「懺悔の神様」ブッチー武者、今度は子どもたちの孤立に「✕」 認知症と介護を伝える新作舞台、11・3小田原で上演
11月3日、神奈川県小田原市の小田原三の丸ホールで上演
お茶の間を沸かせた「懺悔の神様」が、舞台から訴えるのは、介護する家族を孤立させない社会だ。フジテレビ系「オレたちひょうきん族」で人気を博したブッチー武者(74)が、認知症と介護をテーマにした新作舞台「あ・い・で・す アンソニー」を11月3日、神奈川県小田原市の小田原三の丸ホールで上演する。今回、とりわけ届けたい相手は小中学生。家族の介護などを担うヤングケアラーの子どもたちの無料招待にも取り組む。
両腕で「○」「×」を示した、おなじみの姿。その一方で武者には、認知症と介護に向き合う舞台を12年間続けてきた顔がある。きっかけは、友人の母親が認知症になったことだった。幼い頃の記憶は鮮やかなのに、成長したわが子が誰なのか分からない。その現実に衝撃を受けたという。
さらに、2006年に京都で起きた、認知症の母を介護していた息子による介護殺人・心中未遂事件の裁判を知った。
「この裁判を風化させてはいけない」
その思いから、事件をもとにした舞台「生きる」を2014年、東京・俳優座劇場で初演。以来、全国で25回の公演を重ねてきた。そこで強まったのが、「これは大人だけの問題ではない」という思いだ。家庭の事情を友人にも打ち明けられず、介護を抱え込む子どもたちにも、舞台を通じて「あなたは一人じゃない」と伝えたいという。
新作の原作は、認知症診療に30年間携わってきた専門医、小林博子氏の絵本「とかげのアンソニー」(星和書店)。認知症の母と暮らし、孤独な介護に追われるアンソニーの前に、謎の魔法使いが現れる。「7日後にすべてを終わらせる」という毒薬を渡された彼は、残された6日間、「世界一やさしい息子」になろうと決意するが…。物語は「ごめんなさい」と「ありがとう」をめぐって展開する。
主演のアンソニー役は芳本美代子。母役を磯村みどり、妹役を寿三美が演じ、武者自身もおじいちゃん役で出演する。18歳から10年間、母親を介護した元日本テレビアナウンサーの町亞聖も特別サポーターとして参加し、ヤングケアラーをテーマにミニ講演を行う。
子どもに介護の現実を伝えることに、武者の言葉は率直だ。
「大人は『汚い部分は子どもに見せたくない』と考えがちです。でも、認知症になれば徘徊もあれば、きれいごとでは済まない場面もある。子どもたちはそれもちゃんと知らなければならない。知った上で『みんなで助け合おう』という心をつくりたい」
公演を一度きりで終わらせず、学校や地域にも届けようと、主催するBMCエンタープライズは公演のDVD化などに向けたクラウドファンディングを「CAMPFIRE」で実施中。目標は500万円で、締め切りは11月3日午後11時59分。目標額に届かなくても、集まった支援金で事業を実行する方式だ。
小田原地域のヤングケアラーや、家族に認知症・障がいのある小中学生の無料招待も目指す。支援メニューには、3万円からの「ヤングケアラー招待ギフト」などを用意している。
「みんなで見守る世界ができれば、孤立する子どもも、孤独死もきっと減っていきます」
笑いを届けてきた「神様」が、今度は舞台を通して、助けを求められる社会を呼びかける。公演は11月3日。開場は正午と午後4時の2回で、上演時間は約1時間30分を予定。チケットは大人5000円、子ども500円。(文・写真提供@霜月潤一郎)