男女の仲を引き裂く神が祀られた弁財天の真ん前でホストがメッタ刺し 『新宿』という街の暗い成り立ち

昨年秋、ホストに入れ込んだ女性が歌舞伎町で飛び降り自殺をはかり、通行人を巻き込んで死亡した事件は記憶に新しいが、実は、歌舞伎町も弁財天の効験の中にいるのである。

新宿はかつて何もない場所だった。そこに地方からやって来た鈴木九郎という男が、巨万の富を築き現在の西新宿あたりに大邸宅を建てる。しかし彼には秘密があった。ありあまる金銀財宝の保管に困った九郎は、人夫を雇って人影の少ない近隣の土中に埋めて隠させていたのだが、隠し場所を知っている人間を増やさないため、作業が終わるたびに人夫を斬り殺していたのだ。

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そんなある日、九郎の娘に変化が起こった。全身に鱗が現れ、眼光は爛々と輝き、大蛇になってしまったというのだ。現代でも「蛇の抜け殻を財布に入れておくといい」といわれるほど、蛇は富を司るものとされるが、富を守るために多くの人を殺した報いが降りかかって来たのである。大蛇が外へ這い出ると、大雨が降り水が溜まって池となり、大蛇はそこに投身したという。その池は蛇池と呼ばれて、戦前まで実際に存在していた。

明治30年代になると、この付近に浄水場建設のはなしが持ち上がる。そして、この工事で掘り出された大量の土で、当時沼地だった現在の歌舞伎町を埋め立てていった。つまり、蛇の呪いがこもった土が歌舞伎町の礎となっているのだ。前述の通り、蛇は弁財天と習合される。歌舞伎町の真ん中、ドンキホーテからゴジラに向かう道を右に折れたあたりに、小さな公園ががある。ここに弁財天が祀られているのだ。

歌舞伎町でひねもす続く、男女の睦言。嫉妬深い弁財天がそれを黙って見ているだろうか。それとも、この近隣で起きる、男女の事件にはそうした理由があるのかもしれない。(文◎Mr.tsubaking)

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