ラストアイドルから生まれたアイドルが近田春夫プロデュース楽曲で安倍政権批判!? RADWIMPSよりは技巧派か

Good Tears

 RADWIMPSの新曲「HINOMARU」が現在、絶賛炎上中です。「さぁいざ行かん 日出づる国の御名のもとに」「気高きこの御国の御霊」といった歌詞が、軍歌を彷彿とさせる愛国ソングであると非難が集中し、ボーカルの野田洋次郎さんが謝罪。
 ところが福岡で開催されたライブでRADWIMPSは「HINOMARU」を演奏し、野田さんが「自分の生まれた国を好きで何が悪い!」と絶叫するというダサい展開になっています。

 やはり、ポリティカルな内容を含んでいるにもかかわらず、脇の甘い作品を安易に出すと炎上しやすいものです。
 実は、今週発表されたアイドルソングの中にポリティカルな内容を含んでいるとして、大きな注目を集めた作品があります。その曲とは、Good Tears「へえ、そーお?」です。

 Good Tearsとは、秋元康さんプロデュースのテレビ朝日系オーディション番組「ラストアイドル」から生まれた5人組(現在は4人)アイドルグループ。同番組からは、Good Tearsを含む5ユニットが誕生し、現在AbemaTVでシングル表題曲を賭けたユニット対抗の1対1の総当たりバトルが毎週繰り広げられています。

メンバーの相澤瑠香のTwitter画像より

 Good Tearsのプロデュースを手がけたのは近田春夫さん。テーマはベリーダンスで、ヘソ出しをフィーチャーし、タイトルは「へえ、そーお?」とダジャレ。「歌詞の意味とかあまり無いんですよ」「歌いながらつい身体が動いちゃう」とノリを重視しているようで、どんなコミックソングになるのかと思いきや、その楽曲は安倍政権批判を含んだプロテストソングだったのです。

 ヘソをあらわにしたアラビア風の衣装に、ドナ・サマーを思わせるエレクトロディスコ。意味不明な歌詞の中に、「顔洗って出直しなさい あっ別ちゃん(安倍晋三総理大臣)」「嘘ばっかついちゃイヤよ あっそう(麻生太郎財務大臣)」「あそこしばってもいーかしら? HOOKださあ!(福田淳一財務事務次官)」「やべー あ べー あっキレちゃんたらもう(安倍昭恵)」と、一連の不祥事の重要人物の名前を巧みに入れ込んだのです。

 想定外の楽曲に「何回見ても鳥肌が立つ」「中毒性があって、繰り返し観てしまう」と称賛の声が上がり、普段アイドルに興味のない層にまで影響が波及する一方、「自分の思想をアイドルに歌わせるの好きじゃない」「ファンの方は複雑じゃ」など近田春夫さんのスタンスに疑問を投げかける人もいて、ちょっとしたボヤ騒ぎになっています。

 そもそも近田春夫さんのキャリアを振り返ってみると、そのスタートは1970代初頭のGS(グループ・サウンズ)末期までさかのぼります。代表曲は、ジューシィ・フルーツ「ジェニーはご機嫌ななめ」。1980年代中盤からはヒップホップバンド「VIBRASTONE」として、政治や社会を痛烈に批判するリリックで人気を博しました。ベトナムで焼身自殺をした僧侶を題材にした「人間バーベキュー」では、「政治家はゴルフが大好き ゲートボールはやらない」「政治家は名誉が大好き ボランティアはやらない」など、辛辣で過激なメッセージを放っています。予定調和を嫌う秋元康さんのことですから、ラストアイドルに荒波を立てることを見込んで、近田春夫さんをプロデューサーに起用したのではないでしょうか。

 プロテストソングを歌うアイドルとして「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」などの作品で知られる制服向上委員会を連想した人も、多くみられました。そこで今回、右翼団体や新興宗教のプロデュースするアイドルグループの歌詞をチェックしてみたのですが、直接的に政治的メッセージの込められた楽曲は確認することが出来ませんでした。年齢が若く判断能力がまだ決して高いとは言えないアイドルに、ポリティカルな内容を含んだものをそのまま歌わせることには、やはり抵抗があるようです。

 とはいえ、聞き違いの余白を残したGood Tears「へえ、そーお?」は、タブーの裏かく知恵を使った秀逸な作品だと感じます。同番組ではGood Tearsが、指原莉乃プロデュースLove Cocchiに勝ち、まず1勝。この楽曲が今後どんな成長を遂げるのか、目が離せません。(取材・文◎杏)