2020年パラ五輪へ「障がい者こそオシャレが必要」骨折3カ所の道端アンジェリカの復帰劇

 10月10日、右足足首の複雑骨折でモデル業を休業中の道端アンジェリカが、入院中の病院から外出許可をとり、NHKで全国中継された六本木ヒルズアリーナで行われたファッションショーに参加した。実はこのファッションショー「バリコレ」は、障がい者がファッションを楽しむためのもの。「骨折の入院中で誰にも会わなくても、毎朝メイクやネイルを楽しんでいた。ファッションには前向きになるパワーがある」と道端。二週間前に手術し、ようやく松葉杖を使用できるようになったものの、まだ体重はかけらない状況。退院時期はまだ未定で今後の仕事は容態を見ながら行っていくという。

 道端は井上和夫設計の特製車いすに乗り、笑顔で舞台を滑走。服をデザインしたのは、文化服装学院の教授チームだ。座っても立っても美しく見える、ヒップラインを厚みのある布でふんわりと膨らませた独特なカッティングを施した衣装を披露した。

「実用的なだけではなく、女性の身体を美しく見せるデザイン」と司会を担当したモデルのアン・ミカが語るこのデザインは、車いすユーザーが心配する床ずれを防ぐものだ。

 身体の動きに制限のある方には、床ずれ(褥瘡・じょくそう)の心配が伴う。褥瘡とは、常に体重がかかる部分の皮膚や筋肉を圧迫してしまう症状。必要な酸素や栄養が供給されなくなった部分が壊死し、皮膚が赤くなる程度のものから、ひどいものでは皮膚がえぐれて骨が見えてしまう事も。そのため、車いすユーザーはたとえ見かけに納得がいかなくとも、ポケットの縫い目がなかったり、柔らかい素材でできた服を選ばなければならないことが多い。 

 服の選択に苦労するのは車いすユーザーだけではない。「視力を失ってから色や柄が分からず無難な服しか着れなくなった」と語る盲目の音楽家、前川裕美さんは、久しぶりのオシャレをバリバラステージで満喫した。”色が触れる”エレガントなドレスだ。赤はビロード、ピンクはふわふわ素材、緑は凹凸のある布といった具合で触感で色と柄が確認できる「ARROW Factory」製作ワンピース着用で盲目用の杖をもち、ステージを優雅に歩いた。

 ステージに華と躍動感を与えたのは「触りたい肉体美」と司会のはるな愛も興奮するパラリンピック選手たちだ。リオパラリンピック陸上走り幅跳びの日本代表、鈴木徹は、YUKIMI KAWASHIMAのデザインした羽根つきの衣装を来ながら登場。義足を付けたまま、高飛びをし、1000人の観客を沸かせた。競泳女子200メートル背泳ぎでアルビノの笠本明里は色白さを生かしたカラフルで幻想的な衣装を披露した。

 現在、障がい者用のファッションブランドでは、銀座三越へ店舗出店する車いす用のピロレーシングが知られるが、ブランド数や種類は健常者のそれに比べると圧倒的に少ない。障がいの形は人それぞれだが、オーダーメイド服は値が張る。高齢化に伴う社会保障費の自然増年五千億円以内に圧縮により、障がい当事者が受ける介護サービスの質は低下。「生活が苦しく、服にまで手が届かない」という声は多い。

「その中で気軽に取り入れやすいのは既存服のリメイク」と、障がい女子のためのファッション誌「Co-Co LIfe女子部」の読者モデルたちは、骨形成不全症、軟骨無形成症などそれぞれの障がいにあわせたリメイク服を披露した。 

 司会を担当したラジオDJの山本シュウは「障がいがある人にはお直し無料が当たり前になって欲しい。贅沢やない、ファッションは人権やから」と強調した。

 今年4月から「障がい者差別解消法」が施行され、企業や行政には障がい当事者が差別と感じる事例をなくす事が義務づけられている。しかしまだまだ各業界で取り組みが進んでいるとはいえない。障がい者とその家族の割合は六人に一人。高齢化が進めば、さらに多くの人にとって障がいとの関わりは日常となる。全てを業者負担にするのではなく公的な補助も取り入れるなどの工夫もしながら「オシャレのバリアフリー化」が求められている。

Written Photo by 増山麗奈

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