山梨・女児失踪事件だけではない 忘れてはならない全国で起きている行方不明者事件

初動捜査に問題はなかったのか。未だ救出は続く(埼玉県警ホームページより)

 

2019年9月に山梨県道志村のキャンプ場で失踪した小倉美咲ちゃん(当時小学1年生)に関連する捜査は今、大きな山場を迎えている。4月23日、人の骨とみられる頭骨の一部が見つかったのだ。それを受けて警察が山狩りをしたところ、美咲ちゃんが履いていたものと柄が一致する靴や衣類、肩甲骨の一部や手足と思しき細長い骨が続いて見つかった。頭骨をミトコンドリアDNA鑑定にかけた結果、母親との血縁関係が認められた。

母親のとも子さんは日々の報道に張り裂けそうな思いながらも、気丈にもコメントを出し続けている。
「まだ娘の物だと特定されたわけではない。今も娘の帰りを信じている」と。
直前まで元気だった女の子や若い女性が予兆もなく失踪してしまう。

 

●三重県・ポケベル女子高生行方不明事件

こうした事件は三重県で目立つ。

1997年6月に発生した北山結子さん行方不明事件がそのひとつ。事件高校3年生だった北山結子さん(多気郡明和町在住)が塾の採点のアルバイトを終えた後にいなくなっている。普段は迎えに来る母親と帰宅していたが、この日に限って「友人Aの家で勉強して帰る」と、家に告げていた。午後11時になっても結子さんが現れなかった事から友人Aは北山さんの実家に電話。それを受け、手分けして探すも見つけることができず、日付が変わった午後2
時頃、両親は警察に捜索願を出した。

心配した友人たちは、結子さんのポケベルにメッセージを入れ続ける。そのうちの一人である友人Bが自宅の番号を何度も入れて、返事を待ったところ、無言電話がかかってくるようになった。その相手に向かって、友人Bが話しかけたところ、男性Cが応えた。
事件が発生して2週間近くが経ったころ、BさんのところにCから「ポケベルを返すから取りに来い」という電話が入る。Bさんが実際にバス停に向かったところ、北山さんのポケットベルがその場所に置かれていた。

翌々日、Cから「受け取ったか」と電話があり、警察はその電話の逆探知に成功、電話をかけた先の公衆電話の前にいたCを警察は逮捕する。
逮捕されたCは自称露天商手伝いの40代の男性。Cは婦女暴行の罪で12年服役して釈放されたばかり。
警察がCの車を捜査したところ、結子さんの毛髪約100本や結子さんの漢和辞典が出てきたり、電話の声と男の声紋が一致したりする。男Cが結子さんに対し何らかの罪を働いたことはほぼ間違いなかった。

ところがだ。男性Cは事件を起訴されることはなかった。逮捕から約3週間後の7月に証拠不十分で釈放されてしまう。男が犯行について貫き通したからだ。結子さんの行方が分からなかったままでは、起訴することが出来なかったのだ。

 

●四日市・女児失踪事件

小倉美咲ちゃんと年齢が近いケースで言えば、1991年3月に四日市市で発生した加茂前ゆきちゃん(当時小2)の失踪事件が挙げられる。
ゆきちゃんは午後2時頃、友達と別れて学校から下校している。自宅に帰っていることは、母親がパート先から自宅に電話し「今日は遅くなる」「わかった」という会話をしていることから間違いない。午後4時前に小学6年生の姉が帰宅。テーブルの上にはまだ温かいココアが飲みかけの状態で置いてあったが、ゆきちゃんの姿はすでになかった。

このとき不幸だったのは、ゆきちゃんが事件に巻き込まれたことに誰も気づかなかったことだ。
事件当時、夜勤明けの父親は家にいた。しかしぐっすりねむっていて、事件に気づくことがなかった。
午後4時ごろに帰ってきた姉は、「いつも通り、外に遊びに行ってるのだろう」――そう思い、母親に連絡することも探しに行くこともしなかったのだ。
午後8時になってもゆきちゃんは帰ってこなかった。パートから帰ってきた母親は、ゆきちゃんが事件に巻き込まれたかもしれないと案じ、警察に捜索願を出す。しかし、その後、ゆきちゃんが戻ってくることはなかった。今も失踪したままだ。

 

●筆者の知人編集者が行方不明に

三つ目は1998年11月24日に発生した伊勢女性編集者失踪事件。当時24歳だった伊勢市の雑誌編集者、辻出紀子さんが、知人の男Xに会った後、失踪したという事件だ。この辻出さん、著者である西牟田靖の友人。それだけに僕はこの事件のことを根掘り葉掘り調べ尽くしている。TABLOにはそのときのことが連載されているので、詳細についてはそちらを読んでいただきたい。

【未解決事件の闇1】雑誌GON!にも登場した女性編集者が謎の失踪 | TABLO 

夜11時過ぎ退勤した後、辻出さんは消息を絶っている。そして翌日、彼女の車だけが、勤務先から数キロ離れた保険会社の駐車場で見つかっている。その日の夜、辻出さんは、過去に取材した男性Xに電話で呼び出された。そのことが携帯の通話記録から判明している。警察はXを別件逮捕(ホテトル嬢監禁事件)して、本事件のことを徹底的に取り調べた。
しかしだ。
Xについた人権派弁護士の入れ知恵もあって、Xは黙秘を続けた。そしてXは釈放される。辻出さんの消息は今もわかっていない。

これらの事件に共通するのは、失踪した本人に関しての足取りがその後全くつかめていないということ、失踪してしまった親たちは何十年もずっとこの事件のことで苦しみ続けているということだ。
美咲ちゃんの事件に関しては、今後の捜索・鑑定結果によってどう展開するか余談を許さない。なので込み入ったことは書けない。しかし、一刻も早い解決を僕もずっと願っている。それは確かだ。(文@西牟田靖)