STAP細胞・小保方さんを批判できない!? エセ科学大国ニッポンの現状
STAP細胞論文の撤回に同意した小保方晴子さん。リケジョの命運は?
小保方晴子氏のヤラかし疑惑のお陰で、STAP細胞を巡る騒動は今なお景気良く炎上中だが、この国ではこの手の眉唾ものの「最新技術」に名のある大手企業が飛びつき、裏も何も取れていないのに商品化されるというマヌケな流れを何度も何度も繰り返してきた。
例えばマイナスイオン。例えばプラズマクラスター。例えばナノイー。最近ではEM菌なども注目株だ。これらは昔から一括りに“似非(エセ)科学”や”疑似科学”と呼ばれている。
実はこの辺りの疑似科学商品、いやもっとハッキリと “詐欺商品” と呼ぶべきか……には面白い繋がりがある。EM菌だけは別系統だが、それ以外は【マイナスイオン→プラズマクラスター・ナノイー】 といった具合に、系譜として1本の線で繋げてしまうのだ。
さらに言えば、この系譜には更に先祖がいる。マイナスイオンブームの前は “トルマリン” があり、トルマリンの前には “波動” があった。これらは少しずつ活躍(?)の時期が重なっており、ある似非科学商品のウソがバレたら次の新しい詐欺商材にバトンタッチして、そのウソもバレたらまた新しい詐欺商材に繋いで……と、常に名を変え品を変え、でも効果は似たり寄ったりといった具合に遺伝子を残し続けているのである。
もう少し詳しく説明すると、昔々の波動ブームの際は、トルマリンが「良い波動を出す石」として持て囃された。ところが「どうも波動はウソらしい」という情報が世に定着すると、波動商品が世の中から消え、トルマリンは「良い波動を出す石」ではなく「マイナスイオンを発生させる石」という話になってしまったのである。そして人知れずトルマリンも消えて行き、マイナスイオンが残ったのだが、そのマイナスイオンの負の情報が定着すると、今度はプラズマクラスター(シャープ)や、ナノイー(パナソニック) なる技術が流行り始めた。
このマイナスイオンブームとプラズマクラスターブームの切り替わりの時期の広告を思い出してみるとよく解ると思うのだが、当初はプラズマクラスターやナノイーといった新技術は、すべてマイナスイオンと混同されていた。
「マイナスイオンだの、うんちゃらイオンだのという不思議な成分が、空気中のナニやアレを殺菌してくれてどうのこうの~~」 という売り文句を覚えてはいないだろうか? もっと酷い物だと、パナソニックのナノイードライヤーは、説明書に「プラチナマイナスイオン」なる頭痛を引き起こすような文言が踊っているくらい “ガチ” である。
このマイナスイオンブームの先祖である波動ブームの当時は、ビックカメラにでさえ波動商品の専用棚があり、そこにはアクセサリーから観葉植物から、名のあるメーカーのロゴが入った様々な波動商品が並べられていた。さらに日本人ならば殆どの方が知っているであろう大手居酒屋チェーンの庄やには、卓上に波動塩(プレーン・梅・抹茶の3種類だったはず)なる珍妙な塩が置かれており、それには「プラス12の良い波動の塩です」といった意味不明な説明書きが踊っていたのを覚えている。またコーヒークリームで有名なあの会社や、万年筆で有名なあの会社なども、大々的に波動の研究室を作ってしまったり、良い波動が出ているとされる謎の万年筆を売り出したり、なんだったら政治家を取り込んで 「波動研究会」を開いてしまったりと、それはそれは恥ずかしい行為を平然と行っていた。波動と名の付く商品で信じていいのは真空波動研(http://www.kurohane.net/)だけだコンチクショウ。
さて、こうした科学的根拠が何もないエセ科学商品であっても、売り出しているのが有名企業だと、広告収入欲しさにあらゆるメディアが宣伝を手伝ってしまい、またスポンサーへの配慮から強く批判したり疑問の声を挙げることをしないため、うっかり騙されてしまう人間が続出する。未だに「マイナスイオンと名の付く物はすべてエセだ」といっても信じないひとがいるほどだが、なんせ日本を代表する家電メーカーの中に、マイナスイオンに手を出さなかった会社はないと言っていいほどなのだから無理もない。いったい誰から批判すればいいのやらといった有り様だ。
またこのようなエセ科学商品は、昔は詐欺師連中かトンデモさん(病人)の縄張りであり、上で挙げた 【波動+トルマリン】→【マイナスイオン+トルマリン】 という流れなど、単に波動詐欺の際にトルマリンを仕入れすぎた連中が、だぶついた石を捌くために 「あ~~実はトルマリンはマイナスイオンも出すんだよね~~」と鞍替えしただけに過ぎなかった。話がここまでで止まっていれば、マイナスイオンは波動とならぶトンデモ系の健康ブームとして笑えただろう。
ところが、マイナスイオンブームの頃は世の中が不況のどん底にあったせいで、有名企業であっても収益を確保するのに恥もヘッタクレもない状況だった。その巡り合わせの悪さから、アンダーグラウンドで蠢く詐欺集団と、名前も歴史もある大企業が、まったく同じエセ科学商材に手を出すというあってはならない最悪の状況に発展する。大企業が動けば全マスコミが金欲しさに同調するというわけで、この国では「社会的に大きな責任を負わねばならない立場の人間ほどマイナスイオンを批判しない」という異常な事態になってしまったのだ。
STAP細胞はこうした商品化がなされる前に騒動になったのだから、ある意味で助かったとも言える。これがもし1~2年程度 “放し飼い” になっていたら、まず間違いなくどこぞの企業が何らかの形で商品開発をしていただろう。それがTV・雑誌などが全力でひれ伏すような大手企業だったならば、後から「STAPウソじゃね?」という疑惑が生じても誰も批判できなかったかもしれない。
小保方さんありがとう。 本当にありがとう。
Written by 荒井禎雄
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