歌舞伎町「立ちんぼ」に変化が 「歩きんぼ」が出現

歌舞伎町で検索すると最近は「トーヨコ」「立ちんぼ」という語句が上位に並びます。その立ちんぼは今に始まった訳ではなく、歴史は古いと言われています。
まず、歌舞伎町の風俗事情から把握しておく必要があるでしょう。
歌舞伎町内の今は、すっかりインバウンドでオシャレなバーが立ち並ぶ、ゴールデン街、センター街は青線(赤線と違い非合法の風俗店)でした。因みに隣の街、新宿二丁目は赤線でした。赤線は他に都内だと台東区・吉原や墨田区・向島、江東区・須崎パラダイス(ほんの一部です)が有名です。赤線の周囲には青線があり、そのまた周辺には白線(パイセンと読む。いわゆる立ちんぼが立つ地帯)という構図が日本における性風俗のざっくりとした地図と言ってよいと思います。
歌舞伎町には現在こそ、風営法の許可を得た店が立ち並びますが、中には当然風営法の範疇の外でこっそり「営業」している店が多々あります。そして立ちんぼですが、なぜ歌舞伎町に集まるのか。
筆者が何人かに声をかけ、また裏社会の人間に取材したところ、ある一つのキーワードを皆、口にするのに気づきました。
「歌舞伎町に来れば、『何か』がある」
東京都四都市という石原都政時代に名づけられた街があります。渋谷、六本木、池袋、そして歌舞伎町です。なぜ人は渋谷、六本木、池袋で立ちんぼをせず歌舞伎町に集まるのでしょう。一言で表現してしまえば歌舞伎町は「何でもアリ」の街と思われている点です。これは小説、映画、ドラマそして現在ではネットなどの影響は大きいです。筆者が取材した指定暴力団幹部も「歌舞伎町の本や情報を聞いて来た」。
立ちんぼも同様で、都内近郊出身ではなく地方から来た、家庭・金銭に、そして近年ではホスト、メンチカ(メンズ地下アイドル)に金をつぎ込むケースが見られ、国会でも議論されているほどです。
立ちんぼは歌舞伎町では小説「不夜城」(馳星周著)がヒットした1990年代後半は、大久保病院には韓国、東南アジアのニューハーフ。ラブホテル街にはフィリピン、新大久保は東南アジアというように外国人からの出稼ぎがほとんどでした。まだ、2011年に全国に施行された暴力団排除条例前だったので、ヤクザの面戸見がいてたまに自転車で集金をしていたものでした。
ただ、現在は位相が異なりご存じの通り、日本人の立ちんぼがほとんどで、しかもヤクザの仕切りはないと言います。一見、危険なように見えます。ただ立ちんぼ女性に言わせると「店舗型風俗と比べると客を選べるし楽」(関東某県出身20代女性)。
因みに、彼女たちが歌舞伎町集まる理由として大久保公園のような、立っていた休める広場があるという地の利もあります。大久保公園が24時間立ち入り自由だった頃は、「500円女性」(言い方は様々)という立ちんぼならぬ「座りんぼ」がいて、男性たちがその女性の前に列を作っていました。このように、大久保公園・大久保病院の立ちんぼは今に始まった事ではない、という点を読者の皆さんには踏まえて現状を見て頂ければと思います。
そして、最近は立ってスマホいじる女性だけではなく、二人で歩きながら客を物色する「歩きんぼ」(命名筆者)が出現しました。立っていると、取り締まりの対象になりかねませんが、一応歩いていれば散歩あるいは、どこか飲み屋を探している風になり、対象外になるという理由と、逆ナンに見えるからだと思われます。大久保公園の周囲とその付近のラブホテル街を歩いていくと何組か遭遇することでしょう。
最近はユーチューバーが、うろついているので余計に彼女たちにも警戒心が高まったと思われ、移動型になっているのではないでしょうか。警察も不定期に取り締まっているようですが、この波は恐らく止まらないでしょう。遠因は政治からくる不況・生活苦なのですから。
そして残念ながら「生活するためには歌舞伎町に行って立ちんぼしてくる」という女性が増えるのは、不況が続く限り終わらないでしょう。
これも遠因であり、警察行政の失敗だと思いますが、暴力団排除条例の施行が大きいと感じています。
ヤクザの生活権を奪った結果、実態が把握しづらい「半グレ」(準暴力団)がが目立ち、裏社会の地図が変わりました。立ちんぼの増加、そして匿名流通型犯罪(トクリュウ)の顕在化はこの条例が原因であると個人的に感じています(機会があればこの条例の悪影響を考察してみたいと思います)。(文@久田将義 写真@編集部)