暴力団にも飛び火「コンビニ土下座事件」はチンピラ対処のテンプレートに成り得るか

ネット炎上が止まらない「コンビニ土下座事件」(Photo by Youtube)

 

 コンビニに日頃からたむろし迷惑行為を続けていた連中が、コンビニ店員の反撃に遭い、引っ込みがつかなくなって恫喝・恐喝。その挙句に自ら証拠動画をアップし、雪崩式に逮捕されたという “例の土下座事件” だが、話題になってからだいぶ経つというのに全く沈静化の兆しを見せない。

 というのも、当初は「頭の悪いチンピラがイキってヤクザを騙って暴れた」「逮捕に至る経緯がバカすぎる」というだけのお寒い話だと思われていたのに、(主に)2chの鬼女様やアウトロー板住民らの調べにより、シャレでは済まない背景が次々と発掘され続けているのだ。

 最初の内はお約束のSNSやブログの記事から実名・住所などを特定していただけだったのだが、その内に暴力団の本部に対して電凸攻撃(=電話突撃・いわゆるクレーム電話)をする者が現れ、更には犯人一味の職場である不動産屋の怪しい話まで明るみになり、日を追うごとにネット上のまとめ情報がどんどんきな臭くなって行っている。

 ここではそうした既出情報の中でも、特に「東京ブレイキングニュースないしは久田編集長の専門分野」に絞って、何がどうマズイのかを解説しよう。

[1] 犯人一味が本職御用達の和彫りを入れている件

 今回の事件の中心人物と目される人間のプライベート写真を見ると、全身に見事な和彫りが入っている。アウトロー業界の事を知らないごく普通の方からすると「ヤクザもんなんだろ」で終わってしまう話かもしれないが、あそこまで見事な彫り物の場合は話は単純ではない。

 プロが愛用する彫師の中には、本職が間に入って紹介でもしない限り仕事を請けてくれない職人もいる。そうした職人の彫り物は、いわば組の代紋と似たような重みがあり、間違っても素人がイキって背負っていいものではない。仮にまかり間違って素人が 「有名彫師の作品によく似たデザインの刺青」を入れ、それを見せびらかしてヤクザを騙ろうものなら、すぐに地元のプロがやって来て「ニイちゃんどこのもんや?」となる。

 今回の刺青男の背負っているモンモンは、そうしたレベルの代物に見えるのだが、それすなわち「現役の本職」か、もしくは「過去に本職だった」かのどちらかだということだ。そうでなければアウトローの世界で最もやってはいけない「騙り」という事になり、それはそれでキツイお仕置きを入れられてしまう。後者の可能性は低そうなので、おそらく本当に本職か、本職だった過去のある人間だと考えるのが自然だろう。

 となると次に問題になるのが「いつまで本職だったのか?」という点だ。仮に現役だったとしたら所属する組まで火の手が回るし、組を抜けていたとしても数年未満という近い話ならば、暴力団への締め付けの厳しい昨今、警察は元所属していた組を問い詰める事が出来てしまう。

 どんな答えが出るにせよ、警察がマジメに捜査・追求する気さえあれば、間違いなくvs暴力団という話になってしまうのだ。

[2] 組を破門された人間が組の代紋を見せびらかしている疑惑が浮上した件

 逮捕された一味のひとりが、携帯で自撮りしている写真が出回っているのだが、その携帯にちょっと信じられないステッカーが貼られていた。

 とある組の代紋をそのままステッカーにした “公式グッズ” なのである。これも上の刺青の話と同様で、仮にこれが偽物で、イキって勝手に代紋を使って作ったというなら、これは組の偽名刺を配って回ってたも同然の騙りであり、いつさらわれてもおかしくない。

 ヤクザの世界では、とにかく “騙り” だけはご法度とされており、使用者責任でどこまでも上に話が持って行かれてしまう今では、特に厳しく対処されてしまう。

 この人物の過去を調べて行くと、どうもとある組(ステッカーの代紋を掲げている組)を破門になったのではないかという情報があるのだが、破門された後も代紋ステッカーを見せびらかすというのはどう考えもアウト。これも上で書いたように、破門されてからそれほど時間が経っていないようなら、警察は堂々と元いた組をイジメられる。

 単に携帯ステッカーの話ではあるのだが、組がどのような迷惑を被るか解らないため、アウトローの世界のルールで言えば、かなりの重罪という事になってしまうのだ。 これもこれで「さらわれないとおかしい」というレベルの大失敗だろう。

