「自慰用パンティ探し」が日課だったスポーツクラブの店長が発見したグラビアアイドルの部屋

 細谷大樹(仮名、裁判当時38歳)は毎日のように自宅で酒を呑んで酔っ払っては、深夜の街へ出かけていきました。どこかのお店に呑みに行ったり買い物に行くわけではありません。行き先は住宅街のごみ捨て場でした。深夜の住宅街のごみ捨て場で彼が夜な夜なやっていたのは『ゴミあさり』でした。

 彼の目当ては家庭ゴミと衣類ゴミ。その中から「リサイクルショップに売れる物」と「オナニー用の女性用下着」を見つけだしては持ち去るのが彼の趣味でした。昼間はスポーツクラブの店長を勤める彼が、日課のように趣味としてゴミあさりをしていたとは周りの人は想像も出来なかったのではないかと思います。

 その日、彼はストロングゼロの500缶二本と350缶一本を飲んでから、リサイクル品と女性用下着を見つけるためにゴミあさりに行きました。時間は午前1時半でした。
 いつものようにゴミをあさっていた彼が発見したのは1枚のガス料金の明細書でした。いつもならそんなものには見向きもしない彼ですが、この時は違っていました。明細書に書かれていた名前が、写真週刊誌で見たことのあるグラビアアイドルの名前だったのです。
 彼はその明細書と、同じゴミ袋から見つけた使用済み生理用品を持って急いで家に帰りました。彼女が載っている写真週刊誌を彼は何冊か持っていました。帰宅した彼はさっそく取ってきた生理用品と彼女の載っている週刊誌で自慰をしました。

 終わったあと、彼はある願望を抱いてしまいます。

「この子の部屋を、覗いてみたい」

 明細書に書かれていた彼女の部屋はマンションの三階でした。彼は再び、夜の住宅街へと飛び出していきました。

アイドルの部屋を見てみたい……

「午前の4時半くらいだったと思います。部屋で寝てたら物音がして、ベランダを見てみたらTシャツの男が手すりを握りしめていました。すぐ携帯で110番して…あんな時間にベランダに男の人がいるなんて思ってもないから本当に怖かったです。絶対に許せない。厳しく処罰してほしいです」

 細谷を発見し通報した二階に住む女性は当時のことをこう話していました。このマンションは女性用マンションでした。

「ベランダの方から登っていってなんとか三階まで行こうと思ったんですけど、二階まで登ったところでちょっと無理だと思いました。それで断念しました」

 この時は諦めて家に帰った彼でしたが、ベランダの手すりに残っていた指紋から特定され、後日逮捕されました。彼は以前に電車内での痴漢の前科があったため警察に指紋を登録されていたのです。

「ただ覗きたくて侵入したので…下着を盗ったりするつもりはなかったし、女性に何かをしようという気持ちもありませんでした」

 裁判ではこのように話していた彼でしたが、彼の日頃の行いや前科関係を考えると到底信用することなどできません。たとえ本当にそんなつもりがなかったとしても、深夜にベランダに見知らぬ男が侵入してきているのを見つけた女性の抱いた恐怖心を考えれば彼の心情など情状酌量には値しません。

 今後再犯を犯さないためにどうしていくか問われて
「今後は東京を離れて長野の実家に帰ります。だからもう再犯を犯すことはありません」と答えていました。何故長野にいれば再犯は犯さないのか、その根拠もありません。断酒も誓っていましたが、これも本当に守れるのかはわかりません。

「覗きという行為だけでなく、ゴミの中のガスの明細書から女性の住所や名前を確認したという侵入に至る経緯も非難されるべき」

 と、検察官は彼の犯行を強い口調で激しく批難しましたが、求刑は『懲役10月』でした。
 彼が問われている『邸宅侵入罪』の法定刑は『3年以下の懲役又は10万円以下の罰金』です。判例がどうなっているのかはわかりませんが、この法定刑の範囲で懲役10月の求刑は妥当なものだとは思います。しかし、どうせ執行猶予が付されるとは言え個人的にはもう少し重い量刑にして欲しかったとも思いました。(取材・文◎鈴木孔明)