【ファクトチェック】参院選で広がる「外国人排斥論」噂の多くは事実と異なる 冷静な判断を
2025年の参院選を前に、一部の候補者やSNS上で「外国人の犯罪が増加している」「外国人が医療制度を不正利用している」といった主張が拡散されている。しかし、これらの発言の多くは事実に基づかない、あるいは誤解を招くものである。偏見や差別を助長しかねない「外国人排斥論」について、冷静な視点からファクトチェックを行う。
「外国人による犯罪が増加している」という主張は、たびたび政治の場でも取り上げられるが、警察庁の統計をもとにするとその実態は異なる。2024年の警察庁発表によれば、日本国内における外国人による刑法犯の検挙件数は、全体のわずか数パーセントにとどまっており、過去10年間で大きな増加は見られない。
また、外国人の来日数や在留者数の増加を考慮すれば、人口比で見た犯罪率は日本人と同等かそれ以下であることが多い。感情的な言説に対し、正確なデータを基に冷静に判断することが求められる。
医療制度の「ただ乗り」や「不正受診」が外国人の間で横行している、という声もある。しかし、厚生労働省の調査では、保険証の不正使用などはごく一部であり、大半の外国人は適切な手続きを踏んで医療サービスを利用している。
また、日本で働く外国人の多くは保険料を納め、納税も行っており、社会制度の一員として責任を果たしている。制度上の課題がある場合は、それを個人や集団の「属性」の問題にすり替えるのではなく、制度そのものの改善を議論すべきだ。
選挙になると、恐怖や不安をあおる言説が利用されやすくなる。外国人への偏見を利用する発言は、短期的な支持を得るための「政治的パフォーマンス」として使われるケースが多い。
だが、それは社会の分断を深め、共生社会の実現に逆行するものである。特にSNSでは事実と異なる情報が拡散しやすく、有権者の判断に悪影響を与える可能性がある。情報をうのみにせず、出典やデータを確認する姿勢が重要だ。
選挙は社会のあり方を決める重要な機会であり、有権者一人ひとりの判断が未来を形作る。「誰かを排除する」政治ではなく、「共に生きる」ための政治を求める声が、いまこそ必要とされている。
正確な情報に基づき、偏見に流されない投票行動を取ることが、成熟した民主主義の第一歩となる。