「トクリュウ」の基礎知識 彼らはなぜ増加するのか — 暴排条例施行後の傾向
近年、日本の犯罪情勢は従来の暴力団(ヤクザ)対策の進展とともに「トクリュウ(匿流)」と呼ばれる新しい犯罪集団の台頭が注目されています。ここでは、暴力団排除条例(通称・暴排条例)施行以降の動きを踏まえ、トクリュウ犯罪の増減について、最新の統計や警察当局の見解を整理してみます。暴力団排除条例は、市民や企業が暴力団と経済的・社会的な関係を断つことを義務付ける地方条例で、全都道府県で2011年前後までに施行されました。これにより、ヤクザが表立って活動する余地は大幅に減っています。実際、警察庁の統計では、指定暴力団の構成員や準構成員の数は長年減少傾向にあり、2024年末時点で総数が2万人を割る水準にまで落ち込んでいます。
伝統的な暴力団員の逮捕者数も近年は減少しており、警察による取り締まりの成果と暴排条例の影響が示唆されています。暴力団勢力が減少する一方で、匿名・流動型の犯罪集団「トクリュウ」による検挙数は増加しています。2024年の全国の検挙者数では、トクリュウとみられる犯罪グループの関与者は10,105人に上り、暴力団メンバーの検挙者数を上回りました。トクリュウは明確な統制構造やリーダーを持たず、SNSやメッセージアプリを通じて末端の実行役(いわゆる「闇バイト」に応募した若者など)を募集する特徴があります。詐欺、振り込め詐欺型犯罪、盗みや強盗などで検挙されています。このため、従来の暴力団排除政策でヤクザが減少した後、その空白を埋めるようにトクリュウ型の犯罪が増加したとみられる側面があるという見方が出ています。国際的にも、警察が「トクリュウを日本の治安上の最大の脅威の一つ」と位置付けて対策をシフトしているとの指摘もあります。
日本全体の刑法犯の認知件数は、2024年に約73万7千件と、3年連続で増加しています。これはSNSを通じて組織化されるトクリュウのような匿名型犯罪が背景の一つにあると警察庁が分析しています。特に、トクリュウに関連する詐欺犯罪の被害額や件数は増加傾向にあり、特殊詐欺やオンライン詐欺の増加と連動した治安への懸念を強めています。トクリュウは匿名性や流動性が高く、犯罪実行者と指示者が直接接点を持たないケースも多いため、主犯格の特定や摘発が難しいという捜査上の課題があります。このため警察は、情報分析チームの強化やAI技術の活用など、新たな戦略を導入しています。暴排条例施行以降、従来型の暴力団メンバーやその検挙件数は減少しており、暴力団勢力自体も縮小しています。
一方で、「暴力団とは異なる」性質を持つトクリュウ型の犯罪集団による検挙数や犯罪件数は増加傾向であり、SNSやデジタル手法を使う新型の犯罪が治安上の課題となっています。統計的な傾向から見れば、暴排条例の施行が直接トクリュウ犯罪の増加を生んだという因果関係は明確ではありませんが、近年のメディア報道では暴排条例施行以降、暴力団のシノギが減ってからトクリュウへ流れていてもおかしくないでしょう。(文@編集部)