日米両政府の国策押し付け…辺野古移設に見え隠れする「沖縄差別」by 岡留安則

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元『噂の真相』編集長・岡留安則の「編集魂」

 

 沖縄の辺野古新基地建設着手のX-DAYが目前に迫っている。キャンプ・シュワブのゲートから大型トレーラーやトラックで建設用の資材が連日のように搬入され、それを阻止せんとする反対派の市民運動団体との小競り合いが続いている。流血の惨事や逮捕者はまだ出ていないが、那覇新港には自衛隊の艦船5隻が緊急事態にそなえて待機している。

 台風接近で、一時的に内地の母港に避難したが、再度寄港する予定である。政府側は、海底ボーリーングに関係する海域を立ち入り禁止とし、無断で侵入した場合には特別刑事法で逮捕する方針を打ち出している。そのための公安警備警察も組織している。最悪の場合は自衛隊を導入してしても、埋め立て工事を国家の暴力装置を駆使して強権的に押し切る腹づもりなのだろう。

 少なくとも、沖縄県民の7割が反対している辺野古新基地建設を国家の暴力装置を使ってでも強行しようというのが政府の方針だ。こんなやり口が許されていいのだろうか。沖縄に関してはいつの時代もそうだった。明白な沖縄差別である。およそ、日本の憲法における民主主義の埒外に置かれてきた沖縄は米軍基地関連施設の74%が押し付けられ、さらに近代装備をそなえた辺野古新基地を押し付けようというわけである。一度つくられた新基地は、100年から200年は運用される。

 政府は沖縄の基地負担軽減を幾度となく繰り返してきたが、そのほとんどが口先三寸、その場しのぎの言い逃れでしかなかった。辺野古に新基地を建設することは、沖縄本島北部の東海岸における米軍の沖縄駐留を200年は続けていくという、日米両政府の国策の押しつけ宣言である。
 さすがの安倍政権も沖縄に基地負担を押し付けていることに、負い目があるのか、普天間基地に配備されているMV22オスプレイを佐賀空港に移設する方針を打ち出している。危険なオスプレイ配備を佐賀県民が受け入れるかどうかは見通せない状況だが、政府は基地負担の交付金を佐賀県にも交付するアメの政策も打ち出している。

 石原伸晃環境大臣の言ではないが、「最後は金目でしょう」といわんばかりの政府の本音は、沖縄に関してはもはや常套句のような政策と化している。しかし、沖縄県民も政府の札束でほほを叩くやり方に対しては、そう簡単にはだまされなくなっている。金目よりも沖縄の平和や環境などの将来の方が大事だからだ。

 今年の11月には沖縄県知事選が実施される。現時点では三期目を目指す仲井真弘多知事と翁長雄志那覇市長の一騎打ちが予想されている。

 これまでの県知事選と決定的に違うのは、保守対革新の対立構図ではなく、翁長市長側には従来の保守、革新に加えて、一部経済人の支持も集まっており、オール沖縄、県民党の体制が形成されつつある。その土台づくりと思われる「沖縄建白書の実現を目指し、未来を拓く島ぐるみ会議」の結成大会が27日宜野湾市民会館で開かれた。

 参加者は2000人を越えて、会場に入りきらないほどの盛況だった。県知事選とは関係ない運動だとしているものの、明らかに翁長雄志市長を支援する団体やメンバーが参加していた。この会場での熱気を見る限り、翁長陣営の勢いは仲井真知事を圧っしている印象だった。実際、官邸の独自の世論調査でも、翁長陣営は仲井真陣営にダブルスコアの差をつけており、石破茂幹事長もいまだに最終決断は下していない。

 安倍政権のやりたい放題の政治は続いているが、支持率は徐々に低下している。安倍に近い産経新聞でも支持率は44%。支持率が30%台になれば、危険水域だが、消費税増税、特定秘密保護法、集団的自衛権、原発再稼働など、国論を二分する難題が控えており、目くらましで内閣改造しても、これまでのような上がり目は期待薄だろう。外交問題でも、日本は四面楚歌。隣国の中国、韓国と安倍総理の首脳会談は一度も開かれていない。一時は急接近していたロシアもウクライナ問題で米国から横槍がはいり、頼みの北朝鮮拉致問題もケリー国務長官から牽制を受けている。外交的には悪材料ばかりなのだ。

 ここで、メディアの安倍政権批判が期待されるところだが、新聞も週刊誌もパワー不足。テレビに至ってはワイドショーも報道・情報番組も権力批判の牙を失っている。テレビ朝日の「報道ステーション」はまだましな方だが、「NEWS 23」の劣化が激しい。膳場貴子キャスターが単なるニュース読み、仕切屋になっており、視聴者に響くような気の利いたコメントも出てこない。

 そんな中、「不適のジャーナリスト筑紫哲也の流儀と思想」(集英社新書)という佐高信氏の新刊が出た。したたかに、しなやかに権力と対峙した筑紫さんの実像に迫るタイムリーな好書だ。最近のテレビキャスターに欠けているものを浮き彫りにしている。膳場キャスターも岸井成格コメンテーターも熟読すべし、である。

Written by 岡留安則

Photo by Sonata

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