北朝鮮の拉致じゃなかった?福井の特定失踪者発見と女性編集者不明の共通項
6月17日に福井県の特定失踪者が、国内で発見されたというニュースが飛び込んできた。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/abduction_problem/97787.html
見つかったのは福井県若狭町の特定失踪者、宮内和也さん(51)。彼は1997年4月24日、同町の世久見漁港で行方不明になった。彼が残したのはカヌー庫前に置かれ乗用車、数百メートル離れた海岸で折れた状態で発見されたカヌー、その近くにあったジャンパーなど。当日は海がかなり荒れていて、漁師たちが漁を諦めるほどだったという。
2003年、宮内さんは、特定失踪者問題調査会によって、失踪者リストに掲載される。そのリストには調査会の判断により、拉致濃厚とカテゴライズされていた。発覚後、警察が本人に事情を聞いたところ、失踪中、住所や仕事を点々としていたと話したという。また、義兄で同県特定失踪者家族会の沢香苗代表と宮内さんとの面会の席では、沢代表に対し、宮内さん本人から「ごめん」と一言謝罪があったという。
ここでいう特定失踪者とは、「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者」とのこと。リストには1948年~2003年までの行方不明者が記されており、その数は、調査会独自リストによると271名(拉致濃厚77名、拉致疑惑194名)となっている。
宮内さんが拉致濃厚とされるリストに入っていたことや義兄が同県特定失踪者家族会の代表をつとめていることから、宮内さんは出たくても出るに出てこれなかったのではないだろうか。特定失踪者のリストに入っていなければ、もっと早く出てこれたと思うのは、私だけだろうか。
◇◇◇
この一件を受けて連想したのが、東京ブレイキングニュースでも再三お伝えした、辻出紀子さんのことだ。辻出さんは1998年11月以降、行方がわからなくなっている。その彼女もまた特定失踪者リストに掲載されているのだ。
http://www.listserver.sakura.ne.jp/cgi-bin/list/list3.cgi?word3=406&mode=search3
彼女と北朝鮮を結びつけるものといえば、旅行マニアのメーリングリストに「北朝鮮に行きたい」と書き込んだことや、それに対して別のメンバーが「よど号グループに取材してみては」とふざけて提案した書き込みぐらいしかない。そのことを調査会の人たちはことさら大げさに取り上げて、「この書き込みこそが彼女が北に渡った大きな証拠だ」とか「彼女はよど号グループに取材した後、行方がわからなくなった」とかそういった主張をするようになった。
近年、辻出さんの両親は「北朝鮮にいる可能性はありません」とはっきり明言している。事実、裏取り取材からは、拉致の可能性が、まったくといって良いほど出てこなかった。北朝鮮とのパイプが太い、こだわりジャーナリストというハンドルネームの男性が本人たちに、辻出さんのことを聞いてみたところ、よど号グループは、寝耳に水という感じで、彼女のことをまったく知らなかったのだ。
また宮内さんのように生きているとして、特定失踪者のリストに掲載されていることで、何らかの後ろめたさを感じ、出てこれないということはないだろうか。また、辻出さんの事件を解決する上で、拉致疑惑が捜査の手を鈍らせるといったことはないのだろうか。少なくとも、家族が「拉致の可能性はない」と明言しているのだから、リストからは即刻、除外してもらいたいものだ。
Written by 西牟田靖
Photo by Amateur.Qin
北朝鮮拉致と「特定失踪者」―救出できない日本に「国家の正義」はあるか
消える人にはワケがある?