[3] 刺青男の勤め先の企業に注目が集まっている件

 そして今最も注目が集まっているのがこの話である。ネットでは問題となっている不動産屋と、とある組織との関連が疑われており、地上げ目的で嫌がらせをしていたと断定口調で書かれている。しかしこれはまだ確固たる証拠がなく、現段階では単なる陰謀論的な眉唾ものの話であると言わざるを得ない。

 この不動産屋は事件後に逮捕された男の存在をHPから抹消し、テンプレ謝罪文を掲載して事件の風化を待つ方針のようだ。しかし明らかにプロとしか見えない刺青男が社員だった点は否定のしようがないので、この不動産屋は「ヤクザ紛いの刺青男でも入社できるような会社だ」という事だけは言っても構わないだろう。

 現在はこの不動産屋の取り引き相手や取り引き銀行などに電話をかけるネット民も出て来ているので、このまますんなりと沈静化するとは考え難い。

 こうした点から何が解るかというと、まず何よりも「自滅動画がなければコンビニ側が泣き寝入りするしかなかった」という事である。例えばネットの噂である地上げが事実だったとしたら、素人がいくら抵抗しようとも無駄だ。地上げには億単位の大きな金が動くのだから、地元の地主・代議士・警察・アウトローといったある程度の権力を持つ人間達に “黄金色の饅頭” を渡しているはず。

 そうであればコンビニ経営者程度がいくら騒いだところで、あちらこちらで握り潰されてお終いになってしまう。また下手な真似をすればチンピラのお礼参りがあるだろうし、その際に誰かが助けてくれるとは思えない。

 だが今回はチンピラグループが自ら証拠動画をアップするという自滅をしてくれたお陰で、立派に犯罪が成立している事が満天下に示され、庇いたくとも庇いようがないという展開に持ち込めた。暴力という面でも窃盗(恐喝?)という面でも、誰がどう見たってアウトなのだから、これを擁護しようと名乗りを上げたら「お前もヤクザなんだな?」と蜂の巣になってしまう。

 ネットの祭りの拡散力があまりに大きかったため、警察も本腰を入れて動かねばならないし、本来は犯人一味を庇わねばならない連中も警察の目があるので動くに動けず。 しかも犯人一味が釈放されて出て来ても、コンビニにお礼参りするより先に「自分が危ない」のだ。これだけ派手にヤラかしてしまっては、コンビニに「テメエコラ!」と言いに行ったら、そこに待ち構えてた本職の方々に囲まれて「ニイちゃん、ちょっと来て貰おうか?」という話になってしまう。これだけ組織に粉をかけたのだから、指の1本や2本で済めば儲けものという話なので、彼らがまず考えなければならないのは夜逃げの算段であろう。

 今回の一件は、要点をまとめると「チンピラ対処法のテンプレート」になり得る。今後は似たような嫌がらせを受けたら店の側が撮影し、どんどんネットにアップしてしまえばいい。その際は相手に一線越えさせるために、あえて挑発的な態度で応対してもいいだろう。チンピラは野生の動物のような思考回路なので「コンビニ店員ごときにメンツを潰された」と感じたら瞬間湯沸器のように頭から湯気を出して暴れてくれる。どうせボキャブラリーも少ないだろうし、感情を抑える理性も弱いだろうし、二言目には犯罪成立の要件を満たす言動が飛び出す事だろう。

 そうなれば、今回のように騙りにしても本職にしても「どちらにせよ責任を取るハメになるのはチンピラ側」という王手飛車取り状態に持って行けるのだ。

 この手のネットの炎上問題は、これまではどちらかというとネット民が悪とされて来たが、今回のように相手がヤクザ、もしくはヤクザを騙っているような場合には、ある意味で一般市民にとってのセーフティネットのように働いてくれる。話を大事にして、警察が動かざるを得なくしてしまうといった流れも作れるのだから、匿名ネットユーザーのままで社会参加しているという見方も出来なくはないのだ。

 ただし、ネットユーザーの側にもまだまだ危うい人間が多いので、最低限の「やっていいこと悪いこと」を共有し、ローカルルールを固める必要はあるだろう。そうしないと、これだけ権力の座にいる人間にとって都合の悪いメディアなのだから、誰かが下手を打てばすぐに「ネット規制すべし!」という声が挙がってしまう。くれぐれもその点だけには用心していただきたい。

 個人的には、今回の一連の流れを上手にテンプレート化できれば、イジメ問題などの解決にも活用できるのではないかと思っているのだが……。

Written by 荒井禎雄

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