過去の人気曲をほぼ封印して「最強」を見せつけた 5月28日アンジュルム日本武道館コンサート|ライブレポート

『泣けないぜ…共感詐欺/Uraha=Lover/君だけじゃないさ…friends(2018アコースティックVer.)』

 ハロー!プロジェクトの10人組アイドルグループ・アンジュルムのホールツアーファイナル公演『アンジュルム コンサートツアー2018 十人十色+ ファイナル』が5月28日、日本武道館で開催されました。リーダーである和田彩花を筆頭にメンバーたちは日頃から「現在のアンジュルムは最強だ」などと自信たっぷりに語っていますが、そんな言葉を簡単に超えていくとんでもないライブでした!(アンジュルムについての関連記事は下記リンクをご参照下さい)

 ツアータイトルに「十人十色」とあるように、メンバーの個性が存分に発揮されていた今回のライブですが、その象徴となっているのがライブ前半の衣装です。10人のメンバーが身に纏っているのは、それぞれまったく違ったスタイルの衣装。しかも、どぎついまでにビビッドなカラーリングで、相当強めな衣装です。メンバーたちの個性を前に出して、ガンガン戦っていくアンジュルムの肉食動物のような好戦的な姿勢が、過剰なほどに表現されているのです。

 そんな個性的な衣装をまとったメンバーたちが、それぞれのフィーチャー曲を含めたメドレーを披露するのですが、その選曲もかなり絶妙です。あの蒼井優もこの曲でアンジュルムに虜になったと言われている『カクゴして!』から始まって、アンジュルムの前身であるスマイレージ時代の楽曲やダンスパフォーマンスを挟んで、『臥薪嘗胆』という鉄板盛り上がりソングで締めるというこのメドレー。スマイレージ時代から現在に至るまでの歴史を振り返るかのようなイメージもありつつ、スマイレージ時代の楽曲を現在のメンバーたちの個性でリプロダクトしているかのような構成。まさに現在の自分たちに自信があるからこそできるチャレンジです。

 中盤では新曲『夏将軍』も初披露しました。このところハロプログループへの楽曲提供が続いている湘南乃風のSHOCK EYEが手がけた夏ソング。さわやかだし、コールも入れられるし、アンジュルムっぽい強さもあるし、とにかく盛り上がる1曲。おそらく暑い夏の野外で聞けば、誰もが脊髄反射で楽しくなっちゃう曲です。今年の夏、この曲をひっさげていろんなところでアンジュルムのパフォーマンスが見られることを期待せずにはいられません。

 さて、後半は最近のアンジュルムのイメージを踏襲するクール系な衣装で登場し、『出すぎた杭は打たれない』『次々続々』といった定番曲から、『乙女の逆襲』『キソクタダシクウツクシク』あたりのダークな楽曲で攻めて、『愛さえあればなんにもいらない』で本編終了。明るくカラッと楽しい感じで終わるのではなく、クールで強めな雰囲気のまま終わっていくところに、現在のアンジュルムが進んでいこうとする道が暗示されているのでしょう。

 そして、アンコールのラストはバラード曲『君だけじゃないさ…friends(2018アコースティックVer.)』で、しっとりと幕が閉じます。個性的なメンバーが揃ってワチャワチャしている印象が強いアンジュルムにしてみれば、このラストは”裏切り”だったと言えます。

 おそらく、今回の日本武道館公演で初めてアンジュルムを観たというお客さんも少なくなかったと思います。であれば、誰もが盛り上がれるようなポップな楽曲や、多くのアイドルファンに知られているスマイレージ時代の有名な楽曲を並べるという選択肢もあったはず。でも、それをやらずに個性的で強くてクールな今のアンジュルムを見せつけたというのは、やはり自信の現れなのでしょう。そして、それを完璧なパフォーマンスでやり遂げられたのは、グループが「最強」であることの証なのです。

 ただ、こんなにすごいライブをしているのに、どうして日本武道館クラスなのか……と思う部分があるのも事実です。横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナで単独ライブをやっていても、まったくおかしくないのです。もしかしたら、あまりに個性的すぎるがゆえに、そしてあまりに「最強」すぎるがゆえに、現在のアンジュルムが世間と乖離してしまっているのでは……なんてことすら思えてきます。そういう意味では、『夏将軍』のようなキャッチーな楽曲とともにいろいろなフェスなんかに出演し、多少個性抑えめのライトバージョンでパッケージングしたアンジュルムをアピールするのも面白いかも……などと勝手に想像してしまいます。

 そんなファンの妄想はさておき、リーダーの和田彩花はあと1年ほどでグループを卒業してしまいます。現在の10人の集大成はおそらく和田彩花の卒業コンサートになることでしょう(それまでにメンバーの加入もあるかもしれないけど……)。その集大成に向けた日本武道館公演としては、間違いなく現時点での「最強」を感じることができたライブでした。

 さらに、この「最強」が向こう1年でどんどん更新していくというのですから、こんなに楽しみなことはない。いやむしろ恐怖すら感じてしまいます。これ以上に強いアンジュルムを見せられて、果たして正常な精神を保てるのでしょうか……。

 いずれにしろ、これからの1年でアンジュルムが過去最高に盛り上がるのは間違いありません。最強アンジュルムに耐えられるように、いまから精神を鍛えておきましょう!(文◎大塚ナギサ)