ニベアから家電まで…増加するベトナム人万引きの実態|万引きGメンの事件ファイル

 警察庁の発表によると、2014年の来日外国人犯罪の総検挙数は15215件(前年比1.3%減)で、このうちの2488件(前年比61.6%増)はベトナム人による犯行であった。そのなかでも窃盗犯の検挙が突出しており、検挙総数6716件(前年比13.3%減)のうち1745件(前年比71.4%増)をベトナム人が占め、そのうちの1434件(72.7%)が万引きによる検挙だという。

 ベトナム人刑法犯は、80年代以降で初めて1000人の大台を突破し、いまなお増加傾向にある状況だ。各署において、ベトナム語の通訳不足に頭を悩ませている実態もある。今回は、関東の万引き多発店舗で彼らと対峙する現役保安員である筆者が、多くの商店を悩ませるベトナム人万引きの実態に迫る。

●留学生による集団万引きは頻発、その手口は悪質化の一途

 昨今、ベトナム人留学生などによる集団万引きは頻発しており、その手口は悪質化の一途を辿っている。見張り役と実行役、運転手役に別れて行動し、日本の犯意成立要件や既遂時期を悪用するような手口で犯行に及ぶのだ。前もって店内を偵察するのは当たり前で、店側の警戒に気付けば挑発するように店内を徘徊して、商品を出し入れするような動作を繰り返す。途中で仲間を呼び集めたり、別々に行動することで警備を翻弄して、どさくさに紛れて高額商品を盗み出すという手口もあった。

 ブツを取り返すことはできても、共犯者全員を捕まえられるケースは稀だ。一度狙われてしまえば、系列店が軒並みやられる実態もある。大して日本語を喋ることのできない彼らであるが、なぜか日本の犯意成立要件を熟知しており、万引きという犯罪を楽しんでいるのである。

 彼らの狙う商品は多岐にわたっており、被害店舗の業種によってブツは異なる。たとえば食品スーパーであれば果物や生鮮食品、菓子、嗜好品などが狙われ、なかでもブロック肉や刺身、エビ、チョコレート、コーヒーなどの被害が目立つ。特に被害が深刻なのはドラッグストアで、世界的に評価の高い国産化粧品や美容液、風邪薬、痛み止め、胃薬などの大量盗難が全国で相次いでいる。

 一度の被害で商品棚がスカスカになることも珍しくなく、最近では再評価されたニベアクリームの大量盗難が相次ぎ、その対応に苦慮した。家電量販店における被害も大きく、携帯音楽プレーヤ―やイヤホンをはじめ、パソコン、炊飯器などの盗難が頻発している。特定の衣料品店における大量盗難もあとを絶たない。要は、国に持ち帰っても使えるような、比較的高価で盗みやすい商品が狙われているわけだ。被害を最小限に留めるためにも、万引き犯が好む人気商品を把握して、被害防止に努める必要もあるだろう。

 関東のある地域では、頻発するベトナム人万引きを防止するべくベトナム語による万引き防止ポスターを作成して貼り出すなどの努力をしているが、その効果は軽微で状況に大きな変化は見られない。それどころか盗んだ商品を仲間の留学生に売り捌いたり、密輸出することで莫大な利益を得る者が増えており、現地空港近くの商店では被害品と思しき商品が日本の値札をつけたまま堂々と販売されている有様だ。事後強盗に至る事案も増加しており、警察官や保安員が切りつけられる受傷事故も増えた。捕捉された被疑者の多くは、明確な証拠があるのに容疑を否認して、反省のない態度で居直る。その厚かましさには呆れるばかりだ。

 ベトナム、ホーチミン在住の友人は言った。

「ベトナムでは窃盗犯のことをアリババと呼んでいますが、現地での窃盗は日常茶飯事で、ちょっと目を離せば盗まれる。盗まれる方が悪いみたいな風潮も感じるから、盗みに対する罪の意識が希薄なのでしょう」

 日本の警察は外国人に厳しいから、被害の大小にかかわらず逮捕になり、帰国を余儀なくされるケースがほとんどだ。ドリンク一本、わずか数十円の被害で逮捕され、帰国を条件に釈放される事案もあった。そうなれば再入国の道は絶たれ、高額な費用をかけて実現させたはずの語学留学も水泡に帰する。真面目に暮らす同胞達に肩身の狭い思いをさせないためにも、ベトナム人留学生には「日本で万引きをするな」と忠告しておきたい。

Written by 伊東ゆう

Photo by USDAgov

万引きGメンは見た!

Gメンが切りつけられたことも。