韓国で女教育実習生が同棲相手の元生徒を暴行殺人…想像を絶する犯行動機が明らかに

 7月1日、韓国の仁川市内。あるワンルームマンションの一室から、一人の高校中退の少年(X君)が死体で発見された。死因は「全身火傷による敗血症」。X君はゴルフ棒で殴打されたうえに、大量の熱湯をかけられていたという。現在、犯人はこの学生の家庭教師であり同居人のA子とされている。

 当初、A子は、X君が自分を暴行しようとしたため抵抗したところ、誤って殺してしまったと供述していた。韓国メディアは”教師と生徒の痴情のもつれ”として、この事件に注目していた。

 8月初め、検察が事件関係者の携帯電話を解析した結果、見えてきた事件の全容を明らかにした。その内容はおよそ現実の世界とは思えないものだった。検察が発表した報道資料の内容から、事件の顛末を振り返ってみよう。

 当局は、当初からA子の供述は疑わしい点が多いと判断していた。体重100キロほどの巨体で格闘技も習っていたX君が、身長160センチの小柄なA子にどうやって殺害されたのか。そもそも二人はどうして一緒に暮らしていたのか……。不可解な点を数えるとキリがなかったからだ。

 A子はX君の通っていた高校に2012年の5月から教育実習生として赴任していた。

 この高校にはA子の友人であるB子も共に教育実習していたのだが、じつはX君はA子ではなく、このB子と同年7月頃から交際していた。検察の資料を読み込むと、事件のキーマンは、むしろこのB子だったことがわかってくる。

 勉強が苦手だったX君だが、B子が勉強を教えることによって成績が上がり、X君の両親もB子を信頼するようになったという。しかし今年3月に大学を卒業して地元に帰ってきたB子は、自分と離れた場所に住むX君が、二人の交際関係を周囲にばらしてしまうのではないかと恐れた。これがばれると、教員を目指していたB子が就職できなくなる可能性があるからだ。

 そこでB子はX君を中退させ、近所のワンルームに住まわせることにした。

 そしてX君に高校卒業の資格を取らせるべく、A子に大学検定試験の家庭教師を頼み、二人を同居させたのだ。中退のいきさつを知らなかったX君の両親は、B子を信頼していたため、勉強をさせるという口実を鵜呑みにし、ワンルームに住まわせることを許してしまった。

 だが、A子は「二人きりの生活にストレスを感じていた。X君が早く合格すれば解放されるのに、成績が思ったほど上がらずに焦っていた」と供述。今年5月頃 からX君が勉強をしないという理由で、B子とB子の彼氏とともに、X君に毎日のように殴る蹴るの暴行を加えるようになったという。

 疑問なのはA子がストレスを感じながら、同居までして家庭教師を続けていた理由だ。

 事件発覚当初、韓国メディアはA子とX君が交際をしているにもかかわらず、X君がB子に恋心を抱いていたため、嫉妬心で暴行したと報道した。ワンルームで同居していたのがA子とX君だったのだから、誰もがそう考える。

 実はA子は、B子とB子の彼氏から、「X君が試験に受からなければ、お前の彼氏のウォニとその家族に危害が及ぶぞ」と脅されていたというのだ。

 しかし、さらに不可解なのはこの先だ。この彼氏こと「ウォニ」とA子は、2005年にB子が紹介したことがきっかけで、メールを通じて「交際」することになったのだが、A子は実際には「ウォニ」と一度も会っておらず、メールをやりとりするだけの関係だったというのだ。

 今回の事件で明らかになったのは、A子の彼氏こと「ウォニ」は実際に存在しない人物で、B子が「ウォニ」を成りすましてメールを送っていただけだったということ。

 そして「ウォニ」という存在に依存していたA子は、「ウォニ」と自分をつなぐ唯一の手がかりであるB子の命令に逆らえなかった。X君への暴行も、B子がA子をそそのかせたとされている。

「B子という”巨大な存在”に服従させられてしまったA子とX君」という構図が、今回の悲惨な事件を招いてしまったのだろう。第三者にはまったく理解できないが、閉鎖された人間関係のなかでは、いびつな服従関係が成り立つことが珍しくない。そしてそのような人間関係が、ときに恐ろしい事件を起こすのは、どこの国でも変わらないようだ。

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Written by 李ソヨン

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