「前略おふくろ様」ショーケンの角刈りがカッコイイ
いつも本人を演じていた内田裕也と違って、萩原健一・ショーケンは出演作ごとに違う人間を演じようとした。どのテレビドラマ、映画を見ても違うショーケンがいるので、どれも新鮮だしどれも違和感がある。
だからどの作品がいいか聞かれても好きなショーケンは人それぞれだし、しかも『青春の蹉跌』(74年)、『離婚しない女』(86年)、『渋滞』(91年)、『居酒屋ゆうれい』(94年)、『祭りばやしが聞こえる』(ドラマ 78年)、『君は海を見たか』(ドラマ 82年)、『豆腐屋直次郎の裏の顔』(90年)などレンタルDVDで簡単に見ることができない作品も多い。
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晩年の評判や訴訟沙汰で損してる部分もあるだろうが、これだけの名優で代表作を見るのが難しいというのは、ショーケンの俳優としての不遇さだと思う。
まぁ内田裕也のように「樹木希林のヤンチャな旦那」とされてイイ話で送られるのも残念な話だが、ショーケンは日本映画・テレビドラマに与えた巨大な影響のわりに、ワイドショーなんかじゃ「面倒くさい人」扱いで、それも違うだろと強く言いたいけ。映画だけじゃなく音楽も含めショーケンがいなければ現在こうなってないと思われる日本文化はかなり広範囲だろう。
そんな中で何がお薦めかといえば、まず映画では『もどり川』(83年)。プロデューサーをした梶原一騎の暴行未遂逮捕で公開が短期間で打切りとなった作品だが内容は濃厚で、ショーケンが原田美枝子、藤真利子、樋口可南子らイイ女と次々絡むが、いちばん激しく絡んで興奮度が高いのが猪瀬直樹の噂の恋人・蜷川有紀。
悪の魅力炸裂のVシネ『裏切りの明日』(90年)もいい。幕末時代の佐幕の志士を演じる『竜馬を斬った男』(87年)もあまり評判にならなかったけどいい映画(Amazonの配信で試聴可)。ほんのチョイ役の『その後の仁義なき戦い』(79年)もナマのショーケンと飲み屋で出会ったような気になるので見て損はない。テレビドラマでは私がいろんな面でものすごく影響を受けた『前略おふくろ様』(75年~76年)。このドラマの影響で私は少年時代、角刈りに憧れたのだった。
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冥福は祈らない。彼とは映画の中でいつでも会えるから。ただいっときの別れは告げよう。さらばショーケン。(文◎藤木TDC)