モーニング娘。’17 工藤遥卒業コンサートを観た今だからこそ森戸知沙希に想いを馳せる

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20年後も進化を続けているモー娘。

12月11日、モーニング娘。’17のコンサート『モーニング娘。誕生20周年記念コンサートツアー2017秋~We are MORNING MUSUME。~工藤遥卒業スペシャル』が日本武道館で開催。10期メンバーの工藤遥が、グループから卒業しました。

20周年記念ツアーというと過去の名曲を並べたセットリストになりがちですが、むしろニューアルバム収録曲と工藤遥在籍中の代表曲に重心を置いたものでした。膨大なアーカイブに頼ることなく、最新の姿を見せてやろうというこのセットリストは、メンバーの卒業と加入を繰り返し、常に進化し続けるモーニング娘。らしさを象徴するものだったのではないでしょうか。

とはいえ、もちろん20年を振り返るコーナーもあります。モーニング娘。としての最初の楽曲である「愛の種」のほか、過去のアルバム収録曲など4曲程度を披露します。このコーナーのセットリストは公演ごとに異なっていて、そのパターンは10種類近くあるとのこと。楽曲数にして40曲ほどですが、それを加入して間もない14期メンバーの森戸知沙希が短期間で修得したというのは、並大抵なことではないです。

さすがの森戸知沙希の目にも涙が…

今年6月にカントリー・ガールズと兼任という形でモーニング娘。に加入した森戸にとって今回のツアーが初参加ですが、それ以外にも夏のハロプロ全体のコンサートや20周年記念の特別ライブなどもあり、半年の間で約70曲を覚えたといわれています。いくらダンスが得意だという森戸とはいえ、明らかに常軌を逸している数字。その裏では想像を絶するほどの努力があったことは間違いありません。

森戸のすごいところは、決して弱音を吐かないところ。アイドルたるもの常にキラキラした存在であり続けなくてはならない、舞台裏の努力など見せるべきではない──というカントリー・ガールズのプレイングマネージャー・嗣永桃子の教えを体現し、ケロッとした姿で歌い踊るのです。今年6月に芸能界を引退したももちも、森戸を誇らしく感じていることでしょう。

武道館コンサートのMCではモーニング娘。のリーダー・譜久村聖も森戸に対して「たくさん覚えてすごかったと思います!」と大絶賛。この言葉に涙を浮かべて、隣りにいた工藤遥に抱きついていた森戸の姿は本当に感動的でした。

継承され、また進化していく先人の教え

自分が泣いてしまったら、人を笑顔にすることなんてできない──とは、嗣永桃子のアイドル哲学。実際、森戸は嗣永のラストコンサートでは泣きませんでした。しかし、モーニング娘。のメンバーとして立った日本武道館のステージでは、リーダーに優しい言葉をかけられて、思わず涙を見せてしまう。それは「ももちイズム」としては掟破りなのかもしれませんが、森戸が「ももちイズム」を継承したうえで、自分らしいアイドルに向けて一歩踏み出した瞬間のようにも思えたのです。

「何をもってアイドルとするか」という議論もありますが、ひとついえるのは「アイドル」に明確な定義はないということ。基本的に何でもアリであるがゆえに、アイドルの数だけアイドルの形がある。そういう意味では「ももちイズム」こそが最高のアイドル哲学ということでもない。森戸知沙希には、「森戸知沙希のアイドル像」というものがあるはずです。

日本武道館で思わず涙を見せたことは森戸にとっては不本意なのかもしれません。しかし、「ももちイズムを守らないといけない」という心が不意に解放され、「嗣永桃子のアイドル像」ではなく、「森戸知沙希のアイドル像」に近づき始めたのは間違いないでしょう。それはもちろん「ももちイズム」を否定するものではなく、むしろ「森戸知沙希がももちイズムを進化させようとしている」と言い換えることもできます。師匠である嗣永桃子に対しての、最高の恩返しなんだと思います。

工藤遥の卒業という晴れ舞台で垣間見せた森戸知沙希の未来。まさに、卒業と加入を繰り返し、進化を続けてきたモーニング娘。らしい卒業コンサートでした。

文◎大塚ナギサ