コピペでも名誉毀損? ネットで情報拡散を手伝う法的リスク~ネットウヨク論:第12回

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この連載で過去に何度も何度も何度も何度も繰り返し述べた内容だが、「自分に都合の良い情報ばかり集めるな」という指摘は、何もあなた方のネット利用を制限し、不便な物にしたいがために発した言葉ではない。ましてや特定の思想を弾圧したいだなんて思惑もない。ひとつの事案に対しどのような感想を持とうが、それは個人の自由である。 またどのような行動に出ようと、それによって生じた責任を背負う覚悟があるならば好きにすればいい。それが言論の自由だ。

では、何故このように口うるさく同じ事を言い続けているのかというと、実に簡単な話で、自分に都合の良い情報にだけ触れていると自己洗脳のような状態に陥り、「ネットという公の場所で発言する上で絶対に知っておかねばならない情報」すら知らぬまま、最悪の結果を招きかねないからである。

日本には00年代半ばにブログが流入し、その後SNSが流行り、携帯電話からも気軽にネット接続が出来るようになったため、ネット利用者が爆発的に増大した。それからもうかれこれ10年が経とうとしているが、その間にネットに関する様々なトラブルや事件が起こり、また数多くの判例が蓄積されてきたのである。その中には皆さんが思い込んでいる「○○を××にしとけば安全」という情報が裁判によって全否定されたケースも少なくない。裁判所は過去の判例を元に判断するのが常であるから、一度そうした判断が下されると、それを覆すのは非常に難しい。よって、ネットを使うのであればせめて最新の判例くらいは頭に叩き込んでおく必要があるのだ。

具体例として、ねとらぼに掲載されたこのニュースを取り上げる。

■ 中傷記事「転載しただけ」でも名誉毀損に 東京高裁が初認定 安易な「転載・まとめ」に警鐘

(ねとらぼ より:2013年12月3日)

 インターネット上の中傷記事を、別のインターネット掲示板に「転載」した場合でも名誉毀損(きそん)にあたるとの判決を、東京高裁が9月に下していたことが分かりました。「ネット転載」での名誉毀損認定は今回が初であり、今後さまざまな方面に影響を及ぼしそうです。

 今回名誉毀損に問われていたのは、「Yahoo!掲示板」に書き込まれた中傷記事を、匿名で「2ちゃんねる」に転載していたケース。原告側はプロバイダに対し、「転載者」側の発信者情報を開示するよう訴えを起こしていました。

 裁判では、もともとあった情報を「転載しただけ」でも名誉毀損となるのかどうかが争点となりましたが、地裁判決では「すでに公開されている情報を転載しただけでは、社会的評価を低下させたとは言えない」との理由から”名誉毀損にはならない”と原告の請求を棄却。しかし、高裁判決では一転、「転載によって情報を拡散させ、社会的評価をさらに低下させた」と、名誉毀損が認められた形となりました。判決を受け、プロバイダ側は上告せず、転載者情報の開示請求に応じています。 

上記の記事中に、この裁判で代理人を務めた弁護士のブログへのリンクが貼られているが、そちらも興味深い内容なので紹介する。

■ 転載しただけでは名誉棄損にならない!?

(最所義一弁護士のブログ記事より:2013年9月9日)

 私どもは、東京地裁の上記判断に対し、控訴審で争い、東京高等裁判所は、平成25年9月6日、上記地裁判決を取り消し 『先に△△△△掲示板に掲載された記事を転載したものであるか、又は、雑誌〇〇○○の×月号に掲載されていたことが認められる。しかし、本件情報□,△,◇をウェブサイト「○○○○」で見た者の多くがこれと前後して、△△△△掲示板の転載元の記事や雑誌○○○○の×月号の記事を読んだとは考えられず、ウェブサイト「○○○○」に本件情報□,△,◇を投稿した行為は、新たにより広範に情報を広め、控訴人の社会的評価をより低下させたものと認められる。』 と認定しました。(中略)

 軽い気持ちで、いたずら半分にコピーアンドペーストしてしまったとしても、名誉毀損の責任を問われる可能性がある、投稿を行う際には、自分の意見として責任をもって主張できる内容であるかを、今一度、冷静に判断していただきたいと思います。

 

■ プロバイダに対する発信者情報開示訴訟,控訴審で逆転判決

(最所義一弁護士のブログ記事より:2013年9月18日)

 平成25年9月6日,東京高等裁判所は,「雑誌・インターネットのサイト等に掲載されていた原告を誹謗中傷する記事が,インターネットの別サイト上に転載されたことは名誉棄損に当たる」として,原告(訴訟代理人松尾祐美子外)がインターネットプロバイダに発信者情報の開示を求めた事案において,『転載しただけでは,転載元に記載されている以上にその人に対する社会的評価を低下させることにはならない』として名誉毀損の成立を否定した東京地方裁判所の平成25年4月22日の判決を取消し,プロバイダに対する発信者情報の開示を認める判決を出しました。

 今回の東京高等裁判所の判決は,インターネットの別掲示板での投稿を転載した場合の名誉毀損行為の成立について正面から判断した初めての判断で,インターネット上の誹謗中傷に苦しめられている方々の救済に資する重要な判断になるものと思われます。

 

