「サウジアラビアが初めて女性に運転免許交付」など序の口 『Metoo運動家』が知らない世界の女性差別

インドでも、異なるカーストの男性と結婚した女性が家族によって焼き殺される事件が相次いでいます。インドでは2011年、最高裁が名誉殺人に関与した者には死刑を科すとの判断を示しましたが、名誉殺人は一向に減る気配がありません。
国連による2010年の調査によると、名誉殺人によって殺害される被害者は世界中で年間5000人にのぼるとされています。

理不尽な男性優位社会で抑圧されている女性たち。司法ではなく一族の決定により裁かれ、無残に殺される女性たち。法治国家に暮らす我々は、この不条理をどう捉えたらいいのでしょう。「別世界の話」と切り離すほかないのでしょうか。

ただ、外国人であっても、イスラム圏を旅行したり、仕事で訪れたりする人にとっては決して無関係ではありません。以下に2つの事例を記します。

2008年6月、アラブ首長国連邦(UAE)のリゾート地にある美容院で働いていたオーストラリア人女性(29)が、職場の同僚3人に薬物を盛られて輪姦されました。
警察に被害を訴えた結果、犯人たちは逮捕されましたが、彼女自身も「婚姻外の性行為をした」として12ヵ月の禁固刑を科され、、8ヵ月間収監されました。UAEではたとえレイプされても、犯人の自白または4人の成人男性による目撃証言がなければ強姦罪は成立しないばかりか、被害者までもが罪を着せられるのです。

2016年には中東カタールでも、休暇中に薬物を盛られてレイプされたオランダ人女性(22)が、「婚姻外の性行為をした」として身柄を拘束された挙句、執行猶予付き禁錮1年の判決を言い渡されました。
ちなみにカタールは2022年のFIFAワールドカップ開催国です。もし日本が出場すれば、女性を含む多くの日本人が訪れることが予想されます。

同じ時代の、同じ人間社会でありながら、前世紀のごとき家父長制と女性差別がはびこる世界が存在するということを、我々は肝に銘じておくべきでしょう。(取材・文◎霧山ノボル)