混沌とするアウトローたち スカウトグループ「ナチュラル」を法令上から解説してみた
スカウトグループ「ナチュラル」は、主に若い女性を街頭やSNSなどで勧誘し、風俗店などへの就労を紹介・あっせんしていた組織として知られています。報道などで明らかになった活動実態を見ると、その行為は複数の日本法に抵触する可能性が高く、特に「職業安定法」「風営法」「暴力団排除条例」などの観点から問題があります。以下では、法令上どこが問題とされるのかを整理して解説します。
スカウトグループの活動で最も中心的な法令違反にあたるのは、「職業安定法(昭和22年法律第141号)」です。この法律は、労働者の紹介・あっせんを行うには厚生労働大臣の許可を必要とすることを定めています(第30条・第32条)。許可を受けていない者が職業紹介を行うことは違法であり、ナチュラルは無許可で女性を風俗店などへ紹介していたとされています。特に、性的なサービスを伴う店舗などに労働者を紹介することは「有害業務目的の職業紹介」として、より重い処罰対象になります(第63条)。
職業安定法第63条では、「有害業務目的の職業紹介」を行った者には1年以上10年以下の懲役または100万円以上1,000万円以下の罰金が科されることがあります。ナチュラルの構成員が逮捕された際にも、この条文に基づく容疑(職業安定法違反〈有害業務目的職業紹介〉)が適用されています。これは単なる「無許可営業」ではなく、働く人を搾取的・有害な労働環境に送り込む行為として、社会的にも重く扱われる犯罪です。
また、風俗関連特殊営業を規制する「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」にも抵触する可能性があります。風営法では、性的サービスを伴う事業を営む場合、公安委員会の許可や届出を必要とし、従業員の管理や採用にも厳しい規制が設けられています。スカウトグループが介在して女性を店舗に紹介する行為は、店舗の営業実態に関わる部分でもあり、許可のない第三者が介入すれば、事実上「無許可風俗紹介業」にあたることがあります。
さらに、組織的な側面から見ても、ナチュラルの活動は「暴力団排除条例」や「組織犯罪処罰法(犯罪収益移転防止法など)」との関係で問題視されます。報道によれば、ナチュラルは暴力団関係者と接点を持ち、みかじめ料(縄張り料)を支払っていた疑いも指摘されています。暴力団排除条例(都道府県ごとに制定)では、反社会的勢力との経済的関係を持つことを禁止しており、たとえ直接的な構成員でなくとも、資金提供・共存関係があれば条例違反の対象となります。組織が得た紹介料やキックバックなどの収益が反社会的勢力に流れた場合は、「犯罪収益移転防止法」に基づく資金洗浄(マネーロンダリング)への関与も問われかねません。
また、スカウト行為そのものにも問題があります。東京都や大阪府など一部自治体では、「スカウト規制条例」や「迷惑防止条例」により、繁華街でのしつこい勧誘・スカウト行為を禁止しています。新宿区歌舞伎町では特に「スカウト行為防止特別地区」として条例が強化されており、許可のないスカウトや性的サービス業への勧誘は罰則対象になります。ナチュラルのメンバーがこれらの地域で活動していた場合、条例違反としても摘発される可能性があります。
加えて、組織内部での暴行や罰金制度などが存在したとされる点は、刑法上の暴行罪・恐喝罪・脅迫罪に該当する恐れがあります。内部統制や「罰金ルール」を通じてメンバーを支配していたとすれば、労働関係ではなく、暴力団型の犯罪的結社として「組織的犯罪処罰法」の枠組みで処理されることもあります。
このように、スカウトグループ「ナチュラル」の活動は単一の法律違反ではなく、複数の法令の違反行為が重なり合う「複合的な違法構造」を持っていました。職業安定法による無許可紹介、風営法による規制違反、暴力団排除条例による関係遮断義務違反、そして場合によっては刑法上の暴力行為や脅迫にまで及ぶ可能性があるのです。
法的に見ると、こうした組織は単なる「スカウト集団」ではなく、違法な職業紹介業と反社会的勢力的活動を組み合わせた「準暴力団的ネットワーク」としての性格を持っており、行政・警察の双方が取り締まりの強化を進めています。今後は、スカウト業界全体に対する制度的な監視体制の整備や、被害者支援・通報制度の強化も求められるでしょう。(文・写真@編集部)