能町みね子×吉田豪 対談『ヘイトとフェイクニュース』を語る|第三回 「ネットでの過剰なバッシングについて」
叩いている人の趣味をしつこく聞いてみた結果……
能町:私、叩きに一周くらい遅れて乗っかっていくようなことばかり繰り返している人の趣味が知りたいんですよね。ずいぶん前のことですけど、私がネット上で叩かれたとき、特に粘着質な数人については執拗に趣味を聞き続けてみたことがあったんですよ。その人のプロフィールやタイムラインを見ても趣味や人格的なものが全然書かれていなかったから、「もう私のことはいいから、最近映画は何を観た? 音楽は何が好き?」みたいに。
吉田:それは重要だと思います。Twitterで厄介なのって政治系のリツイートが大半の、人格が見えないアカウントだったりしますからね。
能町:「私のこと叩いていいし、何言ってももう反論しないから、とにかく最近見た映画を教えて!」って延々と。そしたら根負けして教えてくれたんですけど、フランソワ・オゾンの「8人の女たち」だったんです。なんだよ趣味合うじゃん! ってなって(笑)。だからといってそのあと仲良くなったわけでもないですけど(笑)、でも面白かったですよ。人物像が見えてくるからなんかホッとします。
ーーそれは知りたいですね。
能町:音楽なり映画なり、何か好きなはずじゃないですか。
参考記事:荻野由佳さんのインスタに罵詈雑言・殺害予告を書き込む人の正体 収束しないNGT48問題|春山有子 | TABLO
吉田:ボクもそこはよく聞くんですよ。それで人間性がわかるんで、それこそ(立憲民主党の)辻元清美さんに「好きな映画はなんですか?」って聞いたら、「『太陽を盗んだ男』。原爆を作って政府を落とすとか最高やん」って言ってて。
能町:へぇーっ!! めちゃくちゃ面白いですね。
吉田:たぶん、よく聞かれる質問とかに関してはガードも固くなるけれど、こういう趣味の話を掘り下げたら人間性が出るじゃないですか。ちなみに好きな音楽はニューエストモデルでしたね。
能町:やっぱり、基本的に反体制というか。
吉田:で、好きな漫画が『キスより簡単』って言ってて。作者の石坂啓さんって手塚プロだったんだけどゴリゴリの左寄りの人で、これは『スピリッツ』で連載していた性に奔放な三姉妹の話なんですけど、「あの姉妹のひとりのモデルがウチやねん。誰かは内緒やけど」みたいなことを言ってて。そういう話をした瞬間に急に距離が詰まるし人間性が見えるんですよね。
能町:そうそう、俗っぽいものでもいいから何か言ってほしいんですよね。
(敬称一部略 聞き手◎久田将義)※次回、最終回です。
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