグビー 久田将義 日本代表

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 ラグビーはコンタクトが大前提となるスポーツである。他のスポーツ、例えば野球やバスケット、サッカーなどはタックルなどしようものなら反則を取られる可能性が高い。それがないのがラグビーだ。反則が「合法化」されている、ある意味むちゃくちゃなスポーツだ。どんなに大きい相手が自分に向かって突進してきても、逃げられない。防具もつけていない。選手からすれば、怖いと同時に恐怖を打ち消すために、より大きな「勇気」を発動しなければいけない。

 その「勇気」を発動し続けてきたのが、今回のラグビーW杯の日本代表である。体格で劣る日本代表は世界一と言われる厳しい練習量をこなした。これが自信となり、また勇気の源になったのではと感じる。指揮官エディ・ジョーンズヘッドコーチの指導力のたまものだ。

「根性論」などを持ち出すと、一昔前の古い考え方だと思われるかも知れないが、根性ではなく、メンタルと置き換えれば分かりやすいと思う。スポーツは何でもそうだが、メンタル部分が非常にプレイに影響をする。メンタルを鍛えるには厳しい練習や、ミーティングなどを繰り返す。今回の日本代表の活躍はメンタル部分が非常に大きかったと思う。

 このサイトでは前回、前々回と注目すべきプレイと選手を挙げて日本代表のパフォーマンスを考察してきた。すなわち、レレィ・マフィや山田章仁である。ここでは、プレスキックの前の「アノ所作」で有名になったフルバック、背番号15の五郎丸歩選手の凄さを書いてみたい。

 まず185センチ99キロというバックスとしては世界と比べれば、比較的さほど大きくない身体ながらスコットランド戦で前半のトライ寸前を止めたタックルに見られるように、ディフェンス面でも非常に長けている。

 またプレスキックが注目されがちだが、実はラインの外に出すタッチキックの確実性に注目したい。時にはシュート回転をさせて軸足で蹴り込む。このタッチキックの正確さも五郎丸の魅力だ。

 最終戦。アメリカはよく戦った。一人余らせて、バックスでキレイにトライを取った場面もあった。が、日本代表はリーチマイケル主将の判断で要所要所のペナルティは五郎丸のキックに任せた。トライを狙う時は狙う。点を取れる時は五郎丸のキックを選択するというリーチ主将の判断は徹底し、そしてそれは間違っていなかった。アメリカには確かに勝利したが。決して楽な試合ではなかった。

 日本代表は三勝一敗の成績でも決勝トーナメントに出られなかった。ルール上、致し方ないとはいえ、ファンからすれば「勝負に勝って試合(ルール)に負けた」感があるのではないか。しかし、今まで一勝しか出来なかったW杯でいきなり三勝したのは選手、スタッフの皆さんは堂々と胸を張って欲しい。

 試合後のインタビューで五郎丸は、泣いた。男泣き。恐らく「世界一と言われたハードな練習を一緒にこなしてきた仲間たち(選手だけでなくスタッフも)とプレイするのもこれで最後になってしまった」

 そんな想いではなかったのだろうか。ラグビーは一人でするものではなく、スターティングメンバーの選手。また試合に出られなかった選手。選手を支えるスタッフ全員でやるものである。

そして、いざ試合に出れば、15人が一丸となって一つのボールを奪い合う。誰か、一人でも士気がかけている人間がいれば、チームに悪影響が出てくる繊細なスポーツでもある。 日本代表は、そういう選手が一人もいなかった。途中出場の選手も全て、だ。

 今回の活躍で一躍世界に名前をとどろかせた五郎丸の涙は、「ワン・フォー・オール。オール・フォー・ワン」(全ては一人のために。一人は全てのために)のラグビー精神を象徴しているかのように見えた。自分一人の活躍で「マン・オブ・ザ・マッチ」を取れたのではない。仲間がいたからこそ、取れたのだ。その仲間とも最後のプレイになってしまった。五郎丸の男泣きを僕はそのように感じた。

 2019年の日本で開催されるラグビーW杯に大いに期待したいと、今回の多々戦いぶりを見てそう思った。が、正直に言えばエディ・ジョーンズヘッドコーチ退任は今のところ、大きな不安材料と言うしかない。それが杞憂である事を願う。

Written by 久田将義(東京ブレイキングニュース編集長)

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