『青春高校3年C組』(テレ東)の佐久間宜行プロデューサーに訊く 「『青春高校』ってどんな学校なんですか」
『青春学校3年C組』(テレ東)の「ギャル」こと夘余野陽奈乃さん(16歳) 「家ではモーニング娘。をずっと踊っています」
では、この番組の制作者はどういう想いで取り組んでいるのかを訊きたいと思い、佐久間宣行プロデューサーに聞いてみました。個人的には5、6年前に『ゴッドタン』に出演した時に初めてお目にかかりました。
――この番組を取材する時、最初、どういう主旨の「学校」かわからなかったんですよね、バラエティなのか、『真剣10代しゃべり場』みたいなことをしたいのか。
佐久間宜行(以下・佐久間):戸惑いはありました。秋元(康)さんが最初、夕方にオーディション番組とかやろうかなっていうような感じのことだったんですけど、最後に「あ、いや学校作ろう」って言い始めて、何をするのかと思ったんですけど、出口とか決めないでやるのも面白そうだなと思いました。
――チャレンジって感じですか?
佐久間:30代とかで好き勝手に番組作ってきたんで、わけわかんないことのほうが面白そうだなと。
――これは笑うヤツなのか、オープニングがキレイなアニメーションですし、どういうものを作りたいのかと思って、作り手側の佐久間さんの話を聞きたかったんですよ。
「『青春高校』という名前の意味がそのうち分かってくると思います」
佐久間:ホントに学校作ろうと思ってます。青春高校という名前は秋元さんが考えたんですけど、やっていくうちになんとなく言葉の意味って重くなるなと思っています。
集まってる子たちが学校でうまくやれなかったり、友達がひとりもいなかったり、通常のリアルな生活だとうまく青春を遅れてない子たちが多いんですよ。
結果的にオーディションでそういう子たちが通ってるから、僕はいま『青春高校』というタイトルの意味が、自分なりの青春を見つける高校っていうふうに思っています。20歳ぐらいで高校時代は楽しいことが何もなかったとか、引きこもりの子とかたくさん来てるんで、そういう子たちがもう一回自分の人生のなかで青春を見つけて友達作ったりするっていう、そういう高校がバラエティとして存在していて。その子たちが、何をやるかはまだわからないですけど。
――イメージ湧いてきました。いまのところ佐久間さんの思惑としてはクラスがうまく作れている感じですかね。
佐久間:けっこう面白い子が揃ったなと思いますね。
――先ほど夘余野さんの話を聞きましたけど面白かったですね。
佐久間:ギャルですね。ああいうギャルと引きこもりが一緒になってるのが面白いなと思うんですよね。
――因みに、佐久間さんは高校ではどんな生徒だったんですか?
佐久間:僕は一見、楽しそうにやっているけど……。福島県のいわき市というところだったんで、観たい映画とか見たい本とか見たいものがほとんどそこでは見られなかったんです。
でもそういうサブカルチャーのものに興味があるっていうことを学校で言うと、ヤンキーにイジメられるような中学とか高校だったんで。だから普通にバスケット一生懸命やってるふりしてました。
――僕も原発の取材でいわきにずっと行ってたんで雰囲気はわかります。遊ぶとこあんまり……。
佐久間:ないですよ。バイトぐらいしかしてなかったですね。
――少し前になりますが、映画『桐島、部活やめるってよ』では、ヒエラルキーが出てきて。
佐久間:そうですね、スクールカーストの話ですね。
――青春高校にはそういうのありませんよね?
佐久間:青春高校はヒエラルキーがない感じに今なってて。それが面白いなと思ってますね。普段のリアルな生活だったらあるのが、たまたま性格のいい子が多いのもあって、そういうの関係なしに楽しそうにやってるっていうのは、だから半分ファンタジーに近いようなところがある。
――導入部分もファンタジーなイラストですもんね。秋元さんから毎回パッと指示が出て、それを佐久間さんなりにアレンジしながら演出していくんですか?
