追悼 月亭可朝さん 生前のインタビューで語っていた吉本興業のスゴイ話|吉田豪

yoshimoto.jpg吉本興業東京本社

吉田光雄‏ @WORLDJAPAN
2008年、ストーカー事件直後に初めて取材した月亭可朝さんは最高に不謹慎で最高に面白い人でした(単行本『新・人間コク宝』収録)。それから約10年後、2017年に再取材したらすっかり元気がなくなっていて、吉本興業の誰も知らない物騒な裏側について話すときだけはスイッチが入っていたのが印象的。
17:21 – 2018年4月9日
https://twitter.com/WORLDJAPAN/status/983258590315237376

 3月28日に亡くなっていたことがこの日わかった月亭可朝さん、10年前に取材したときは本当に最高だったんですよ!

 ストーカー規制法違反容疑で逮捕された、そのわずか1か月後にインタビューを受けるだけでも有り得ないのに、過去の様々なトラブル(野球賭博での逮捕とか)を一切反省もなく全部笑い話にした上で、ストーカー事件に関しては相手の女性に対して一切の恨み言も口にせず、この事件で謹慎に追い込んだ上方落語協会会長の桂三枝(当時)をピンポイントでひたすら攻撃しまくる姿勢に爆笑。

「ワシはもういつ死んでもええと思ってますよ(あっさりと)」と言い切りつつも、「我が人生に後悔はなしですか?」とボクが聞くと、「そらいっぱいね……」「(小声で)まだね、女は欲しいいうのが困んねん」と言い出すのもさすがでしたが、それから10年後。2017年にニューシングル&ベストアルバム発売のタイミングで再取材したときは、ビックリするぐらい元気がなかったんですよね……。

tsukitei.jpg「ザ・月亭可朝ベスト+新曲2017」 

 声も小さいし、体調も悪そうだし、感情のコントロールも難しくなってたみたいだし(この日だけでもレコード会社に怒ったり、スタッフに怒ってPVの撮影もキャンセルしたり、いろいろあった模様)、桂文枝の不倫スキャンダルの話を振っても全然スイッチが入らないぐらいで。

 そんな中で唯一熱く語ってくれたのが、アルバムに借金の歌が入っているという流れで飛び出した吉本のやばい話だったわけです。10年前のインタビューの時点で「それまでは山口組と結託してたりとか、そんな会社ですやんか、吉本って。先代社長の林正之助なんかヤクザですよ、やってることは。土地の乗っ取りとか、マーキュリー・レコード乗っ取ったとか、そんなことばっかりやってきた会社ですねん」とか言ってた人だから、こういうことに関してもタブーがなさすぎ!

「ワシは芸能界に入ってこのかた借金切れたことないからね。吉本の中邨(秀雄)社長、死にましたけど。あの人にも借金ありまんねん。ゴルフで会うて、『金どないしてんねんな?』って言うから、『いやいや、いま難儀してまんねん』『じゃあ明日、会社へ来いや』言うて。それで吉本に行って、『ちょっとこれが欲しいんや』って指2本出したら、『200か?』って言うから、『いやいや、そうやなくてもうひとつ上』『そんならちょっと待ってや』って会長に言いよってん。会長が自分の部屋から出てきて、『可朝には金貸したらあかん! あいつはいっつも競馬に持っていくんやから!』って聞こえるように言うとんねん。
 それでも中邨社長は、どっちかいうたら遊び人系やったから、ワシら気が合うたんですよ。それが『任しとか任しとけ』いう顔しよってん。それで会長がおらんようになって、『ほんなら2000か?』って言うから、『2000貸してくれるんやったら3つ貸してえな』って言ったら、すぐ貸してくれよってん。あんなケチな吉本が貸してくれよったの、3000万。ほんでそれを銀行の通帳にして、中にお金入れてワシに渡してくれたの。これだけはもう手つけんとこうと思うて借りたんですよ、ギャンブルに持ってったらあかんと思って。で、借りて通帳を見て銀行に行って、『これ現金すぐ出してもらえんのか?』って聞いて、『すぐ出せますよ』って言われたらもうコロッと変わって競馬に行ってもうて。200、300持ってったら競馬なんてすぐですからな。中邨はんに悪いことしたなと思うて」

 もちろん、この3000万円は一切返してないとのこと。そして、それだけの大金を取り立てないぐらい中邨社長が太っ腹だったのには、こんな理由があったっみたいなんですよね。

「中邨はんも会社の金を5000万ほど持ってって。●田●ウ●というこれもんの(頬に傷のジェスチャー)、あれがヤクザまがいのことで中邨社長を脅して、それを回収してきよってん。吉本の前のボンボンの養子、あれに渡したらしいけどね。また吉本のなんか小説できるようだけど、ほんまのこと書くのはおらんわね」

 そんな感じで新譜の取材だということも忘れて吉本の裏面について詳細に語り、「そのストーリーを知ってるといったら、竹本浩三という吉本新喜劇をずっと書いてきたヤツがおるがな。ワシより5つ上や。それとワシが知ってる、それだけやろうな」とか言ってたんですが、音楽誌のインタビューだったので当然のように大幅にカット!

 なお、月亭可朝さんのお兄さんのお孫さんが世界的ダンサーのケント・モリだと某スポーツ紙で書かれていたことについて聞いたら、「……誰から聞きました? そう、マドンナのチームにおんねん。俺、踊ってるの見たことないけど、ええ踊りするらしいわ。3年ほど前に兄貴が死んだとき、その子がたまたま日本にいたんで来たんですよ。ええ子やねん。ただし、それのお母ちゃん、兄貴の娘が泣いて、ワシに『親戚やと言わんといてや』って言うの。『わかった、そんなこと絶対言わへんから』って言うて、泣いてるのを慰めたことはある」

 つまり、月亭可朝さんの活動内容があまりにもアレなので、親族から内緒にしてくれと言われたとのことでした。相当いい話なのになー!(文◎吉田豪 連載「ボクがこれをRTした理由」)