安倍総理! 年収200万円以下の人は常に1000万人以上、これを無視して「もっと働け」と?

(図1)国税庁「民間給与実態統計調査(2016年)」の「平均給与及び対前年伸び率の推移」をもとに筆者がグラフ化しています

(図2)国税庁「民間給与実態統計調査(2016年)」の「給与階級別分布」から抜粋したデータを筆者がグラフ化しています

 安倍政権の働き方改革で裁量労働制のデータねつ造が明らかになり、なんだか大変なことになっています。国会答弁であればうまく煙に巻くこともできるのでしょうが、統計データはごまかしがききませんし…。
 今回は暗雲立ち込めるアベノミクスのなかで、「労働」に関係するデータを見てみたいと思います。

「労働」のなかでも、最も気になるのはやはり「年収」ではないでしょうか。サラリーマンとは異なる給与形態で働いている筆者も、テレビや経済誌でサラリーマンの年収にまつわる記事を見かけると、「こんなにもらってんの?」や「これなら俺も安心だ」と一喜一憂しています。
 実際、国税庁が発表している「民間給与実態統計調査」の「平均給与の推移」というデータ(図1)を見てみると、平成26年は415万円、平成27年は420万円、平成28年は422万円と、徐々にですが平均年収は増加傾向。それなりに景気が回復しているんだなと思わせる内容です。

 しかし、この「民間給与実態統計調査」には「給与階級別分布」というデータもあって、例えば「300万円超400万円以下は×人」というように、一定の年収ごとの人数も提示されています。そして、このデータから年収200万円以下の人数の推移を抜粋したグラフ(図2)を作成してみました。
 ちなみに、「民間給与実態統計調査」は源泉徴収義務者(民間の事業所)の中で給与所得者(非正規を含む従業員と役員)が対象。また、図2については男女を合わせた数字になっています。

 このグラフを見るとわかりますが、年収200万円以下のいわゆるワーキングプアと呼ばれる層は、平成24年から28年まで常に1000万人を超えています。全体比率もずっと20%を超えているわけで(微減はしていますが)、低年収の人たちに対する政府のケアが十分ではないことが伺えるのです。

 もちろん、ここには女性のパートタイマーや定年退職者層なども含まれているので全員が経済的に困窮しているわけではありません。しかし、男性だけに限って年収200万円以下のデータを見てみると、平成26年は約301万人(男性全体の10.8%)、平成27年は約295万人(男性全体の10.4%)、平成28年は約298万人(男性全体で10.5%)という結果になっています。

「働けど働けど…」という人たちに目を向けず、「もっと働け」と呼びかける現政権ってどうなんでしょうね。(文◎百園雷太「試験に出る統計データシリーズ」)


【追記】

 この記事につきまして、「男性の年収200万円以下の人数や全体比率について、現役世代や年金受給しながら働く65歳以上の割合を提示しないと信じていい数字だかわからない」という旨のご指摘をいただきました。
 筆者の調査不足により、ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
 恐縮ながら、追記にてご説明させていただきます。

 まず、同調査内で年齢階層(〇歳~×歳まで)と給与階層(年収100万円~200万円まで)を同時に提示するデータが掲載されておらず、ご指摘いただいた内容を満たすデータを提示できません。ただ、同調査の「第10表 事業所規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額」の「その1 給与所得者数(1年を通じて勤務した給与所得者)」という項目で、男性の「全体数」と「19歳以下」「65~69歳」「70歳以上」の合計数が以下のように提示されています。

「男性総数」…2726万2168人

「19歳以下」…9万4403人

「65歳~69歳」…111万7298人

「70歳以上」…86万6370人

(註)年収200万円以下の男性の人数として本文中に提示している平成28年の「約298万人(男性全体で10.5%)」という数字も、「1年を通じて勤務した給与所得者」をもとにした同調査のデータから算出しています。

 つまり、現役世代(20歳~65歳)以外の人数を合計すると207万8071人(男性全体比の約7.6%)となります。これは年収200万円以下の総数である「約298万人」を下回っていますので、現役世代は最低でも約90万人(男性全体比の約3%)が年収200万円以下の層に含まれていると推察できます。
 また、同調査内では年齢階層ごとの平均年収が掲載されていて、男性の現役世代以外のものは以下になります。

「19歳以下」…145万円

「65歳~69歳」…396万円

「70歳以上」…342万円

 19歳以下の調査対象数は全体比のなかで約0.34%であることと、65歳以上の現役世代以外の平均年収が200万円を超えていることから、年収200万円以下の現役世代の総数は最低約90万人よりも、さらに増えることが推察できることになります。
 以上、追記させていただきました内容が、記事をご覧になる際のご参考になれば幸いです。