内部文書で判明! 芥川賞・直木賞候補作のさびしい販売部数 by草下シンヤ

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1月16日、第150回芥川・直木賞の選考会が開かれ、芥川賞を小山田浩子さんの『穴』、直木賞を朝井まかてさんの『恋歌』と姫野カオルコさんの『昭和の犬』がそれぞれ受賞した。

わたしも小説を書いている身であるが、自身のドラッグ体験談でデビューし、臆病にも関わらず裏社会を取材したことでさまざまな団体や組織から脅迫を受け、最近は仲間たちとほそぼそとやっているニコ生放送も運営サイドや公安から目をつけられる始末であり、こんなめでたい賞とはまったくもって縁がない。自分からは遥かに離れた場所の出来事として受賞のニュースをぽわーんと見ていた。

さて、今回、わたしは直木賞・芥川賞の候補作を記した内部資料と思われる「1枚のペラ紙」を入手することに成功した。そこには昨今の文芸書の苦戦、書籍の販売部数の低迷が顕著に表れていたので、ここに公開することにする。

この内部資料には、今回の直木賞・芥川賞の候補作にあげられた11作品(直木賞6作品、芥川賞5作品)の「出版社」「著者」「書名」「初版部数」「累計部数」などの情報の他に印刷所や製本所の名前も記されている。

著者の不利益になる可能性もあるので、各候補作の初版部数を記すことは控える。しかし、作品がすでに刊行されている直木賞の候補作6点のうち、初版部数が1万部を超えているのは2点のみ。その後、増刷を重ねて1万部を超えたものを含めてもわずか3点である。

直木賞の一般認識といえば、国内最高の大衆小説に与えられる賞というものだろう。その候補作の発行部数がこれでは文芸書が苦戦しているというのも深く頷ける。中には、初版部数5000部、4刷で8000部となっている候補作もあり、これなどは2刷、3刷、4刷を1000部ずつ重ねていったということだろう。

書籍という商品も他の製造品と同様に、同一の商品を大量生産すればするほど1つあたりのコストは下がる。1000部の増刷などは採算性の観点からいえばかなり苦しいが、恐る恐る少部数の増刷を重ねなければならないのが文芸書の現実なのだ(ただし、このように小部数でも増刷をしてくれることは著者にとっては非常にありがたいし、励みにもなる。出版社には賛辞を送りたい)。

また、資料の欄外には興味深い書き込みがある。

「受賞時最大8万部重版」

これは直木賞のある候補作について書かれたものだ。つまり直木賞をとれば、バーンと増刷かけますよ、ということであり、実に景気が良い。新聞、テレビ、ネットニュースなどあらゆるメディアで取り上げられることから、受賞すれば家が建つと言われていた頃から比べればさびしいことは否めないが、それなりの増部は見込めることが窺える。

芥川賞に至ってはより顕著だ。芥川賞の場合、候補5作品のうち、既刊は1作品であり、残りの4作品は文芸誌に掲載されたのみでまだ刊行されていない。そのうちの2作品の欄外にこのような書き込みがある。

「受賞時5万部 受賞しなかった場合0.5万部」

「受賞時未定 受賞しなかった場合0.3万部」

まさに天国と地獄。10倍もの差となって表れている。

しかし、最近では芥川賞・直木賞を受賞しても10万部いけば成功だと言われており、つくづく文芸書の苦戦を実感せざるを得ない。これからも自分は物書きの世界でやっていかなければならないと思うものの、こんな資料を公開してしまうんじゃ、自分で自分の首を締めているようなものだなぁ! とゴロ巻きながら今夜は泥酔することにします。

Written by 草下シンヤ

Photo by 穴/小山田浩子(新潮社)

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商業的にも欠かせない賞。

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