シリーズ「ネットウヨク論」番外編:CG児童ポルノという造語に見る大手メディアの凋落2

 実は”CG児童ポルノ”問題より遡ること2年前にも、全く同じことを各メディアがやらかしている。どちらかというと今回最も大きく取り上げたいのはこっちなのだが、当時何があったのかを振り返り、凋落の一途を辿るメディアに猛省を促したい。

2011年の夏頃に、このような事件が報じられた。

「女優の陰部が無修正で映っている「疑似児童ポルノ」DVDを出荷したとして、警視庁はわいせつ図画頒布の疑いで、東京都渋谷区幡ケ谷の写真家、力武靖容疑者(48)と山口県下関市のアダルトDVD制作会社「ムーランコーポレート」元社長、河野憲一容疑者(35)を逮捕した。同課によると、力武容疑者は「映っているのは陰部ではない」とわいせつ性を否定している。

警視庁によると、少女のように見える成人女優を使った「疑似児童ポルノ」作品が摘発されたのは、全国で初めて。

逮捕容疑は、今年6月、女優(30)の陰部が映ったDVD「WAREMEX(ワレメックス)No.15」計45枚を、アダルトショップ2店舗に出荷したとしている。 警視庁保安課によると、「WEREMEX」は約1時間の作品で、このうち約4割に陰部が映っていた。これまでに全国で36枚が販売されたという。

力武容疑者は少女ヌード写真で知られる写真家。昭和57年ごろから写真集などを制作していたが、児童買春・児童ポルノ禁止法が施行された平成11年以降は、童顔の成人女優を使った「疑似児童ポルノ」を制作していた。これまでに約100作品を制作し、このうち約60作品が国内で商品化されているという。」(msn産経WEBより)

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 これがいったいどのような事件だったかというと、ロリコン写真の大家と言われている力武靖氏のDVD作品に女優の陰部が映っており、それが無修正作品と看做されて摘発に至ったというもの。

具体的には、力武氏がシリーズ化していたWAREMEX(ワレメックス)という作品があり、それは「ワレメが見れる!」をウリにした商品だった。ところが、そのワレメを巡る解釈で力武氏と警察とで考えが違ったのである。力武氏は「ワレメ自体は皮膚でしかない。ワレメの中身は法で言う陰部・性器ではあるが、陰毛を剃り、性器が露出しないように皮膚を閉じた状態であるならば、まったく違法性はない。」と考えていた。これは力武氏だけが言っていることではなく、エロ業界で広く言われていた解釈である。

そもそも法律の文面は(エロに限らず)いかようにも受け取れるあやふやな表現がされている場合が多く、「どこからどこまでが陰部・性器なのか?」がハッキリせず、ゾーニングが出来ているとは言い難い代物なのだ。業界の人間でも何をどう解釈していいのか、どこまでなら許されるのか理解し切れておらず、言ってみれば(オカミの気分次第で)摘発されるまでチキンレースを続けるしかない状況である。

このあやふやさについて「アナルをどう見做すか?」を例に出そう。法律には「性器をそのまま映しちゃダメよ?」という一文があるのだが、「では尻の穴はどうするんだ?」という点についてAVメーカーや倫理団体の一部で論争が起きたことがあった。この時は「尻の穴は性器ではなく排泄器官なのだから映していい」という声と「セックスに使うのだから性器と同等の扱いだ」という声とがあり、最終的に「ただ映すだけならばOKだが、指で弄ったりオトナのオモチャを挿入する場合は性行為だからモザイクが必要」というところで落ち着いた。

このように、性器・陰部を巡っては不透明な部分が多すぎ、わざといかようにも解釈できるグレーな線引きにしているフシが見受けられる。これは邪知かもしれないが、そうしないと警察OBらが数多く天下る倫理団体様の商売が成り立たないという点に注目しておきたい。

なぜ倫理団体が存在するかというと、専門家の審査を通してOKを貰わないと摘発されるかもしれないからで、逆を言えば逮捕・摘発の恐れがないのであれば倫理団体を通さない作品でも堂々と売り捌けるのである。そうなっては団体様のアガリが減るのだから、わざとあやふやなどう解釈していいか悩む文面のままにしておき、専門家(倫理団体)のお墨付きがある場合のみOKという事にしたいのだろう……なんて事を言うヤツがいるけれどもボクは倫理団体の味方です。団体様は常に正義だ!愚民どもは団体様の言う通りに清く正しく慎ましく生活してればいいのだ!

兎にも角にも、警察はこのようなあやふやな状況で一線越えた力武氏に対し、ワレメだろうと何だろうと陰部は陰部だとして逮捕したのだ。(続く)

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Written by 荒井貞雄

Photo by PANPOTE

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まだまだ続きます