有名暴走族の元総長の男らしさに清々しさを感じました|久田将義

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「一人で来るとは思わなかったです。ぞろぞろ連れて来たら黙っていなかったんですけどね」

 居酒屋の一番奥に陣取った、一人の男性が僕に言います。彼は埼玉方面を主に活動していた有名暴走族の元総長です。

 僕は「実話ナックルズ」編集長時代、岩橋健一郎さんの連載で元暴走族や暴走族にインタビューするページの担当をしていました。現役時代の写真を借りて、現在の立ち直った写真と比べて「昔は悪かったけど今は堅気として頑張っている」という姿勢を見せるという主旨でした。

 で、これは全く僕のミスなのですが、写真(紙焼き)をなくしてしまったのです。これは言い訳ですが、例えば同じ会社のミリオン出版で、レディースや暴走族の専門誌「ティーンズロード」でも、多数の写真を借りていた為、なくしてしまった事があったと、比嘉健二編集長(当時)から聞きました。
「あってはいけない」のだけれど、大量の写真を管理しているとそういう事も……。いやこれは本当に「言い訳」ですね。そしてそれは、武闘派で鳴らした元暴走族の総長には通じるはずもないし、そんな事を言うつもりも毛頭ありませんでした。

 が、幸いにもデータに取り込んでいたので、それをプリントアウトして返却することも可能でした。けれど、そういうセコイ真似は、彼らはもっとも嫌います。そこで、デザイナーに頼んで写真をコラージュしたりして、絵画のように仕上げて、お詫びとして持っていくことにしました。

 電話でひたすら謝罪し、彼の地元に行く事になりました。元総長が居酒屋を指定します。僕はこの時点で「何人かで待ち構えているのかな」と想像し、正直憂鬱でしたが、こちらが100%悪いので、ひたすら謝るしかない訳です。

 埼玉の中核地の駅で降ります。居酒屋に行くと元総長は一人でした。周囲には仕事帰りのサラリーマンが飲んでいます。「本当に一人なんだ」。意外でした。
 正直、暴走族のなかには大勢で囲んで威圧するチームもなくはないです。その元総長には男らしさを感じました。やはり一対一が僕は好きです。
 そして、デザイナーが作成してくれたコラージュを差し出し、許してもらいました。というより、「一人で来た」事で既に、この件は元総長の中では終わっていたのかも知れません。

 僕は何の取柄もありません。「場面」でどうにかする器量もないです。あるとしたら「身体一つ」です。それを使うとしたら、身体一つで相手に対峙するしか方法歩がなかったのです。

 それ以前から、「何かあったら会いに行く」という事を信条にしていましたが、とにかく相手の懐に飛び込む事が、大切ではないでしょうか。その後、元総長とは酒を何回か酌み交わしました。それは僕にとって、嬉しい時間でした。(文◎久田将義 連載『偉そうにしないでください。』)