【未解決事件の闇7】女性編集者と接触した重要人物に拉致関与疑惑が浮上

特集ルポ:未解決事件の闇7 ~伊勢・女性編集者失踪事件

「Xが北朝鮮の拉致に関係しているという説は本当か」

 特定失踪者問題調査会のMさんはこうも言っていた。

「これは仮説なんですが、こういうことかもしれません。事件当初から強く疑われているXは事件に関係してはいますが、殺してはいないと。というのもですね、これはお母様の辻出美千代さんの話なんですが、Xが辻出さんと別れるとき、2~3人の男を見たそうなんです。彼がその車に辻出さんを引き渡した。そしてそのまま北へ連れていかれたんじゃないでしょうか。男性は北の拉致に関係してるわけですから話せないというわけです」

 実際、『新潮45』のバックナンバーで取り上げたこの事件の記事には次の通り、男性本人の言葉が載っていて、そこで男性は他者の存在を明らかにしている。

「話が終わり、私の車が駐車場を出る時に、辻出さんは助手席から降り、自分の車に戻って行きました。その時、私たちの車の他に2台の車が駐まっていて、それぞれ人が乗っていました。辻出さんと『車が駐まっているけど、知ってる人かなあ?』と様子を窺ったので、よく覚えています。1台は日産のプリメーラで男性が1人運転席にいました。もう1台は暗くてよくわかりませんでした。私が先に駐車場を出た時もまだ2台は駐まっていた」(『新潮45』2002年11月号)

 MLの書き込みを確認した結果と調査会の見解を母親の美千代さんに伝えたところ、次のように返事が返ってきた。

「紀子がXと別れるときに2~3人の男を見た? そんな話してないですよ。それはともかく、北朝鮮の話が出て来たとき、もしかしたら生存ということで元気がでましたよ…」

▲失踪前、辻出さんは雑誌『GON!』に出演していた。

 降って湧いた北朝鮮拉致説にお母さんの美千代さんは、一度希望を繋いだことがあったということだ。しかし、あまりにも確証がないために、今はその説を否定しているということらしい。

  特定失踪者のリストに挙げられた被害者家族は当然、それに望みをかける。だがあまりに確証がなく、荒唐無稽な説であることが次第にわかってくる。すると、彼らは失望してしまう。

 こうして被害者家族を翻弄してしまうことは罪なことではないだろうか。僕が調べた限りはTMLでの彼女の発言以外の一次情報は確認出来ていない。M氏の発言にしろ、中朝関係者の話にしろ、伝聞に尾ひれがついたものでしかなく、確度は低い。だからといってM氏の推測を100%否定するには至らない。

 話をMさんとの会話に戻そう。Xに北朝鮮拉致の片棒を担いだのか、本人に直接確かめたことがあるのだろうか。

「Xは北の話が出て来てから貝になったそうです。別件の裁判で無罪放免(第2回参照)となり結婚しました。子どもができてからはますます貝になりました。私は彼に会ったことがありません」

 そういって話はなんだかうやむやになった。

Written&Photo by西牟田靖

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拉致の片棒を担いだのは誰?