この判例をどう判断すれば良いかというと、まず「雑誌などをソースとした2ちゃんのスレ立て」および「2ちゃん内の別スレへの転載(コピペ)」さらには「2ちゃんスレを元にしたまとめブログ・個人ブログへの掲載(コピペ)」などが範囲に含まれる。 解りやすく2ちゃんを中心に考えてみたが、当然「WEBニュース→個人ブログ」も「個人ブログ→個人ブログ」という流れもアウトだ。

ようは「大元の情報に名誉毀損の可能性があるならば、別の場所に転載し、情報拡散を手伝っただけの者も訴えられるよ」という結論である。

もう少し噛み砕いて説明すると、あるゴシップ誌にとある人物を批判する記事が掲載されたとする。これを仮にAとしよう。次にこのAを2ちゃんのニュース板の管理者が拾い上げ、1さんとしてスレ立てしたとする。これをA’とする。さらにA’を元に2ちゃんまとめサイトの管理人が自分のブログの記事として転載した。これをA”とする。

『Aが大元である事は間違いないが、A’を読んだ者が先にAを読んでいたとは限らず、またA”を読んだ者がAやA’を読んでいたとも限らない。また、A”でその情報を知った者が、わざわざAやA’を確認するとも考えられず、大抵の場合は最初に情報を得た場所で止まってしまう。ならば、大元の情報であるAを書いた者だけではなく、A’やA”を転載した者にも名誉毀損の可能性が生じる』と判断されたのだ。

実際に訴えが来るとすれば、まずは上記の裁判のように「発信者情報の開示」を求める訴訟が起こり、それによって発信者が特定された場合、その次に発信者に対して何らかの訴えが起こるという流れになる。

ネットで当然のごとく言われ続けて来た「コピペしただけだから安全」という考え方は、この判例が覆らない限りは完全に否定されたと看做すべきだ。よく2ちゃんのスレや他人のブログなどに、よく解らない情報をコピペして回っている連中がいるが、あれらの行動にも [発信者情報の開示請求→本人への訴訟] という展開が待ち構えているのだ。

また「転載しただけだから大丈夫」と同様に言われていたのが「URLなんかをそのまま書かなきゃ大丈夫」 である。例えば違法性の強い情報(画像や動画含む)のURLが [http://tablo.jp] だったとしよう。どこかで見覚えのあるURLだがきっと気のせいだ。このURLをどこぞの掲示板やブログなどにそのまま貼り付けると危ないというのは以前から言われており、その抜け道として [httpコロンスラッシュスラッシュn-knucklesドットコム] などと表記し、直リンしなければ見逃して貰える……と言われ続けていたのだが、実はこれも最新の判例によって全否定されている。

■ ネットに広がる児童ポルノ 「URLを書き込んだだけでも犯罪」ってホント?

(弁護士ドットコムより:2013年11月11日)

「見ず知らずの他人がアップした児童ポルノ画像のURLを一部改変して、自分のHPに掲載した行為について、児童ポルノ公然陳列罪の正犯にあたるとした判例(最決平成24年7月9日・最高裁サイト)が出ています」

 奥村弁護士はこのように述べる。どんな事案だったのだろうか。

「事案の詳細は、大阪高裁による二審判決(大阪高判平成21年10月23日・判例時報2166号142頁)で紹介されています。概要としては、URLの『bbs』の部分を『(ビービーエス)』と改変したものを掲載して、『漢字は英単語に、カタカナはそのまま英語に、漢数字は普通の数字に直してください』と付記したという事案で、リンクも張られていませんでした」

 つまり、直接リンクを張っていないどころか、URL自体が実際のものとは違っていたという。ところが、奥村弁護士によると、大阪高裁は次のように判決文で示して、児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めたのだ。

「他人がウェブページに掲載した児童ポルノへのハイパーリンクを他のウェブページに設定する行為は、その行為又はそれに付随する行為が当該ウェブページの閲覧者に対し当該児童ポルノの閲覧を積極的に誘引するものである場合には、児童ポルノ公然陳列に該当する」

これなどシャレで済まなくなっており、児童ポルノの公然陳列罪の「正犯」として 「正犯として」大事な事なので3回言うが「正犯として!」看做されてしまったのだ。 URLをボカして書いただけなのに「お前が違法画像をネットに掲載した張本人であるも同然だ!」と言われているのである。ある時期に援交系の裏ビデオが本気の摘発を受け、様々なエロサイトが危なっかしい動画へのリンクを止めたり、サムネイルを外したりしたのだが、中には未だに「URLをぼかせば……直リンさえしなければ……」とチキンレースをしているサイトが存在している。しかしこの判例では「積極的に違法性の強い情報へ人を流そうとしたよね? それだけでアウト!」と言われているのだから、それらは軒並みヤラれておかしくないという事だ。

また上のケースはたまたまエロだったというだけで、世の中の違法行為は何もエロ絡みだけではないのだから、違法性が認められれば名誉・信用毀損などにも適用されるだろう。

ネットを取り巻く現状がどれほど恐ろしく、また長年言われ続けて来た「○○だから安全」が通用しなくなってしまったかがご理解いただけだだろうか? ネットという便利な道具を安全に使いこなすためにも、こうした判例を頭に入れて「どこまでなら安全なのか?」を考えた上で行動すべきである。未だに「ネットは匿名! ○○しとけば安全!」とか言ってると「お前は何周遅れなんだ?」と笑われますよ?

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Written by 荒井禎雄

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