中川淳一郎の俺の昭和史

電車内でタバコが吸えた時代|中川淳一郎・連載『オレの昭和史』第五回

2017年12月26日 たばこ コラム 中川淳一郎 喫煙 電車

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嘘のように聞こえるかもしれないが本当の話

今や「子供がいる場合、自宅でも喫煙禁止」が議論されるような時代になったが、1970年代頃は、飛行機の喫煙もOKなだけでなく、電車の中でも喫煙OKだったのである。今の時代を考えると、「喫煙車があったんでしょ」と思うかもしれないが、そうではない。普通の電車でタバコが吸えたのだ。当然駅のホームはモクモクと煙だらけで、吸殻が至る場所に捨てられていた。

電車の中での喫煙については、ボックスシートでは灰皿が完備されていた。その中に水が入っていたりする場合もあり、とにかく灰がクサくて仕方がなかった。そして、当時の電車にはエアコンがついていないため、窓を開けることができた。この「天然換気扇」があるため、なんとボックスシートではなく、通勤・通学に使う通常のベンチ型シートの電車でもタバコを吸えたのだ。もちろん、火事の危険があるので超満員電車で吸うようなことはなかったが、空いていた場合は吸っていたのである。

席に座っている人はタバコを吸う時はとりあえず窓を開けた。マナーのある人は外に向かって煙を吐いていた。マナーがない場合は普通に吸っていた。立っている乗客はそのまま吸っていた。そして、吸殻を捨てる時は窓を開け、外に放り投げるのである。

当時の男性の喫煙率は70~80%ぐらいはあったため、これはごく普通の光景だったのだろう。タバコを吸わない人々も子供達もこの光景はごく普通のものとして捉えていたと思う。とにかく世の中、ありとあらゆる場所でタバコが普通に吸われていたのだ。

喫煙者が排除される時代になって久しい

私が会社に入った1997年から辞めるまでの2001年にかけても、オフィスでの喫煙は普通のことだった。喫煙室なんかなく、喫煙者の机の上には灰皿が置いてあった。メンバー全員が吸うという部署も存在した。会議中も平気でタバコを吸っていたため、狭い会議室は煙で燻されたようになり、長い長い会議が終わる頃には吸殻が50本ほど灰皿に入ってることもザラだった。

部署にはTさんというタバコが嫌いな人がいて、彼は必ず端っこの席に座っていた。隣の人がタバコを吸い始めると小型扇風機を回し、煙を反対側に押しやるのである。

まぁ、この頃から分煙の動きは加速していったと思うのだが、昭和の時代、タバコは「大人の嗜み」的な扱いを受けていた。だからこそ、中高生で不良だと見られたい者は積極的にタバコを吸った。小学生でも自慢は「オレはタバコ吸ったことがある」だった。

漫画や学園ドラマに登場する不良は大抵はタバコを吸っていた。週刊少年ジャンプに連載されていた『三年奇面組』『ハイスクール!奇面組』は中学校と高校が舞台だったが、中三の段階でスケ番グループ「御女組(おめぐみ)」の天野邪子は常にタバコを咥えた姿で登場する。高校受験の時は、口の中に大量のタバコを入れて問題を解いているシーンも登場する。

私自身は喫煙者ではないので、現在の分煙や完全禁煙の環境が整いつつあることは有難いことではあるが、若干「嫌煙教」のごとく喫煙者を排除し過ぎてはいないだろうか。大学生だった頃(1990年代中盤、「ゴールデンバット」は90円で売っていたが今や290円である。他のタバコは200円台だったのが400円台に。嗜好品ではあるものの、税金の面でも負担を強いられるうえに、公共の期間では邪魔者扱いされ、挙句の果てには家庭でも吸うことが憚られる時代になるとは......。

タバコの煙が充満していた昭和の時代の電車は異常ではあったが、当時はあれも一つの電車の「大人の光景」だったように今となっては思うのである。


文◎中川淳一郎

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