猪瀬知事の辞職で考えるメディアの本質とネットイナゴの行動~ネットウヨク論:番外編
ここ1週間ばかり、ミスター5,000万こと猪瀬氏の話題がワイドショーやインターネットを賑わせていた。 最も多かった声は猪瀬氏に対する批判や辞任を求める声だったように思うが、最も大事なのは 「どこまで火の手が回るか」 であろう。猪瀬氏の背後には、まず 「他人にハシゴを上らせて危なくなったら一人でトンズラする事に定評のある閣下」 がおられるし、「金を配る必要のあるヤツはその時々の有力者を狙ってばら撒く」 のだから、受け取った先としては自民党も疑われる。今は猪瀬問題として広まってしまっているが、彼の去就など今となっては些細な事だ。
さて、こうした人の耳目を集めやすい報道が流れた際は、そればかりに注意を取られないよう気を付けねばならない。一昔前の自民政権下では 「甲子園の裏で重要な法案が通る」 と囁かれていたものだが、その本質は今も変わっていない。
直近の話でいえば、秘密情報保護法で盛り上がりすぎたが故に、同時期に提出されていた改正生活保護法と生活困窮者自立支援法が、殆ど話題にならない内に可決された。「軍事機密に関する情報だけ」「報道については罰則の対象から除外」 と明記されている秘密情報保護法など庶民には比較的どうでもいい話題で、国民の生命に直結するのは後者の方だと思うのだが、「情報拡散」「反対運動」 というリソースを 「対秘密情報保護法」 に割き過ぎてしまったのではなかろうか?
このようなメディアの偏りと、それに感化される人々については、以前から何度も指摘されていた事ではあるのだが、これらは相互に作用しあっている。 メディアは単なる商売であるから、まず金を作らねばならない。 金を作るには人(客) を集めなければならない。
よって、人の興味を惹きやすい情報を、他局・他メディアよりも刺激的な形に整えて発信しようとする。 東北の震災の時に、本当に必要な情報を減らしてまで、津波で何もかもが飲み込まれる様子ばかり垂れ流されていたのはこれが理由である。こうした報道を見て感化され、それだけに気を取られる人間が大量生産されているだけなのだが、これは嫌韓系のまとめサイト問題の際にも触れた 「ゲスがバカを釣る」 という悪循環であり、ネトウヨ問題はTVがネットに置き換わったが故に発生した類似品であると言えよう。
ネトウヨとカテゴライズされる連中は、何か気に入らない報道があるとすぐに 「メディアは朝鮮人に支配されている!」 と病的な反応を示すが、今ではサヨクとカテゴライズされる連中が 「メディアの右傾化があ~!」 と騒いでいる。どっちやねん。
先に述べたように、メディアは商売でやっているだけである。肉屋が肉を、魚屋が魚を売るのと同様に、メディアは情報を売って金にしているだけだ。「どんな商品を棚に並べるか?」 については権限を持つ人間のセンスが関係してくるだろうが、ネットでピーチクパーチク言われている右だ左だ陰謀論だは二の次である。しつこいようだが、まず 「なるべく効率よくお金にしましょう」 が第一なのだ。韓流ブームを持ち上げた方が金になると判断すればそうするし、嫌韓の方が金になると考えたらそれをやる。メディアなんてただそれだけだと考えねばならない。
こうしたメディアの本質を踏まえて自分なりの思考・思想を構築していかねばならないのだが、それが出来ない人間はただ流れてくる情報や、PCのモニタに映し出された情報を真に受け、それだけでああだこうだ口走ってしまう。言ってみれば煎餅を噛じりながらワイドショーに向かってやいのやいの言ってるオバハンや、どこかで聞きかじった話を元に新橋のガード下で天下国家について語ってしまうオッサンがこれにあたる。
これと殆ど同じ習性を持っているのがネトウヨと呼ばれているイナゴのような連中なのだが、ワイドショーオバハンや新橋のオヤジと決定的に違うのは、イナゴ君達はネットの特性を利用してあちこち荒らし回る事である。 自宅の居間で独り言を呟くとか、酒場で仲間相手にボヤク程度ならば気にもとめられなかったものを、公の場所で他人に危害を加えるようになってしまったから、イナゴ君達は忌み嫌われる存在になってしまった。プライベートとパブリックの境界が解り辛いインターネットならではの問題ではあるのだが、このように考えると実は新しくも何ともない話だと解るだろう。
Twitter炎上というと新しい問題のように感じるだろうが、言い換えればやたらと攻撃的で粘着質な井戸端会議ババアが徒党を組んで他人を襲ってるようなものである。 ……インターネットマジ怖い。
Written by 荒井禎雄
Photo by 勝ち抜く力/猪瀬直樹
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