埼玉県川口市における在日中国人増加とトラブルを報じるテレビ番組の乱暴さ
やはり定番というか、困ったときの中韓だのみ…なのか、GW明けの5月半ばの日曜日、在京キー局昼の某情報番組は、埼玉県川口市における在日中国人増加とトラブルを取り上げていた。”問題”の場所はJR蕨駅からほど近いUR芝園団地。すでに、新聞や雑誌はもちろん、ネットなどでも随分取り上げられているので、「そのテ」のことに興味ある人にとっては既知感のある話と言ってもいい。
いわく、日本人との価値観の違い、ルールの徹底がなされない……云々。筆者は数年前に芝園団地のレポートを雑誌上で書いたことがあるので、ある程度は理解しているつもりである。その認識から言えば、数年前の時点で、多少のトラブルはあるにしろ、かつてに比べれば相互理解も深まり、(日本人と中国人)共生への道を模索している段階にきていた。言ってみれば、それを蒸し返すような特集であり、またテロップなども十二分に煽っていた。
だが、筆者が驚いたのはそこではない。同じ特集内で川口市内の「もうひとつ」の中国人増加問題である、西川口駅周辺の様相を取り上げていたことだ。それも、風俗街壊滅と絡めてである。確かに一面からみれば、西川口の中国人増加問題と、いわゆる「NK流」という裏風俗が、十数年前に埼玉県警により壊滅させられたこととは無関係ではない。なぜなら、NK流壊滅後、雪崩を打つように、立ちんぼなどの中国人による違法風俗が増えたからだ。
しかし、である。そもそも論として、芝園団地に住む中国人たちの多くがIT企業などに勤めるニューカマーなのに対して、西川口の”ポスト裏風俗”に従事する中国人たちのほとんどは、不法就労、あるいはオーバーステイの確信犯だ。その両者の間で起こった別種のトラブルを、中国人と言うことで一括りに報じるというのは、ミスリードとまでは言わないが、実に乱暴な話と言わざる得ない。
それでも、どうしても報じたいのなら、ここ数年、西川口に中国料理店、それも『マニアックな料理』、がなぜ増殖しているかと絡めて取り上げるべきだ。
なぜなら、北京料理や広東料理と言った日本でもおなじみの料理に加えて、都市部ではあまりない「地方の料理」が増加している……つまり、都市部以外に住む中国人が、大量に川口に流入しているという現実がそこにはある(ちょっと検索をかければ、西川口は『マニアックな中華料理の町』という括りになっていることが分かる)。
そうした流れや原因を分析をすることで、芝園団地のIT企業などに従事する人たちとは別に、地方から裏風俗などへ出稼ぎにきた中国人の姿も、自ずと浮き彫りになってくるのだ。
率直に言って、大マスコミの驕りと鈍感(いまさら感)さが、如実に出た特集といえよう。
そんななか、唯一興味深いと感じたところがある。それは、西川口の周辺住民がNK流壊滅後の街の空洞化を嘆いているシーンだ。その住民は、行政の無計画さに腹を立てていたが、なんでも駅周辺の人口は1~2万人減ったという。話半分でもすごい数だ。そんな西川口にも再開発の話がある。今後とも興味深く、観察していきたい。(取材・文◎鈴木光司)