トクリュウと暴力団との接点も 社会全体が対峙しなければならないトクリュウ犯罪
近年、SNSを通じて若者をリクルートし、特殊詐欺や強盗、薬物密売などを繰り返す新型犯罪集団「トクリュウ(匿名・流動型グループ)」が全国で急増している。従来の暴力団とは一線を画すかに見えるこのグループだが、その背後には依然として暴力団との深い接点が存在するという。警察当局は「準暴力団」として警戒を強めている。
実態の見えにくい新型犯罪集団
「トクリュウ」は、特定の組織名や拠点を持たず、SNSや暗号化通信アプリを使って実行役を随時募集するという、極めて匿名性の高い犯罪モデルを採用している。詐欺に使われる「受け子」や、実行犯となる「闇バイト」募集は、X(旧Twitter)やInstagram、Telegramなどを通じて行われ、報酬や“合法的っぽさ”を装う表現で若者を誘い込む。
特に問題視されているのは、その流動性と匿名性。一つの事件が発覚しても、上層部や指示役の実態がつかめず、警察の摘発が困難を極めている。
暴力団との見えざる連携
一見すると新興の若者中心の集団のように見える「トクリュウ」だが、捜査当局はその背後に暴力団の影を明確に指摘している。
実際、2024年11月には、SNSを利用して覚醒剤を密売していた「トクリュウ」グループのリーダー格が指定暴力団の構成員であったことが発覚。暴力団側がトクリュウを資金源として“下請け”のように使っていた構図が明るみに出た。
警察庁幹部は「暴力団が摘発を避けるために、“見えない手”としてトクリュウを活用している」と警鐘を鳴らす。
実際の被害と市民への影響
北海道では2023年、SNSを介した特殊詐欺事件が前年比5倍以上に増加し、被害総額は約7億円に達した。これらの事件では、LINEで「簡単高収入」の誘いに応じた若者が知らぬ間に詐欺に加担させられていたケースが多く、実行犯の多くは「犯罪と知らなかった」と供述している。
また、関東地方では、高齢者宅をターゲットにした強盗致傷事件でトクリュウ関係者が逮捕されており、一般市民が被害に巻き込まれる事件も後を絶たない。
対応迫られる警察と社会
このような動きに対応すべく、北海道警をはじめとする各道府県警は、トクリュウ対策の専従チームを設置。警察庁も全国一斉の取り締まりを行う方針を打ち出している。
しかし、専門家は「従来の暴力団対策法や組織犯罪対策の枠では、トクリュウのような“顔なき集団”には十分対応できない」と指摘する。今後はSNS運営会社との連携、教育現場での啓発、そして若年層の貧困・孤立への根本的な対策が不可欠だ。「闇バイト」の名の下に犯罪に巻き込まれる若者。背後で糸を引く暴力団。そして、それに対抗しきれない現行法制度。トクリュウは、単なる新しい犯罪グループではなく、既存の治安体制の“穴”を突いた構造的な脅威である。
市民一人ひとりが、SNS上の危険な勧誘に敏感になり、警戒心を持つこと。そして、社会全体で「匿名の犯罪」を許さない仕組みづくりが急務となっている。(文@編集部)