マルハニチロ農薬混入・阿部利樹容疑者のコスプレ写真と実物が落差あるワケ by草下シンヤ

 マルハニチロホールディングスの子会社アクリフーズの冷凍食品に農薬を混入した疑いがあるとして、アクリフーズ群馬工場の従業員、阿部利樹容疑者が逮捕された。この事件は約640万点の冷凍食品の回収騒動に発展し、マルハニチロホールディングスは2014年3月期の連結営業利益予想を150億円から115億円に下方修正するなど同社に大きな打撃を与えた。

 しかし、逮捕時にニュースで報道された阿部容疑者の写真はまた違う意味で物議を醸し出した。その写真とは、背中に「正義」という文字が書かれた人気漫画『ONEPIECE』のキャラクターのコスプレをしたものであり、事件の性質を考えるとあまりにそぐわないものだったからである。

 インターネット上では、この写真に関するスレッドが乱立し、「いたたたた」「海賊王にはなれなかったな おっさんw」「やってることは全然正義じゃねえなw」などというコメントが踊る事態になっている。

 この写真はバイク雑誌が企画する撮影会で撮影されたものらしいが、これ以外にもニュースの報道写真に違和感を覚えることは少なくない。

 2013年12月2日、アフリカのコンゴ民主共和国の日本大使館に放火をした疑いで元日本大使館員の山田真也容疑者が逮捕された。この時のニュースでは、山田容疑者の満面の笑みが映し出されることになり、こちらもちょっとした騒動になった。この写真は卒業アルバムのスナップ写真を使ったものだと思われるが、そのあまりにも強烈な笑顔にインターネット上には「他に写真あったろ」「これはいい笑顔」「ヒャッハー」などというコメントがあふれた。

 逮捕時の速報ニュースでは容疑者の顔写真を急遽手に入れる必要がある。容疑者の家族や知人に提供してもらうことは難しいため、比較的入手しやすい卒業アルバムから流用することが多いのだが、そこには”誤報”を避ける意図もあるように思われる。

 2011年に発覚し、日本中を震撼させた尼崎事件では、主犯の容疑者と異なる人物の顔写真を容疑者のものとして流し続けるという報道被害が発生している。このケースではほぼすべてのマスコミ各社が誤報を行い、紙面や放送などで謝罪をする事態になった。

 一度インターネット上で情報が広まってしまえば、それが後に誤報だとわかったとしても訂正されないまま情報が残ってしまう危険性がある。こうした事態を避けるためにも本人であるという確証が取れる卒業アルバムの写真が用いられることが多いのだろうが、皮肉なことにそれが容疑者の笑顔の写真が放送で流れるといったミスマッチを生む要因にもなっている。

 しかし、阿部容疑者にしても山田容疑者にしても逮捕時に報道された写真が事件にマッチしないものだったとしても、それが彼らの一側面の姿であったことは疑いようがない。

 犯罪行為に及んだからといって、その人物がいつも犯罪のことばかりを考えているかといえばそんなことはなく、コスプレの趣味に興じたり、満面の笑顔を浮かべたりすることも当然ある。取材が進んでいない段階で登場する速報ニュースの写真は結果的にその容疑者の”陽”の部分を取り出したものが多いとも言えるのだ。

 ”陽”の部分の写真で容疑者に興味を持った人はその後の報道を追ってみてほしい。”似つかわしくない写真”はすぐに”事件にマッチした写真”に差し替えられる。現在、報道されている阿部容疑者の写真は警察に逮捕され連行される際に撮影されたものに変わっているが、コスプレ写真とのあまりのギャップに驚愕する人が続出している。

 この写真では阿部容疑者の”陰”の部分が色濃く映し出されている。一連の事件の流れ、そしてそれに応じて変わっていく写真を見ることで、容疑者の姿を立体的に感じ取ることができるのかもしれない。

Written by 草下シンヤ

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まさかの金髪ウィッグでした。