「打ち逃げスタイルで尊敬得られるか?」K-1格闘家が見たボクシング亀田大毅世界戦
ボクシングIBF世界スーパーフライ級王者決定戦では亀田大毅選手がメキシコのロドリゴ・ゲレーロ選手を3-0の判定で下し、世界チャンピオンに輝きました。これで亀田兄弟は三兄弟同時に世界チャンピオンという偉業を成し遂げたことになります。
亀田大毅選手というと「浪速の弁慶」のニックネームを自分でつけるように、これまでは足を止めてがっしりとガードをして打ち合うファイターでしたがこの日は違いました。
見るからに強そうなパンチを振り回してくるゲレーロに対してヒラリヒラリとフットワークを活かして状態を柔らかくパンチをかいくぐる。動きながら軽いパンチをスパスパ当てていく。弁慶というよりは、弁慶の攻撃をヒラリヒラリと躱して打ち倒した牛若丸のようでしたね。
判定に対してはいろいろな意見があるようですが妥当かなと思います。
パンチは軽かったですが大毅選手のほうがクリーンヒットが多く、主導権も支配してましたしね。倒すよりも相手の攻撃をもらわないことを第一に考えて組み立てていた感じがあります。ポイントを取り合うボクシングというスポーツに勝ったという感じでしょうか。大毅選手の作戦勝ちというところですね。
しかし、試合内容が面白いかといえば決してそうではありません。
名チャンピオンと呼ばれる世界のスーパースターはリスクを取ってでもKOを狙いに行きます。そして実際に対戦相手をKOして勝ってこそ賞賛を浴びますが、大毅選手の試合は傍から見てると「打ち逃げ」とも取れるような攻撃も多くありました。試合前に計量騒動があったのも判定に異論が出ている一つの要因でしょう。
また、亀田一家といえばこれまでの騒動でダーティーなイメージが付いています。自業自得でもありますが一度ついた悪いイメージは中々消えません。これまでのような対戦相手やファイトスタイルでは誰もがチャンピオンと認める一流選手の仲間入りは難しいでしょう。
その階級で一番の強豪と言われるような選手とやって勝つ。あるいは実力が証明されている日本人選手とやって勝つ。それが本当のチャンピオンとして認められる近道かと思います。
とは言えデフェンスやパンチを当てるタイミングに関してはセンスを感じさせるものが有ります。あえてその階級で一番と言われる強豪選手に挑戦し、打ち勝っていく姿を見たいですね。
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Written by 大野崇(プロキックボクサー、元K-1 JAPAN選手、トレーナー)
Photo by 亀田大毅の ゼロから出直しや! ~空白の1年間~/講談社
昔よりも丸くなった印象も…