金持ちだから喧嘩する?ナチス発言で高須クリニック院長が民進党・有田芳生を提訴か

 高須クリニック院長高須克弥氏が有田芳生参議院議員を提訴するという。事情はこうだ。ツイッター上で「ナチス!高須クリニック」と揶揄された。書き込んだのはしばき隊のメンバーなので、高須氏が「しばき隊のリーダー」と思い込んでいる有田議員に責任を求めて、というものだ。

 まず前提としてお断りしておかなくはならないのが、この件で事実上の妻である漫画家西原理恵子氏を批判するのはお門違いというもの。どんな恋愛があっても良い。思想が違っても(同じでも)結婚しても事実婚でも本人たちの自由だ。高須氏の今回の行動とは分けて考えねばなるまい。

 さて高須氏の怒りをツイッター、アメブロなどで読み解いてみると「ナチス!高須クリニック」という表現は侮辱であり名誉棄損だというものだ。しかし、待ってほしい。20009年~2015年あたりまで高須氏はツイッターやアメブロで学生時代の自分の写真に「ナチス好き」やら「偉大なナチス」を連呼しており、「あ、この人、本気なんだな」と思ったものだ。もともと、変り者という世間の評価であったので、「テレビ番組のスポンサーも務める一企業の経営者がナチス信奉者」というよく考えればトンでもない事態に世間は「まあ高須さんだからね」ぐらいの気持ちだったと思う。

 が、国会議員を提訴するとなると、二回目。これでまたネット民だけでなくワイドショーも取り上げる可能性が高くなった。取り上げた場合、コメンテーターは当然、ナチスよりの発言などする人はいないだろうから、高須氏不利の番組内容になるだろう。

 高須氏の混乱は、自身のツイッターが英訳された頃から始まったように思える。さらに、「しばき隊とは何者?」に対して、情報というか燃料をフォロワーから次々と投下され、着火、とうとう有田議員に行き着いて、提訴するという方向にいったようだ。煽られ過ぎだ。

 高須氏は本来「ナチス!高須クリニック」と言われたなら「そうだ。私はナチスの医学をリスペクトしている。なぜ悪い」と公言するべきだった。言行不一致。たとえば、幸福実現党員に「幸福の科学の信者ですよね」と問うたら、「イエス!」と返事をするだろう。

 が、直近のアメブロでは「ナチスのイデオロギーには賛成しない」と急に弱気になっている。何があったか。病院に抗議の電話が殺到したか、自身が国際問題に発展したり、少なくとも海外のネットニュースに拡散される可能性がある事を考慮したか。

 これがはたして、名誉棄損に当たるのか。公共性・公益性・真実性の三要素を考えてみると、テレビ番組のスポンサーを務めているので社会的影響も大きく、公共性では当てはまるだろう。公益性は「準公人」と見なされればこれもクリア。真実性だが、過去のアメブロ、ツイッターを証拠として出されればナチス信奉は事実として認められるのではないか。

 医学の進歩はナチスの政権下の元でなされ、日本もその恩恵にあずかっているというような高須氏擁護の意見も散見されるが、このような言葉を使う時は、本当に気をつけた方が良い。ホロコーストとは人類が犯した最大の罪のうちの一つである。その政権下で医学が発達したというなら、そんな医学などいらない。というより、そのような奇論を展開されると、他の真面目な医者がかわいそうだ。さぞかし迷惑だろう。

 人類は、先達は、歴史に学んできた。そしてその都度過ちを正してきた。たかが約70年経つと、忘れるほど人間は愚かだったのか。そうではあるまい。

Photo by Magdalena Roeseler