KENZI、社美緒氏のヴィジュアル系参入に持論「まずはいい曲を作り、バンドで勝負してください」

THE DEAD P☆P STARSアンチフェミニズムのKENZIが、ホストグループ「Group YGGDRASIL」の創業者・会長である社美緒氏のヴィジュアル系参入について、自身の考えを語った。バンド結成や「ドキッ ヴィジュアル系だらけ運動会」の構想に対し、KENZIが求めたのは、楽曲とバンドそのもので存在を示すことだった。

KENZIは、社氏と同じ歌舞伎町でロックバー「STAR☆CAFE」を経営。同店は、KENZIの誕生日である7月3日に21年目を迎えた。バンド活動とともに、音楽を愛する人々が集まる場所を長年にわたり運営してきた立場から、今回の動きをどう見ているのか。

「ビジュアル系の美輪明宏KENZIに言わすと」と切り出したKENZIは、かつてのインディーズシーンを支えていたハングリー精神に言及する。

「ホストはホストをしていたらいいと思う。お金を持っている段階でロックは無理。ハングリー精神がないからね」

その言葉の背景にあるのは、ステージこそが自分たちの居場所だったという実感だ。

「むかしのインディーズビジュアルバンドはお金がなかった。だからステージだけが唯一輝ける場所、生きてるって感じられる場所だから底知れぬパワーがあった。そこにファンも共感した。もしお金を儲けたいとか考えてたら大間違い」

また、ヴィジュアル系シーンが低迷しているという見方に対しても、「ビジュアルが低迷してる? 大きなお世話。バンド一筋で頑張って必死でやってるバンドいっぱいいるよ」と語る。現在も音楽と向き合い、活動を続けるバンドへの思いがにじむ発言だ。

一方、ホスト出身という経歴だけで、すべてを否定しているわけではない。KENZIは、自身が認める存在として2人の名前を挙げた。

「僕はホストからビジュアルバンドの世界にやってきて認めてる人が2人います。歌舞伎町ナイトの岩崎 義弥とthe Raid.の星七。この2人はあの時代だったから大変だったと思う。あつい情熱がまわりに伝わったんだと思う」

大切なのは何か。その問いに対する答えは、「各自のバンドに対する魂ですね」という短い言葉に集約される。

KENZIは、バンド活動の先に別のビジネスを見据える姿勢や、チェキの売り上げを優先するような発想にも厳しい視線を向ける。一方、自身もツインテールにスカートという、アイドル的なスタイルで活動していた時期があった。ただし、見た目と表現に対する姿勢は別のものだったという。

「そしてある時からビジュアルバンドがアイドルにアイドルがビジュアルバンドになった。僕もツインテールしてスカートはいてアイドル的でしたがお客様に媚びは売ってなかった」

レーベル「アナーキストレコード」を通じて、さまざまなバンドの作品を送り出してきたKENZI。その中で、特別な存在として挙げたのがDIR EN GREYとMALICE MIZERだった。

「アナーキストレコードでいろんなバンドのCDを出しやってました。がビジュアルバンドに興味がなくなったのはDIR EN GREYとMALICE MIZERが完璧でこれ以上のバンドは出てこないと思ったから」

両バンドへの最大級の評価からも、KENZIがバンド独自の表現や世界観を重視していることがうかがえる。

では、社氏が構想する「ヴィジュアル系だらけ運動会」については、どう受け止めているのか。

「運動会? まずはいい曲を作りバンドで勝負してください」

まず音楽があり、その先に企画がある。KENZIの発言は、その順序を問いかけるものだ。ただ、バンドマンが運動会に参加すること自体を否定しているわけではなく、過去には自身の「絆友」が同様の企画をテレビで実施したこともあったという。

「むかし僕の絆友がそんなこと企画してテレビでやりましたよ。あの時代だからよかった。いかついメイクしたやつがブーツで走ってる。玉投げを札束でやってカゴに入らないのはファンが取るとか、ホストならそれぐらいしたら(笑)」

出演オファーを受けた場合についても、ユーモアを交えて答えた。

「オファー? KENZIなら絶対やらないですがぴぱんくぅなら受けます。ボランティアで(笑)」

話題は、ヴィジュアル系の見た目や個性の変化にも及んだ。KENZIが振り返るのは、衣装や髪の色だけでなく、移動に使う車両にまでバンドのカラーを貫いていた時代だ。

「着てる服の色を変えたらわかりやすい。安易。黒系が流行り僕らは赤系。赤に頭に赤い特攻服着て、赤いバス乗って全国へ。むかしのバンドは個性がありました」

そのうえで、ホストとして培った経験やプライドがあるならば、それを明確に打ち出すべきではないかと提案する。

「ビジュアル系と言うからおかしくなる。ホストビジュアル系にしたらお客様にもわかりやすくていいと思う。あの時代のビジュアルはもう終わりました。ホストにプライド持ってるならホストビジュアル! これがいいと僕は思います」

長年シーンに身を置き、ステージと歌舞伎町の双方で音楽に携わってきたKENZI。今回の発言を通じて繰り返し示したのは、バンドに懸ける情熱と、独自の表現へのこだわりだった。

「ビジュアルバンドってそんな甘くない。中途半端ではお客様にも見抜かれる。世界観が大切。それはお金で買えない。いつも言ってます。前に。自分に信念を持ってやったらいい。すみませんが僕は興味もなんもないです」

バンドに必要なのは、資金力や話題性だけではない。楽曲、ステージ、そして何にも代えがたい世界観。長年ヴィジュアル系シーンを歩んできたKENZIの言葉には、音楽に懸けてきた者としての信念が込められている。(文・写真提供@霜月潤一郎)