石垣島湘南国際ドキュメンタリー映画祭、横須賀で開催 受賞作に社会性と表現力評価 監督ら喜びの声
石垣島・湘南 国際ドキュメンタリー映画祭が開催。
若手映像作家の発掘と支援を目的とする「第4回石垣島湘南国際ドキュメンタリー映画祭」(長島一由実行委員長)が3月20、21の両日、神奈川県横須賀市佐島のシニア向け施設「マゼラン湘南佐島」で開催された。表彰式は24日、同施設のVRルームで行われた。
審査は、元フジテレビで元逗子市長の長島一由氏、元日本テレビプロデューサーで映画監督の土屋敏男氏、東京藝大名誉教授筒井武文氏の3人が務めた。
【長編部門】のグランプリには、横尾友美監督「わたしたちに祝福を」が選ばれた。
審査委員長の筒井武文氏は
「ろうあ者の監督が作成し、出演も。多くの方が体感できない世界を疑似体験させる芸術性の高い作品。ろうあ者が虐げられてきた歴史を捉えた重要なテーマを取り上げている価値ある作品でもある」
と講評した。
横尾監督は受賞について、
「筒井審査委員長からの言葉が大変光栄で胸が熱くなりました。多くの方が体感できない世界を作品として届けられたことを、本当に嬉しく思います。温かいお言葉を励みに、これからも精進してまいります。ろう者として生きる中で感じてきた想いや身体の言葉を、この作品に込めました。その声が届いたこと、そして評価していただけたことを心から嬉しく思います。」
と喜びを語った。
同作は、ろう者女性の生きづらさを繊細かつ力強く描いた作品で、監督自身が主演も務める。横尾監督は身体表現を通じた活動も行っている。
このほか、一般部門グランプリには新田義貴監督「摩文仁 mabuni」、国際コンペ部門グランプリには長谷川友美監督「ここにいる、生きている。〜消えゆく海藻の森に導かれて〜」が選ばれた。観客賞グランプリは鈴木七沖監督のコミュニティムービー「30(さんまる)」が受賞した。
また、【短編部門】グランプリは、磯部和弥監督「イスラム|君と歩む」が受賞した。
審査委員長の土屋敏男氏は
「ドキュメンタリーの大事なものが映っている。ドキュメンタリーというのは取材対象の強さ、存在感が大事だが、それ以上にこの作品には撮る側の、どしんと構えた強さがある」
と評価。さらに
「力強く生きる、とは何か? 力強くとは家族でそれを受け入れ生きていくことだと教えてくれる。素晴らしい作品」
と講評した。
磯部監督は受賞に際し、次のように述べた。
「日本において、ドキュメンタリーという表現を大切に守り続けておられるこの映画祭で、グランプリをいただけたことを心から光栄に思います。主催いただいた関係者の皆様、そして作品に立ち会ってくださった皆様に、改めて深く御礼申し上げます。
本作の主人公、イスラムとその家族は、辺境の草原に近い場所で暮らす半遊牧民です。脳性麻痺を持つ彼にとって、リハビリや学校といった施設は、手の届かないところにあります。日々の生活のすべてを、家族の献身が支えています。
しかしながら、イスラムという青年は、驚くほど明るい人です。彼がそこにいるだけで、周囲には自然と笑顔が溢れます。私自身も、カメラを回しながら、彼の屈託のない姿に幾度となく救われ、勇気づけられてきました。
厳しい自然の中で、運命を受け入れ、力強く、そして美しく生きる。その姿に心を動かされ、この映画を作りました。今でもイスラムからは、ビデオ電話で『次はいつ撮りに来るのか』と、ジェスチャーで問いかけられます。次作に何を撮るかはまだ決まっていませんが、彼の運命に立ち向かっていく姿は、これからも私たちの歩む道を照らし、確かな糧となってくれることを信じています」
同作はキルギスの辺境で暮らす脳性麻痺の青年の日常を追ったドキュメンタリーで、国内外の映画祭でも評価を受けている。
このほか、一般部門グランプリに吉田泉監督「私のお詫びの物語」、国際コンペ部門グランプリに上村雅代監督「それでも紙の本が好き」、国内学生A部門グランプリにまるあかり監督「find me/私を見つけて」が選ばれた。観客賞グランプリは山部住子監督「僕らのじいちゃん」が受賞した。
本映画祭は、地域施設を活用した開催形態も特徴の一つであり、多様な視点から社会や個人の生を見つめるドキュメンタリー作品が集まった。若手作家の登竜門として、今後の発展が期待される。(文・写真@霜月潤一郎)