能町みね子×吉田豪 対談『ヘイトとフェイクニュース』を語る|第一回 「あなたの正義」を疑え

ヘイト発言する人の実態

能町:Twitterで変な絡み方してくる人のほかのツイートを見ると、「これをRTするとローソンのからあげくんが割引」みたいなキャンペーンをことごとくRTしてるんですよね。こんな20円30円を必死で安くしようとしてる人が、いろんな人に絡んで……と思うと気の毒になってくるんですよ。ZOZO前澤社長の100万円プレゼントも必ずRTしてる。

吉田:ホント多いんですよ。「これをRTした人には何々が当たるかも」的なヤツをひたすらやってる人が大体ウザ絡みする人なんですよね。要は、金銭的に報われてない人がネット上で鬱憤を晴らしがちってことなんでしょうけど、そういう人って昔はもうちょっと「政府が悪いんだ」みたいな発想になってたはずなのが、いまは「左翼が悪い」になってるわけじゃないですか。左翼にそんな力ないですよ。

能町:確かに(笑)。敵を過大評価してますよね。日本だけじゃなく、世界的にわりとそういう傾向にあるのが不思議です。

吉田:不思議なんですよ。「あなたの経済的状況にダメージを与えてるのは誰?」「それがはたして外国の人なんですか?」という。お金がないと視野がだんだん狭くなりますからね。

能町:だいたいどこでも「移民が悪い」みたいになりますよね。

吉田:わかりやすい敵を探すっていう。移民があなたの仕事を奪ったわけじゃないと思うんですけどね。「俺のコンビニのバイトを奪いやがって!」とかじゃないだろうし。

能町:でも、多少は経済的に安定してそうな60代以上の人でもそういう考えの人はいますね。

ーー年齢的なものもありますか?

能町:年齢というか、ネットに触った時期じゃないですか。一足遅れてネットに触れて、そこで「真実」と言われている過激な考えに今さら心動かされちゃう。

吉田:一度そこにハマっちゃうと情報を上書きするのは難しいでしょうね。

ーーネットがそういった差別感情を助長させた部分はありますよね。

吉田:前に誰かが言ってたけど、朝日系のニュースサイトは会員登録が必要で最後までちゃんと読めない記事ばかりで、右寄りのサイトが無料で読めるのが大きいかもしれないっていう。朝日がそんなところでマネタイズしようとしたばかりに(笑)。

能町:そんなことが支持を広げる原因になったりするんですね。私が2ちゃんねるを見始めたのって99年頃だと思うんですけど、確かに最初はすごい斬新だったんですよ。世間に言っちゃいけないようなことをみんなが堂々と言ってる空間は、気持ち悪いというより、そのときは新鮮でした。

吉田:テレビでは誰も言わないようなことを当たり前のように言える場として。

能町:その感じを今の60代が味わってるのかもしれない。