危険運転の石橋被告に弁護側が無罪を主張 あくまでも「不運が重なった」とする姿勢に疑問

夜の東名高速

 検察側が自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)に問えるとし、懲役23年の求刑を行なった東名あおり運転死亡事故の石橋和歩(かずほ)被告(26)。
 それでも法解釈には難しい部分も多々残されているため、10日には石橋被告弁護側が「不運な事情が重なった」ための事故と、同罪についての無罪を主張。石橋被告の刑事責任は(別件の)器物損壊罪などにとどまるとして、執行猶予付きの判決を求めた。

 もちろん争点は「運転」を巡る法的解釈。検察側は論告で、「高速道路では停車行為も危険運転に該当する」と主張しており、仮にこれに該当しなくても、停車とその後に石橋被告が暴行をしたことは危険運転と「密接に関連する」行為。そして、事故誘発の直接的な原因になっているとして争う。

 対する弁護側は「危険運転は少なくとも時速20~30キロを出していることが必要。停車行為は含まれない」として無罪を求める姿勢。

 このことからインターネット上でも石橋被告に適用できる器物損壊罪以外の罪や解釈の難しさなどが議論されることになったのだが、やはり状況は”偶然はまり込んだ法の抜け穴”とも言うべき難しい状況にあることがわかる。

 まずは『殺人罪』が適用できるのではという議論だが、未必の殺意(未必的殺意)であるかという問題に加え、未必的殺意が適用できた場合には石橋被告自身や同乗者にも、この「殺意」が向けられていることになるという難しさが。

 続いて検討されたのが『監禁致死罪』。

 これは過去の事例で車内での監禁が事故に繋がり適用されたものもあり、被害者が動けない状態という状況だけで監禁が適用された事例、わずか5分でも監禁が適用された事例もあるため議題としてあげられたもの。しかし、難しさとしては高速道路上という不明瞭な範囲で監禁が適用できるのかは未知数。

 今回争点となっている『自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)』に加え、上記2つの罪状が当てはまらないとなると一気に状況は厳しくなり、罰金50万円程度の『過失致死罪』を成立させるのが関の山なのではという意見が目立つ。

 また、今回のような裁判員裁判であれば裁判員の声が反映されるのではという楽観的意見もあったが、裁判員の意見は判決に大きな影響を及ぼせず、過去には裁判員が満場一致で死刑を指示したものの全く違う判決となった事例もある。

 法整備の”エアポケット”ともいえる落とし穴にはまり込んだ今回の事件。引き起こした事件に見合う判決は出せないという結果に終わってしまうのだろうか。(文◎編集部)