佐久間:もともとの大コンセプトとルールは秋元さんからいただいて、僕が芸人ブッキングしたんで毎日の内容はほぼ僕が決めてるんですよ。
それで秋元さんからご意見いただくって感じですね。それでビックリしたのが、秋元さんが思いのほかオンエア観てるってことですね。観てないと思ったんだよな……。
さすがにオンエア全部観るタイプの人じゃないだろうなと思ったんですけど。失礼ですけどもうちょっと適当にやる人だと勝手に思ってたんで。超ちゃんとやるんですよね。
――佐久間さんとしてはいわきでちょっとくすぶってた学生時代を投影したりしてるんですかね。
佐久間:最初は、地続きじゃないと思ってたんですよ、僕もう42歳だし、あの子たちと30歳近く違うから。でも思ったより人間性の部分は思春期と変わらないんだなっていう。
――そうすると佐久間さんの青春時代っていつ頃ですか?
佐久間:東京出てきてからですね。中高の頃は偽りの自分でしたからね。高校は進学校だったんである程度はよかったんですけど、それでもオタクはいなかった。中学が一番キツかったですね。中学はアニメとか好きでもそういうの一切言えない空気で。
――『ガンダム』世代とかですか?
佐久間:いや、もっと下です。僕はお笑いですね、ダウンタウンとか『夢で逢えたら』が中学ぐらいで、アニメだったら『機動警察パトレイバー』とかあのへんが中学ですね。
「青春時代は二度と送りたくないですね」
――佐久間さんは生徒の把握できています?
佐久間:いま16人ぐらいなんで、さすがに把握してますよ。僕もビックリしてるんですけど、思ったより好きになれてますね。ぜんぜん興味ないかなと思ったんですけど、10代かわいいですね。
――心洗われるみたいな感じなんですか?
佐久間:いや、心洗われるともちょっと違うな。けどみんな悩んだりしてるんで、そりゃするよなっていう。俺たちはある程度、そこ悩んでもしょうがねえだろって割り切っちゃうようになったけど、毎日悩んだりしてるんで。青春時代っていうのは二度と送りたくないっていうか。思春期はたいへんですよね。
――『青春高校』って言われたときに、秋元さんは何を狙いとしてるのかなと思ったんですけど、作り手の方の話を聞くと少しわかってきました。
佐久間:だから面白いですよ、人の人生が変わる瞬間を見てるから。人の人生とか価値観とかがグルングルン変わっていくさまを毎日見てるのは思ったより楽しいです。
――毎日大変ですよね。……今日は目が疲れてる感じしますよ。
佐久間:これは単純に昨日、秋元さんと飲んでたの(笑)。辛いっていう気持ちはないな。最初、毎日ってホント嫌だなと思ったんですけど。でもそんなことないです、今は毎日楽しいです。
――「人間くさい」のが好きなんじゃないですか。
佐久間:ああ、それはあるかもしれないですね。あとは負けなしの人たちを選んでるわけじゃないので、この青春高校に入るまでに、何かしらの挫折がある子が多いので、その子たちが変わっていくさまを見るのがすごく面白い。
――「先生」がいいですよね。「この人たちが、30分のこの番組やるの?」って思いました。カズレーザーさんのとき観ましたけどめっちゃ面白いですね、素人の方をイジるのうまいですよね。
佐久間:うまいと思います。
――三四郎さんもうまいですよね。
佐久間:そうそう、三四郎は三四郎で逆に生徒に年齢が近いんで面白いですね。
――中井りかさんにも以前インタビューしたんですけど、非常にクレバーな方ですね。炎上をすべて手の平で転がしてるみたいな感じ。
佐久間:そう思います、メンヘラですけど(笑)。
――(苦笑)。すると、まだ佐久間さんのなかではゴールのイメージがないってことですね。
佐久間:ゴールはこの子たちの人生がそれなりにそれぞれ変わっていくときなんだろうなと思います。卒業っていうのがあるかもしれないし。
――それもまだわからない。
佐久間:わからないですね、全然。どうする気なんだろう、秋元さん(笑)。
――手探りな作業って、佐久間さんはお得意な気がするんだけど。
佐久間:ハハハハ、そうですね。それでビビッたりはしないです。
――さすが! 卒業なのかわからないけど見えないゴールに走って行くって感じですね。ありがとうございます。
佐久間:また番組にもご出演ください。(文中敬称略 / 文◎久田将義)