現役警察官に聞く「富山・交番襲撃殺人事件」はまた起きるのか? そして拳銃の扱いについての疑問

 最悪な事件が起きました。下手をすれば池田小学校の二の舞になるところでした。
 26日14時ころ、富山市久方町の富山県警富山中央署奥田交番で、所長の稲泉健一警部補がアルバイト店員で元自衛官の島津慧大容疑者に刃物で刺され、拳銃を強奪。さらに、約100メートル離れた市立奥田小学校付近で、警備員の中村信一さんを銃殺、その後逮捕されました。

 数々の疑問が沸き起こります。
・そもそも拳銃はなぜ奪われたのか。
・交番警官はこういった事案に対応しているのか。
・拳銃は簡単に発砲できるものなのか等々。
 数々の疑問を読者の方は抱かれたのではないでしょうか。
 この前代未聞の事件について、編集部は現役の警部補に直撃してみました。

――交番警官はいつも拳銃を携帯しているのか。
「私が交番勤務をしていた頃、健康問題、私生活でのトラブル等、心身に問題がある場合は拳銃は持たせない。交番にもつけない。しかし通常、交番勤務は常に拳銃持っている」

――そもそも拳銃は簡単に奪えるものなのか。
「簡単には奪えない。しかし、油断やスキがあれば奪われてしまうのは人間だから仕方ないとも言える。通行人が道を聞いたり、遺失届に全力で警戒して対応しているかといえばそうではない。それでも、今回のようなことがあるかもしれないという気持ちで、いつでも構えていた。なので、複数で対応しなければ奪われる可能性は高い。実際、過去には奪われそうになって現行犯逮捕しているケースもある」

――拳銃はいつもどのように管理されているのか。
「交番では、常に装着している。だから腰が痛かった。例えば、大便や仮眠の時は、交番に金庫のような拳銃庫があり、そこに保管している。勤務が終わると警察署の拳銃庫で保管しまうので、基本的に交番勤務の勤務中は常に装着している」

――このような事件を想定されるような教育は警察官は受けているのか。
「訓練はしている。普段の逮捕術や武道訓練のほか、実際に交番で、襲われた時の対応訓練を定期的にやっている。具体的には、機材の活用方法や事務所内の机や椅子を使っての対応。拳銃を奪われたら二次三次の被害が出るので、絶対にあってはならないと教育を受けている」

――拳銃は安全装置など外さないと撃てないはずだが、今回の事件は元自衛官。拳銃を発射できるものなのか。
「自動式ならまだしも、回転式拳銃は引金を引けば撃てるもの。以前は、安全ゴムというゴムを引金の隙間に挟めて安全性を確保していた。そのゴムがあっては、緊急執行でゴムを外す行為が非常に手間になるということで、現在は安全ゴムもない。昔と違い、職務執行で緊急に使用できるように法整備もしているので、素人でもTVや映画でやっているように、見様見真似で撃てると思われる」

――取材でヤクザが拳銃で抗争をする際、「5m離れては当たらない」と言っていた。が、今回の島津容疑者は警備員に二発当てている。拳銃の発射は難しいのではないか。
「警察官は、拳銃訓練で大きく逸れない撃ち方等、色々教育を受けるが、自衛隊は警察以上にその辺りの教育は中身の濃いものなのかと思われる。そのため、今回の被疑者も職歴から扱えたのではないか」

――最後に今回の事件、どのような感想を持ったのか。またどうすればこういう事件を抑えらるのか。
「今回の事件は、一番懸念されてきたこと。単に逮捕術や武道の訓練を重ねただけでは防げるものではなく、常に危機感を持った上で、複数人対応することしかない。今回、交番相談員がいたようだが、警察官複数人での対応は基本。人員問題を理由に警察官単独勤務が続くようなら、今回の事件は再びあるかもしれない」

 誰もいない交番や、一人でしか対応出来ていない交番は度々、よく見かけます。今回の事件により、危機感を抱く警官が増え、それによって事件の再発防止になればと深く願ってやみません。最後に二人の犠牲者のご冥福をお祈り申し上げます。(文◎編集部)